ジャックに遅れること1時間。カシミールが手配した兵士達と共に王、プレーナム、ミンミンと宮殿に戻ったケインは、何やら重苦しい雰囲気を感じた。すすり泣いている侍女もいる。通りがかった者に事情を尋ねると、アーサーとスージーが変だ、というだけでさっぱり要領を得ない。ジャックが戻ったはず、と言うとスージーの部屋にいるということだけはわかった。胸騒ぎを覚え、すぐスージーの部屋に駆けつけると、部屋の隅で小さくうずくまっているジャックの姿があった。 「ジャック?」 呼んでみたが反応がない。肩に手を掛け更に彼の名を呼んだ。するとジャックの身体がピクッと動き、ようやく顔を上げた。 「一体どうしたんだ。教授とスージーに何があったんだ?」 「ああ、ケインか。 教授が亡くなったんだ。」 他人事のように答えるジャック。 「え?!」 教授が亡くなった?いつ?どうして? 「ケイン、俺、おかしいだろ?こんなすごい事をこんなに簡単に言えるんだぜ。悲しいはずなのに涙も出ないんだ。なぁ!俺変だろ?!」 ジャックはケインの胸元を掴みグラグラ揺すった。 「ジャック・・・・・」 「ウワー!!」 そこで初めてジャックが泣き崩れた。 その声でベッドに寝かされていたスージーが目を覚ました。 「ここは?」 「スージー。僕だ、ケインだ。わかるか?」 「あ、ケイン。どうしたの?私、どうしてこんな所にいるのかしら?」 「起きなくてもいいよ。・・・・ねぇ。それより聞きたい事があるんだけど、いいかな?」 「聞きたい事?ええ、いいわよ。何かしら?」 「教授の事なんだけど。」 「先生の事?何?」 「何って。君、ずっと一緒だったんじゃないのかい?」 「ええ、そうよ。先輩も一緒だったわ。それがどうかした?」 「教授が亡くなったと聞いたんだけど、詳しい話、聞かせてくれないかな。」 「え?先生が?嘘よ。ケインたら嫌ね。私をからかうのもいい加減にしてくれない?」 そう言ってベッドから立ち上がるスージーには特段変わったところはない。足取りも軽く部屋から出てアーサーの部屋に向かった。ケインもその後を追ったが、ジャックは相変わらず呆然としたまましゃがみこんでいた。
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