試験を受けてから三日後、今は朝九時である。稔はK塾の入り口の自動ドアを通り、中に入った。今日は三日前に受けた試験の結果を受け取り、同時に今後使っていくテキストを受け取る日である。既にK塾は浪人生であふれていた。稔は自分の指定された教室へ向かった。 教室に入ると、二十人ちょっとの浪人生が机に座っていた。二、三人で話している人も少しいるが、殆どの生徒がだまって机についていた。なるほどK塾には山ほど浪人生がいるが、このクラスはトップのクラスなので人数はそれほど多くないのだ、と稔は悟った。見回すと本当にいろんな奴がいるが、女子がいることにやはり稔は落ち着かなかった。そのとき、稔は見知った顔を確認した。西文昭二だ。 「ショーチャン」 「稔君、同じクラスだったんだね。宜しく」 「あ、宜しく。これから一緒だし、稔でいいよ」 ショーチャンの隣の席に座り、少し話していると、K塾の職員らしい中年の男と若い女性が教室に入ってきた。男は教室内を見回すと、きびきびとした口調で話し出した。 「みなさん、こんにちは。私がこの東大、京大コースのチューターを担当する富田です。こちらも同じくチューターの鈴木です。ここにいる皆さんは、日本でもトップの東大、京大、東工大、一橋大などを目指そうとしている人たちです。それぞれの人がどこかしら大学を受験し、失敗しました。そして浪人を決意してこのK塾に来ました。この一年間あなた方は勉強以外することはありません。自分に何が足りないのか常に考えて勉強してください。はっきり言って現段階では実力が志望校にとどいていない人がほとんどです。これから先日行った試験の結果を返却するのでこれを真摯に受け止めてください。なお今後何回か進路相談がありますが、それはこの私が担当していくので、宜しく。それでは試験を返します。文型コース浅井君」 富田さんは文型からあいうえお順に試験を返していった。ほとんどの者が無言で受け取っていった。しかし、やけにニヤニヤしながら受け取る奴もいて、稔はイヤミな奴だと思った。 はっきり言って稔の試験結果は良くも悪くも無かった。地元T大なら八割方合格、しかし第一志望の京大となると可能性は30%と厳しい数字が出ていた。 「オレ、ダメだ……。東大なんて夢のまた夢だ。T大も危ないし。どうしよう。やばいよね」 西文昭二が稔に話しかけてきたが、稔は全く聞いていなかった。結果を確認した次はひたすら周りの女の子の確認ばかりしていた。なかなか可愛い子もいる。しかも彼女らはインテリなのだ。稔はインテリが好きだ。 西文はずっと横でブツブツ言っていた。富田というチューターはその後なにやら海星高校は体育の時間も削って補修をしてるとか、浪人は現役より伸びずらいとか話した後、テキストを前にずらっと並べて、生徒に順に取らせた。そして明日からの授業のシステムを説明したあと、頑張れと一言行って去って行った。 遂に明日から勉強地獄が始まるのだ。 夕飯を食べた後、稔はテキストを眺めてみた。膨大な量の数学の問題、英語の長文、英作文。ここで稔は以前の決意を固くしたが、その日は勉強する気にならなかった。 そこで、机の引き出しから、エロビデオを取り出し、それを使ってなにごとか行ってから、疲れて寝た。
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