乱暴に机に参考書を置いた
「珍しく機嫌悪いじゃん。克彦」
友人の雄也(ゆうや)が声を掛けた
「悪くもなるよ。いきなり名前も知らない奴に“バカ”呼ばわりされたらね」
「何それ?知り合いじゃないの?」
後ろの席にやってきた雄也の幼馴染みの聖也(せいや)が訊ねた
「全然。見たことも話したこともないよ」
「気をつけたほうがいいよ。最近変な奴多いし」
「そうそう。聖也みたいに襲われちまうぜ」
イタズラっぽく笑う雄也の頭に聖也の鉄拳が落ちた
「っ痛〜」
「本気で怖かったんだからな!」
涙目の聖也に雄也は苦笑いした
「悪かったよ。ごめんって。でもあの時はちゃんと助けただろ?」
「そうだけど…」
語尾を小さくし顔を背ける聖也の頬はほのかに赤い
「惚れ直しちゃったんだよな?」
嬉しそうに聖也の頭を撫でる雄也にもう1つ鉄拳が落ちた
顔は可愛いのにあの鉄拳はやはり男のものだと克彦は思った
講師が入ってきてざわつきが納まる
前に向き直り克彦はもう1度考えてみた
(セシル?一体誰のことなんだろう?)
大学の近くの喫茶店に先程の青年は居た
テーブルに頼んだメニューが並ぶ
おいしそうな香りを漂わす料理に青年は満足げに微笑みフォークを取った
「あいつらが見つける前にどうにかしないとだな」
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