3ヵ月後。ケインを加えた考古学班、教授のサー・アーサー・ドイルを隊長とした総勢16名は船酔いに苦しみながらも漸くインドのボンベイに降り立った。 そこでポーターを雇い、まず車で行ける所まで移動し、その後はただひたすら磁石を頼りに歩くのだ。 「さすがにこっちは暑いな。」 誰とも無く呟いた。 荷物を手分けして持ち、一行はジャングルを目指す。通訳はアーサー教授の教え子でR大学に留学していたリュ―・テリーだ。卒業後は故国でイギリス人相手に貿易の仕事をしながら時折通訳の仕事もしている。 「ええ。皆さんそうおっしゃいます。でもジャングルは暑さよりいろいろな生き物がいるので、そちらに注意してください。小さな虫でも人の命を奪うものもいるんですよ。それから何と言っても恐ろしいのはスウォードと呼ばれているトラです。奴は大変獰猛で、今まで多数の人間が襲われています。十分気をつけてください。まぁ彼に出会う事もないでしょうが。出くわしたなら仕方なく諦めることですね。」 冗談ともつかない言葉でテリーは言った。 「なぁケイン。なんかすごい所に来ちまったなぁ。もっと楽にそのエルドラドに行けると思っていたのに。」 ケインと肩を並べて歩いていたジャックが話しかけてきた。元よりそうなのだが、何故かケインはある衝撃のためにジャックの言葉に反応することができなかった。”デジャブ”である。この光景は以前何かで見たことがある。そう感じていたのだ。いや、しかし・・・・そんな思いを反芻しながらそれでも彼の足はひたすら前に進んでいた。
ボンベイ港到着から数えて1週間目。テリーがしきりにおかしい、と呟き始めた。 「リュー君。一体どうしたんだね?」 アーサー教授が足を止めた。 「はい。そろそろ目的地に着く頃なんですが、目印となる標識が全然見当たらないんです。方角は間違っていないハズなんですけれど。」 2人に合せるように一行は足を止めた。 「一時休憩しよう。」 その言葉荷物を下ろす者、水を飲む者とくつろいだ空気が流れた。 と、その一瞬の隙を奴らが襲った。 スウォードだ! 烏合の衆と化した隊員達の中で誰かが叫んだ。逃げる隊員とポーター達を通常群れでは行動を取らないトラ達が容赦なく追う。2人、3人と倒れていく仲間たち。ケインもまたジャックと隊員である2人の女子学生(ジュディーとスージー)と共に逃げていたが、木の枝に足を取られて転倒し、そのまま意識を失った。 彼は薄れていく意識の中で合図のような口笛を聞いたような気がした。
つづく
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