20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:いつか きっと 作者:Shima

第33回   第33話
  子が気付いたのはこのベッドの上だった。体中包帯巻きにされおまけに背中が硬い板のようなもので固定されていたので全く身動きが取れない。不安がる一子にビルは日系アメリカ人の通訳をつけた。彼を通して自分と友人の2人で一子を助けた事。加えて勝一も同じように助け、別便でケガの治療のためにハワイに向かった事を伝えた。
「え?勝一が!じゃ勝一は無事なのか?」
思わず良はビルの話を遮った。
「はい。勝一は初め、私を見ると動けない身体を無理に動かし必死に反抗しました。しかし私達の力には勝てず、泣く泣く我々の船に乗りドクターの診察を受けたのです。でも船上での治療には限りがあります。そこで止む無く彼を先にハワイに送ることにしたのです。彼は捕虜になるくらいなら死ぬ、と泣き叫びましたがドクターに鎮静剤を注射され、眠った後船に乗せられハワイに向かったのです。
「そうか!そうだったのか!良かった!良かったなぁ一子ちゃん!!」
良の目からはうれし涙が溢れていた。一子もその事を思い出したのか同じように泣いている。ただ傷が痛むのか、時折顔をしかめている姿がたまらなく愛おしくなり、良は思わず一子を抱き締めていた。もちろん良は兄が妹をいつくしむような感覚で取った行動だったのだが、一子にとっては初めての出来事だったので、そのうろたえぶりはただ事ではなかった。包帯で覆われていたため誰にも悟られなかったが、一子の身体は恥ずかしさと嬉しさで真っ赤になっていた。



--------------------------------------------------------------------------------


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 24