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作品名:病室前という名の停留所 作者:ふたば

第1回   おとなたち




「おとなたち」



十二歳の夏も病棟にいた
4階には整形外科と
小児科と婦人科、産婦人科があって
(これは4という数字に関係している)

小児科ではなく
おとなだらけの整形のほうにいたので
喫煙室(面会の部屋ともいう)に出入りしている
こどもはぼくくらいのものだった

周りのおとなたちからは随分
果物やらお菓子やら頂いた
ひとつ全部食べきらないうちに
「はい次々。これもこれも」といった感じで

可愛がられていたように思う
周りが不愉快になるようなことを言ったり
遠慮するようなことがあれば
よく熱心に叱ってももらった

喫煙室にはときどき
物静かなおばさんが煙草を吸っていた
他のおとなと話してる様子はなかったけど
ぼくとふたりのときはよくニコニコおしゃべりした

その様子を見ていたのか
ある日とつぜん仲の良かったおじさんが
あのおばさんとはあまり仲良くせんほうがいいよ、と言った
あのひとはこころが病気で変な神様を信じてるんだ

おじさんに言われて
おばさんのことを悪く思う様になったわけではない
ただ、言われたことを素直に
受け止めただけだと思う

やさしい口調でいつも
嬉しそうに話を聞いてくれるおばさん
婦人科に長く入院していると言っていた
それから会っても挨拶くらいしかしなくなった







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