キンコーンコンコーン どの学校でも流れそうなチャイムが流れ、教師が教室に入ってきた。 1時間目から大嫌いな英語の授業、自分の感覚でいうならシャッター機能でもついたと思うほど重たいまぶたを無理に開店状態に保つ。 俺はこんな毎日が同じことの繰り返し・・・学生ならただの当たり前な登校という行為にも嫌気を感じた。ただの日常、現実的な世界。 「ああ、つまらないな」 こんなことなら高校になんて来なければ良かった。そうすれば少なくともこの教室にいる38人とは全く違う日常が俺を待っていたはずだ。 そんなことを朝から考えている男子を一人、後ろから遠慮がちに見ている女子。 いや、本来なら女子という表現で正しいはずなのだが、彼女には少女と表現するべきではないのかと講義を受けるような、高校生には思えないふいんきを持っていた。 実際、ふいんきだけでなく少女なのだ。見た目は完全に中学・・・無理をして小学生ほどの童顔、チビッコ、ツルペター、な完全にアレな少女なのだ。 1時間何もせず机のシミを見て色々な形になるなぁなんて考えていたら背中から軽く気絶するほどの衝撃が俺に突っ込んできた。 「ほらほら何してんのー?せっかくガッコ来たのにそんな顔してさー」 「この顔はお前の馬鹿力のせいだ」 こいつは三月楓【みつき かえで】ただの女とは思えない怪力の持ち主だ。その気になれば車も持ち上げられると俺は思っている。(まぁそんなわけないんだか。) そのくせ顔はいいわ、スタイルはいいし、筋肉質でもない、当然そんなランクAにも勝るこの女を男共は見落とすわけもなく、モテる。 「だ、大丈夫?」 か弱く小さな声、控えめな性格、穏和、可憐、一言聞けばそこまで分かる。彼女は星峰ルリ子【ほしみね るりこ】クラスに一人はいるおっとりとしたやつだ。さっき俺を見ていたのもルリ子だった様だ。 俺と楓は中学生のころからつるんでいた。 別に同じ高校になりたくてここを選んだわけではない。 ただこいつと俺の学がたまたま偶然にも一緒だっただけである。いわば腐れ縁だ。 ルリ子は高校からの知り合いだ。最初は話したことも無かったのだが、その外見から悪いお兄さん(というかただの変体だが)に襲われかけたときに楓に助けてもらったらしい。 ちなみに俺は海道カイ【かいどう かい】一言でいうと普通。ただの高校生。特に目立った長所も短所もない。全くつかみ所のない男だ。だが自分でいうのもなんだかむなしくなるな・・・ 「あんた、授業中ノート何にも書いてないでしょ!」 なぜわかったか聞こうとしたが机のうえにある真っ白なそれを見て適当にごまかした。 「こんなん書かなくてもなんとかなるだろ。」 「だー、もう!なんであんたはいっつもやる気ゼロなのよ!ほら、これ貸したげるからしっかり写しなさいよ。やんなかったら・・・」 手の第二関節辺りをバキバキならしながら言われては断るなんて選択肢は地獄の要入り口に等しいものだった。 わかったと促すも楓はまだ俺に対して不満をぶつける気な様だ。 こういう時に話題を変えてくれる気の利いたやつが欲しかった。しかしルリ子は楓の権幕に完全に飲まれていた。 彼女の性格上仕方ないのだが今だけは何とかして欲しかった。なんとも人任せなやつだな、俺。 楓のお怒りに参っている俺を見てルリ子は太陽のような爽やかな笑顔でこっちを見てる。 「まぁまぁ三月さん、その辺にしとけって。」 おお、ついに来たか俺の救世主、心からありがとう。 そのお方の顔を覗くが見なれないひとだった。
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