彼の姿はあまりにも浮いていた。 綺麗な町の外観にそぐわぬ擦り切れた外套。 周りの者たちは皆、彼の事を浮浪者か何かと思っていた。 彼も本来ならこんな町に来る予定は無かった。 自分が本来居る場所とは違い、あまりに眩しすぎるこの町。 久しく忘れていた感情が微かに甦る。 だが、すぐにかき消す。 もし、その感情が戻るとすれば、自分の目的が達成した時だ。 彼はその為にこの町に出向いた。 だが、結局の所彼の無駄足に終わってしまった。
ならばこの町に長居は無用。 そう思って彼は町の出口へと向かっていた。 だが……。
「兄さん、ちょっと顔貸してもらえる?」
彼の目の前に4人ほどの悪人面の男がいた。 面倒な事に巻き込まれる前に出て行きたかった。 彼の心中は穏やかではなかった。
目的は達成できなかった。 先程のサングラスの男との出会い。 そして、この足止め。 ……歯がゆい。そう、感じていた。 彼は4人に四方を囲まれある場所へと連れて行かれる。
そこは工事途中でほったらかしにされたビル。 中はだだっ広い空間が広がり、スカスカの状態。 露骨にむき出しの鉄骨。 地面には資材と思わしき鉄部品が無残に転がっていた。 唯一、外からは見えないようにビル全体にシートがかけられていた。 彼は中へと連れられて行く。 そして、目の前には先程の手首を失った男が居た。 男の周りに10人ほどの手下と思われる男達がいた。 その状況である程度彼は察した。
「さっきはよくもやってくれたな、ええ!」
怒りに満ちた声がビルに響き渡る。 周りにいる男達が隠し持っていた武器を取り出す。 彼はそんな状況でも一切取り乱したりしなかった。 それどころか。
「ふん、怪我の具合は至って良好のようだな? いっそあの時 片腕を切ってしまえばよかったか」
挑発とも思える言葉を発した。 そんな言葉を受けた刺青の男はこめかみに青筋を立てていた。
「なんだとテメェ! お前のおかげで俺は手を失ったんだぞ!? この落とし前はきっちりさせてもらうぜ!」
周りの男達がじりじりと彼ににじみよってくる。 次の瞬間に待っているのは一方的な暴力。 そう、思っているのは彼等だけ。 外套を着けている彼だけは違う事を思っていた。
「……くだらんな」
周りの男達を見渡して彼はポツリと呟く。 そして、彼は一振りの刀を取り出す。 不気味なほど真っ赤に染まった刀身。 そして、それを持つのは白銀の義手。 彼はあの時断言した。
『相手が例え蠅のような存在であろうと容赦はしない』
そして、彼はそれを実行した。
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