「何じゃ。私の決定に水をさす様な事を申すな。まぁ良い。申してみよ。」 「学校の事と父の事です。父は今も突然フイとどこかへ行ったまま帰らない、という生活を続けていますが、僕がここに住んでしまったら父の帰るところが無くなってしまうのではないかと・・・」 「ケイン。そなたは子でありながらジェイムズの事をまだ判っておらぬようだの。あの男はそんなことで泣いてわめくような男ではない。何事もなかったような顔で今にもここに現れるような気がするぞ。しかしそなたがそれほど心配するならカシミールに命じて様子を調べさせよう。それと学校の事じゃが、そなたの希望はどうなのじゃ?」 「僕は一度戻ってちゃんと卒業したいと思っています。」 「あとどれ位残っている?」 「本当は今年の7月で卒業だったのですが、ここに来くる時に休学の手続きを取ってきましたのであと2ヶ月ほどです。」 「2ヶ月か。・・・・分った。2ヶ月待てばそなたはここに戻ってくるのじゃな?」 「はい。必ず。」 「その言葉きっと忘れるではないぞ。もし自信がないのであれば私の方でも手段がないわけではないからその手を使っても良いのだが。」 「どういう意味ですか。」 「簡単なことじゃ。免除してもらうのじゃ。」 「免除?」 「そうじゃ。私にはそれができる。」 「そんなことができるわけがありません。」 「出来るかどうかやってみなくては分るまい?」 「どんな事をするつもりかわかりませんが、この件に関しては陛下を煩わせたくありません。どうか一旦僕が帰国するのをお許し下さい。お願いいたします。」 「私に任せればそなたは一挙に今すぐ三つの宝を得ることができるんじゃがのぉ。」 「3つの宝?」 「1つはジャスミン、2つは次期王、3つめは卒業じゃ。」 「陛下。何事も1つづつ解決しなければなりません。一度に宝が入ったのではありがたみがなくなります。僕は今のままでも充分なんですから。最高の宝が手に入ったんですからね。」 「最高?」 「ジャスミンです。彼女は世界一の宝です。ですからあとは僕が努力して手に入れます。どうか僕の帰国を許可して下さい。」 「そうか。そこまで考えておるのなら許可せねばなるまいの。・・・良かろう、一旦帰国しなさい。じゃが必ず戻ってくると誓ってくれ。良いの?」 「はい。必ず。」 そう言うと2人は固く手を取り合った。
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