「大丈夫かしら?」 楓のがみがみしたそれとはうらはらに彼女はなんて上品なんだ。 肩まで伸ばしたウェーブがかった髪。白い肌。赤い瞳が何かをそそっている。 「あ、ありがとう・・・」 俺としたことが緊張してしまった。普段見ている女といえば暴れてるだけの怪力野郎、物静かで何を考えているのかさっぱりわからん少女。 それに引き換え彼女には今までに感じたことの無い魅了があった。砂漠のオアシスとはこのことである。 「えっと、はじめましてかな、俺カイっていうんだ。」 よろしくと握手を求めたところで楓が馬鹿みたいにゲラゲラ笑い出した。 「カイ何赤くなってんのー?きゃはは。もしかして緊張してたりする?」 こんなとこだけ感が鋭くなくていい。 差し出された俺の手を見て笑いながら答えた彼女。 「はじめまして。よろしくね。」 ニコッと笑うその顔に太陽に似た輝きを感じた。もっとも真夏のただ熱を出し続ける木偶の坊なやつではない。春に燦燦と照るポカポカ陽気満載のあれだ。 「私、楓の従兄弟なの。」 ・・・はい? 「だから、私と楓は姉妹なのよ。お父さんは違うけどね。」 ・・・・・・・っえ? 「カイもわっかんないやつだなー、だから姉妹なんだって。今日転校してきたんだよ。」 「おいおい、ちょっと待て、お前に姉がいたなんて聞いてないぞ。」 「だっていってないもん。」 さらっとむかつくことをいう女である。 「ちなみに、私は楓より後に生まれたの。だから楓はお姉ちゃん、私は妹よ。」 名前はなんていうんだ? 「あ、ごめんなさい。私三月晴歌【みつき せいか】私たちちゃんと血も繋がってるのよ? いやいや、絶対おかしいだろう。二人が血縁だったのは理解できたが、なんで楓の何万倍も美しい晴歌さんがいもうとなんだよ。世界の定理に反している。 「あんたってもう少し私に対してやさしく出来ないのかしら〜? 首にがっちり腕を掛けられもがく俺をニコニコ見ているるルミ子。苦しんでる中で笑われてもなあ・・・ 再び晴歌さんの乱入によって助けられた。本当に二人が姉妹だとは思えん。いや、思いたくなかった。 虫けらのようにのたうち回っている俺を見て楓は不機嫌なのが人目で分かるほどに膨れていた。 待て、俺なんかしたか? さあ、という不適格な答えしか出さない楓に対し、他2名はうんうんうなずいていた。わかってるなら教えてくれよ。全く。 晴歌さんはどうやら隣の5組に配属されたようだ。 ん?俺の組?ああ、4組だよ。言ってなかったけか?まぁいい。今言ったからな。 始業の鐘がなり、各々は自分の持ち場に戻った。 こうしてまたつまらん授業の第2ラウンドの始まりだ。
|
|