(これからどうすればいいのだろう。) 自問自答を繰り返しながらケインは王の部屋へ向かった。
「陛下、少し宜しいでしょうか。」 ケインが入っていくと、王はカシミールと話し込んでいた。ふと彼はさっきまでの行動全てが既に王の耳に入っているのではないか、と思った。しかし今となってはそんな事はどうでもいいことだ。自分はこの谷に残って彼の後継者になることにしたのだから。今更ジャスミンとの関係がバレたからといって慌てる必要はない、そう思い直した。 「おお、ケインか。構わぬ。」 カシミールはそれを汐に出て行った。 「何じゃ?用向きというのは。」 「僕はこの谷に残る事に決めました。」 「おお!それではジャスミンと一緒に私の後を継いでくれるというのじゃな?!嬉しいぞ!ケイン。」 「はい。そこで陛下に伺いたいことがあるのです。僕は真実が知りたい。僕の問いに答えていただけますか?」 真剣な彼の表情も今の王には通じない。ホクホク顔を見ただけでもそれが窺えた。 「何じゃ?」 「単刀直入に伺います。ジャスミンの本当の父親は誰なんですか?」 思いもよらぬ質問に王の顔つきが変わった。 「誰に聞いた!!」 「僕には聞く権利があると思います。」 「誰に聞いたと言っておる!!」 「この秘密を知っている者が誰かお考えになれば明白でしょう。誰かは僕からは言えません。」 「ううううむ!! カシミールか!! カシ!」 「陛下!彼をお呼びになってどうなさるつもりです!それよりこの秘密をジャスミンが知っていた、ということを陛下はご存知でしたか?」 「何と!何と申した!」 「ジャスミンは自分が王の実子ではないと言ってました。7歳の誕生日に陛下がデリルとここで話されていたのを聞いてしまった。と告白してくれました。ただ陛下の自分に対する態度が全く変わらないのでそれを忘れようとしたそうです。だからこそ、僕には真相を聞く権利があると思うのです。お願いです!陛下。もし真実を話して下さったのならそれは一生この胸の奥に収め、誰にも話しません。教えてください!陛下。」 「・・・・・・そなたのアザはもう隠れることはないのかの。・・・・・ジャスミンの肌は美しくキメが細やかであったろう?そのアザが消えないのは、そなたの愛が余程強かったという証拠じゃろう。・・・あの子の肌の美しさは母親よりもむしろ父親の血をより強く受け継いでいる。 私は皆にその秘密が判らぬように注意を払ってきたつもりじゃった。それなのに・・・臣下の者は誰一人、気付かなんだのに。肝心なあの子に知れてしまうとは・・・約束してくれるか?これから話すことはあの子のみならず、誰にも話さぬと。」 王は握った手に力を込めた。ケインは期待に応えるように無言で頷いた。
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