アヘンの香炉を設置したヤコブ、テリー一派は素早く洞穴を離れ、それぞれの場所に戻った。 (あとは時間が全てを解決してくれる。)全員がそう思っていた。 更に3日が経った。ジャスミン達が姿を消してから6日後のことだ。ヤコブは政務に戻っても自然に顔が綻(ほころ)んでくるのを禁じえなかった。(もうじきこの谷は私のものになる。王は具合が悪いようだし。もし仮に平癒したとしても以前のようには戻れないだろう。でなければジャスミンと同じ方法で始末してしまえばいい。フフフフ)家臣もいつになくヤコブが上機嫌なので、おかしい。と感じつつ、各々(おのおの)の仕事に従事していた。
テリーは自分の仕事に寸分の狂いはないはず。と確信していたので未来は前途洋々、次期王であるやこぶと手を組んだ今、恐れるものは何もないと有頂天になっていた。邪魔者は消した。ジュディーにはたっぷり甘い汁を吸わせてあるからまず裏切る心配はない。仮に裏切ったとしても俺には最後の手段がある。案ずる事はない。あるのは輝かしい未来だけだ。 「テリー。何故皇女達をあそこに閉じ込めたの?!」 テリーの自信を打ち砕くようにジュディーが問い詰めた。 「ジュディー。俺は皇女達に対して何の感情も持ってはいない。あくまでもビジネスとしてヤコブに従ったまでだ。この一面に咲く芥子の花を全て売りつくしてやる!」 「売りつくすですって?!一体どこに売っているの!」 「知りたいか?なら教えてやろう。君はもう仲間だからな。君も俺なしでは生きてはいけないだろう。え?そうじゃないのか?」 テリーの指がジュディーのうなじを這(は)うように撫でる。 濃厚なキスの後、耳元で甘い声で囁かれてしまうと、先程の勢いはどこへやらジュディーはうっとりとなってしまった。引き続きテリーはジュディーの髪をもてあそびながら囁いた。 「あれは全部清(しん)の国に持って行くのさ。清(しん)ではあれは高く売れる。もう少ししたらここを引き払って2人で清(しん)へ行こう。贅沢な暮らしをさせてやるぞ。・・・それにしても君が俺の計画に賛同してくれるとは正直予想外のことだったな。発掘一筋の君が一体どういう心境の変化なんだい?」 既に恍惚状態のジュディーは掠れた声で答えた。 「いくら勉強していい成績を取っても男の人は可愛い子を選ぶわ。たとえ無知で何の取柄が無くともよ。いい例がスージーだわ。あの子は私にとって邪魔な存在だった。先輩なんて言って私の後についてくるのは教授の目に留まりたいから。本音はこんな先輩、私の引き立て役くらいにしか思っていないのよ。だからあなたの言う通り、発掘するふりをしていたんだわ。」 「君の努力は高く買うよ。俺達は出発点は違うけれど、行き着くところは一緒ってわけだ。・・・さぁ、そろそろ仕上がる頃だ。君も出来具合を見に行くかい?」 「いいえ。私はここであなたの帰りを待っているわ。」 「そうか。それじゃ俺は大臣を誘って見に行って来るよ。」 テリーがそう言い残し、あの洞穴に向かったのはケインとジャックがジャスミン達を助け出した3日後、つまり事件発生から6日後のことだった。
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