20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:病室前という名の停留所 作者:ふたば

第2回   秋の空 / 627号





「秋の空」



車椅子
僕は銀杏ひろって過ごす

時間が来ても戻ろうとせず
ああ、おかあさん、おかあさんと

病気の黒いかたまりが
空に揺れては吸いこまれていく













「627号」



中学生
全身に包帯の私は
外から両目だけがのぞく

早稲田の学生は
車椅子を力強く押して
よく散歩に連れ出してくれた

見舞いのない男
日毎に調子は悪くなって
カーテンも開けなくなった

髪のない頭は
毎日、絵を描いていた
あと一年と三ヶ月なんだ

窓を開けないから
空気がいつも湿っていて

病棟を移る日に
学生は車椅子を押してくれた
男には声をかけられなかった

髪のない頭は
よく挨拶しにきてくれたなあ と
頭をなでていた









← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1388