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作品名:夢・幻(うたかた)の夢 作者:Shima

第23回   宗太郎の災難
  同じ頃。日下部家では茉莉の行方を追って稲の元へ駆けつけたものの、何の収穫も得られず無駄足を踏み意気消沈して戻った宗太郎が、父、主水(もんど)から小言を言われていた。お前の監督不行き届きだとか、注意が足りないとか、果ては次期当主としての手腕まで問われる始末でさんざんな目に遭っていた。しかしどう言われようが全く心当たりのない宗太郎には全く返す言葉もなく、ただ両こぶしに力を込め悔しそうに頭(こうべ)を垂れるしかないが、また、勘定奉行から見合いの日時を、更に年を重ねるにつけ気が短かくなっている奉行は、婚礼の日をも決めたいらしく、主水(もんど)の背中を始終せっついていた。それゆえ主水(もんど)にしてみれば娘の不明を嫡男の宗太郎のせいにしてしまうのも仕方のないことであった。「稲も稲だ。主家が大変な目にあっているのに何の音沙汰もなく、宗太郎のみを帰して寄こすとは!」と、主水(もんど)の怒りは宗太郎だけに留まらず、隠居し別宅に居を構える乳母の態度にも及んでいた。それでも宗太郎にとって茉莉は幼少の頃から何でも打ち明けて話し合ってきた2人きりの兄妹である。その妹が自分にひと言の断りもなく家を出たのは裏切り行為としか取りようがない。まして父からは間無しの小言三昧。可愛さあまって憎さ100倍。こうなったら茉莉が戻ってきたならきっと叱りつけ、必要なら殴ってでも言う事を聞かせた上で、しばらく座敷牢に入れた後有無を言わさず鏑木家へ輿入れさせてやる!と心に誓うのであった。


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