「この・・・しない手はないですよ。」 1人が言うと、 「そして我々は・・・ジャスミン・・」 1人が答える。風と共に二人の前に現れたのは複数の男だった。しかしその声も折からの風と人の気配に素早く身を隠したせいで、ところどころしか聞こえない。加えて何人の人間がいるのかも、声の調子を落として話しているので解らない。だが1人はジャスミンの名を口にしていた。彼女の様子が気になり横を見ると、恐ろしいのかギュッと目をつぶり、両手でしっかり自分の腕にしがみついてる。その姿はケインの心の奥に暖かいものを湧き上がらせた。 なおも声の主は話し続ける。 「交換条件ということで・・・」 どちらかがそう言うと同時にカサカサという音がして彼等はその場か遠ざかった。
足音が完全に聞こえなくなるのを待ってケインはジャスミンを促した。 「今のは誰だったんだろう。わかる?」 しかし余程怖かったとみえてジャスミンにはケインの言葉も聞こえていない様子だ。しかも小刻みに震えている。彼はその身体を思わずギュッと抱き締めた。 「アッ!!」 「大丈夫。僕が付いている。大丈夫・・・」 ジャスミンの背中を軽く叩きながら慰めていると、先程心の奥で湧き上がったものが何だったのかはっきりした形で蘇った。もしかしたら自分達はジャスミンの言う通り、ずっと前から愛し合っていたのかもしれない。そんな感情に囚われ、不安そうにじっと自分を見上げているジャスミンの可愛らしい唇にそっと自分の唇を近づけた。
つづく
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