あの洞穴から戻ったもののジャスミンの意識は戻らない。あの時戻った意識は何だったのだろうと思われるほどに。ケインは彼女の部屋に誰も寄せ付けず看病していた。そのお陰で皇女、プレーナム発見のニュースはごく一部の人間しか知らなかった。このまま家来達を騙し続けるのは良くないことだとわかっていたが、悪人達の陰謀を暴くのには必要不可欠と判断し、表向きはまだ捜索しているふりを続けていた。 プレーナムは宮殿に戻るとすぐ元気になって、ケインの計画を手伝うと張り切る姿勢を見せたのだが、ケインは苦笑しながら「それじゃ意味がない。窮屈だがちょっとの間辛抱してくれ。」とジャスミンの部屋から一歩も外に出ないよう釘をさした。
救出から3日経った。(テリーとジュディーにとっては悪魔の日になった丁度その日・・・)一日に三度毒消しの薬をジャスミンに飲ませなければいけないのだが、初めは吸い飲みで服用させようと試みたのだが全く受け付けないため、ケインはプレーナムの言う通り口移しで飲ませてみた。すると僅かではあるが飲み込むように見えた。少しづつ与える事で顔色も良くなっているようだった。 その日の深夜、(その時すでにテリーの姿はジャングルの奥地へ消え、ジュディーも同じようにジャングルに身を投じていた。)看病の甲斐があって漸くジャスミンの意識が戻った。感激の余りプレーナムはジャスミンのベッドに覆いかぶさるように泣き出すし、ケインも又改めて神に感謝した。 「プレーナム。」 弱々しいがはっきりした口調だった。 「ひめ・・・さま・・・」 「ありが・とう。プレーナム。」 「いいえ。・・・みんなケイン様のお陰でございます。ずっと、お休みにもなられずご看病を・・・。」 プレーナムの言葉に彼女は始めてケインの姿を探した。そしてその姿をはっきりと認識すると、その両目からポロポロと涙がこぼれた。じっと見つめあう2人。泣くのをやめたプレーナムはそっと隣の部屋へ引き下がった。 ベッドに近寄り数日の間に一段と細くなったジャスミンの手を取り、額にそっと口づけするケイン。 「生きていて良かった。」 呟く声も掠れていて殆ど聞き取れない様子だった。そのままジャスミンの柔らかく長い髪に顔を埋めじっと涙を堪(こら)える姿に彼女もまた呼応するようにケインの背中に回した手に力を込めた。 「ケイン様。宜しゅうございますか?」 感動が落ち着く頃合を見計らったかのように隣部屋からカシミールの声がした。
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