ジュディーの未来がアーサーとスージーによって打ち砕かれたとは知らないテリーは、意気揚々とジャスミン達のいる洞穴に向かった。時間を見計らってヤコブに連絡することになっていたので、召使を使って例の場所に来るよう伝言した。その時のテリーの心中は天にも上る気持ちだった。(これで俺は億万長者だ!)
だが―――― 洞穴の入口まで来てその気持ちは突如として現実に引き戻された。扉が開いているのだ。一体誰が?・・・恐る恐る中に入り、薄暗い中を見渡すが・・・目指すジャスミンとプレーナムの姿がない。(何だ?何が起こったんだ?) 動揺の余りテリーはあちこち動き回った。その姿を最初から見ていた者がいた。 「テリー様。お探しのものは既にケイン様とジャック様が宮殿に持ち帰りました。」 冷静な男の声。ギョッとして振り返ったテリーの目に、兵士を引き連れたカシミールの姿が映った。 「全て発覚いたしました。この上は速やかに私達とご同道下さい。」 「ハッ! 笑わせないでくれよ。カシミール。一体何の事を言ってるんだ? 私には何の事だかさっぱりわからない。」 「テリー様。私の口から言わせるのですか?あなた様と大臣が何をしていたのかを。」 「な・何のことだ。さっぱりわからん。」 テリーの額と脇の下から油汗が吹き出した。 「あくまでもシラを切るおつもりですか。わかりました。証人をここへ。」 カシミールが兵士の1人に言うと、陰のほうから1人の男が引きずり出された。 「お、おまえは!」 「も、申し訳、ありません。私は、私は。」 それは何かと不便もあろうかとヤコブがテリーに付けてくれた従者のテジャという男だった。見ると体中に傷があった。目は腫れて殆どその役目を果たしていないようだ。かなりの拷問を加えられたのがわかった。彼は許してくれと言わんばかりに両手を合わせ見えない目を必死に開けていた。 「この男が全てを白状いたしました。テリー様、私達とご同道を。」 カシミールの言葉にテリーはサッと身を翻した。その右手には一丁の拳銃が握られていた。その銃口はまっすぐカシミールに向けられている。 「こんな事が起ころうとは思いもしなかったが、まさかの時のために準備しておいたのが幸いした。・・・どけ!」 怯(ひる)む兵士達を尻目に、カシミールも同じように拳銃を手にしていた。 「いいですか、テリー様。私は命など惜しくありません。父の代から現王に仕え、一朝、事あらばこの身を捨てる覚悟はできております。またそういう風に育てられてきました。ですから損をするのはあなた様ですぞ!」 気迫の篭ったセリフに一瞬の隙が出来たテリーを兵士達が見逃すはずはない。怒涛のように押し寄せ、瞬く間に拘束してしまった。がっくりうな垂れるテリー。そのままカシミール達はテリーを引き連れ外に出た。ところが・・・・・ 絶望に打ちひしがれていると思ったテリーが、身体ごと兵士にぶち当たり、言葉を発する間もなくジャングルの奥へ逃走してしまったのだ。すぐに後を追う兵士達。カシミールはスウォードの不在を悔やんだが、テリーの命が長くないことは想像できた。何故ならこの奥に入って生還できた者はいまだかつていなかったからである。
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