戴冠式を兼ねた結婚式は、昼夜を問わず7日間続いた。その間主役の2人は仮眠程度しか取る事が出来ず、2人きりになるどころかゆっくり話をすることすら出来なかった。結局周囲が彼等を解放し、やっと落ち着くことができたのは10日目の夜だった。
ジャスミンのたっての希望で新居となったのは、今まで彼女が使っていた部屋に少し手を加えたものだった。また以前あったケインのベッドは取り除かれ、大人3人が横になってもまだ余裕がある大きなものに変わっていた。勿論ジャスミンのも跡形もなく消えていたことは言うまでもない。 「フーーー疲れたぁ。結婚式がこんなに大変なものだったとは知らなかったよ。ちょっと甘く見ていたなぁ。」 巨大なベッドに仰向けに倒れこみ、ため息交じりにケインがこぼした。 「ごめんなさい。でも谷のみんながあなたを慕っているということがこれではっきりいたしましたわね。」 ベッドの側にあった椅子に腰掛けながらジャスミンがすまなそうに答えた。清国から取り寄せたシルクで作ったドレスがとても清楚で美しい。ふとケインの脳裏にある考えがひらめいた。もしかしたらこのドレスは現清国皇帝が、名乗り合えない娘のために内緒であつらえたものではないのだろうか?・・・・あるわけないか・・・皇帝は生まれたのが男か女かさえも知らないのだから。むしろ無事この世に生を受けたかどうかも知らないかもしれないのだ。いいや、 今は他の事を考えまい。目の前の花嫁だけを見つめるだけでよいのだ。 ケインはゆっくりと立ち上がると、恥らうジャスミンの手を取りベッドに横たわらせた。 「君は僕のものだ。」 「あなたはわたくしのもの。」 ケインの情熱の炎は再びジャスミンに火をつけた。それが発端となって2度目の夜が過ぎていった。
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