「ケイン様。今まで隠していた事があります。・・・・わたくしは・・わたくしは・・現王である、父、ムファドの・・・・・実子ではありません。」 涙でボロボロになった顔をものともせずジャスミンは語り始めた。 「えっ?!」 (何故彼女はその事を知ってるんだ!) 疑問が黒い渦となって彼の心を覆った。 「ごめんなさい。今まで黙っていて。・・・・・わたくしがこの事実を知ったのは7歳の誕生日を迎えた日でした。お父様の部屋へ誕生の挨拶に行くと、お父様とカシミールの父、デリルが2人で話していたのです。実の父親が。というような内容でした。それまで実の父と慕ってきた方が本当は違っていたという事実は、わたくしにとって非常にショックな出来事でした。それ以後の父のわたくしへの慈しみがなければ今のわたくしはなかったでしょう。ですからわたくしもその事は考えまいと心に決め、今日まで生きてきたのです。けれどあなたにさきほどいとこ同士でも構わないと言われた瞬間、これではいけない、真実を告げよう。その上であなたの決定を受けなければならない、と思ったのです。」 「・・・・・それで君は、僕がそれほどの重大事を黙っていた人とは結婚できない。と言ったらどうするつもり?」 既にその話を知ってるという事実を悟られまいと彼は努めて冷静に聞いた。すると彼女の肩がブルッと震え、大粒の涙がポロポロとこぼれた。 「そ その時は わたくしは・・・」 それ以上言葉が続かない。ケインは彼女の傍に腰を掛け、そっとその肩を抱き寄せた。 「悪かった。君があまりにも真剣だったからちょっとからかってみたんだ。 僕はたとえ君が誰であろうとこの意思を覆すつもりはないよ。エローラの丘であの悪巧みを聞いたときからどんな事があっても君を守ろうと決めたんだからね。何も心配しなくていいんだ。 そんな事で悩んでいたのか。僕がもう少し早く気付いてやればこんなに苦しませずに済んだのに。ごめん。・・・・・さぁ、もう何も考えず少し眠った方がいい。」 ベッドに横たわる彼女の額に優しくキスをし彼女が眠るまでその手を握ってやった。完全に眠ったのを確認すると、ケインは王に会うため部屋を出た。廊下はさきほどの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
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