翌朝。引退したとはいえまだ大きな影響力を持っているムファド前王に2人は結婚の報告をしに行った。そこには何故かジェイムズの姿もあった。 「父さん!何故ここに?」 「ケイン様。お父上は前王の希望を聞き入れて下さいました。」 ムファド前王に代わり、カシミールが代弁した。 「希望?父さん、また何かやったんだろう!」 「ケイン。私が何かやろうとするとどうしてお前はそうなんだ?少しは私を信用してもらいたいものだな。」 「信用?これまでの父さんのしてきたことを思い出してみて欲しいな。一体なにをもってして信用なんて言葉を口に出来るんだ?」 「マァマァお二人ともこのへんでおやめ下さい。ケイン様、実はジェイムズ様は余生をこの谷にお暮らしになられるそうでございます。それが前王の希望でございます。古き友人として前王をお慰めしながらこの地で最後を迎えたいとのことでございます。」 「この谷で暮らす?本気か?」 「そうとも!私も孫の顔が見たいからね。それにオピウムの墓を守って余生を過ごしたくなったんだ。・・・ジャスミン、私がここにいたら迷惑かい?」 「いいえ。お義父様。わたくしもそうしていただきたいと思っておりました。」 嬉しそうに答えるジャスミン。昨夜の顔とは打って変わったしとやかな物言いに驚きながらも、ケインは幸せを感じていた。だがこの父が一緒では・・・相反する気持ちでしぶしぶ承諾した。
その日から新王ケインの政治が始まった。前王の業績をそのまま継承し、尚新しい産業を開発する。彼は文化面で得意分野の天文学に力を入れることとし、また生産面では芥子の花の栽培を縮小し、気候に合った綿花の栽培を推奨した。それは以外にも旅から旅の生活を続けていたジェイムズの発案だった。それはのちに英国が興した東インド会社設立の先駆けとなるものであった。
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