スージーの視線と叫び声を背中に感じながらジュディーは必死で逃げた。アーサーの号泣とスージーの想いを目の当たりにして、やっと自分の間違いに気付かされたのだ。後悔で身体が押しつぶされそうだった。 もう走れない!限界だ!と立ち止まった場所はエローラの丘。後ろは断崖・・・下を見ると鬱蒼としたジャングルが広がっている。振り返るとスージーもハアハア息を弾ませながら上ってきた。彼女も限界のようだ。 「せ・せんぱい・・待って・・」 「何故追って来るのッ!帰ってよ!」 気持ちと裏腹の言葉が出た。 「だだだってわ・私・・せん・・ぱいが・・」 「さっきも言ったでしょう!私はあなたが憎かった。だからテリーの言う通り手伝った!あんた達が来なければ私はテリーと大金持ちになって――― なのに何故邪魔をするのッ!」 自分でも次に出てくる言葉の予想がつかない程興奮しているのがわかる。 「カシミールが教えてくれたの!先輩がテリーさんと一緒にいて様子がおかしいから行ってみろって!先生も心配して一緒に行くと仰るから、教えられた場所に来てみたら、先輩とテリーさんの話を・・」 さすがに濃厚なキスシーンを目撃したとは言えないらしい。 「わかったわ!それ以上もういい!!でもさっき言った事は本当よッ!来ないで!それ以上近付くとここから飛び降りるわよッ!」 スージーはこんなに興奮したジュディーを初めて見た。一瞬たじろいだものの、心配する余りその距離を縮めた。 「来ないでって言ってるでしょう!」 「馬鹿な真似はしないで!先輩! さっき言ったことは本当だと言ったけれど、私の言った事も本当なのよ!私はずっと先輩に憧れていた。先輩がジャックを好きだったってことも知ってたわ。けどジャックは発掘のこととなると他の事は全く目に入らない人だった。だから先輩もそうしていたんでしょう?ならどうしてテリーさんなんかの誘いに乗ったの?!」 自分の気持ちの核心を突かれ、ジュディーの表情が一層険しくなった。 「そ・そんな事、有り得ないわ! 私は単純に考古学を勉強。」 「こんな時まで嘘言わないで!先生も仰っていたでしょう!ジャックは先輩の事尊敬していたって。お願い、戻って!以前の先輩に!」 「来ないでッ!――――― もう・・遅いのよ。ジャスミン達はテリーの作ったアヘンの毒で死んでしまったわ・・・」 「違う!きっとカシミール経ちが助けているわッ!」 「そんなことどうしてわかるのよ!・・・もういいの・・スージー。 私はあなたが思っているような人間じゃないのよ。それに先生にも心配をかけてしまった。・・・・・・もう元に戻る事はできないわ。 さよならスージー。先生にあなたの口から私が間違っていたと・・謝って許される事じゃないけど・・謝っておいてね・・・今までありがとう・・・」 次の瞬間、ジュディーの身体が宙に浮いた。スージーは素早くその場所に駆け寄ったがすでに遅く、ジュディーの身体はジャングルの中に吸い込まれていった。 「ジュディーーーーーーッ!!」 スージーの叫び声があたりに空しく響いた。
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