「うわああああああ!」
突然の悲痛な叫び声。 少年はその場でのた打ち回る。 それもその筈、彼の右目からはおびただしい血が流れていた。 必死にそれを押さえる少年。 激しい痛みが彼を襲う。 だが、それ以上に目の前で起こった惨劇の怒りの方が大きかった。 少年の前には物言わぬ亡骸が二つ。
一つは見る影も無いほどにズタズタに全身を切り刻まれていた。 手足、胴体、頭。全てが原型を留めていない。
もう一つは、「誰か」が持ち上げ、死んでいるのにも関わらず、 未だ長い刀を抜いたり刺したりを繰り返していた。 この「誰か」こそがこの惨劇を起こした張本人だ。 そして、気が済んだのか、それとも飽きたのか、 持ち上げていた死体を放り投げた。 そして、少年の方へと足を運ぶ。 手には2mはあるのではないかと言う刀。 惨劇を起こした刀を引きずりながら少年の目の前に立ちふさがった。
「よう、少年。お前、俺が憎い?」
返り血で真っ赤に染まった口がケタケタと笑う。 本来なら、その顔を見るだけで人は恐怖で何も言えなくなる。 だが、少年は恐怖以上に、怒りがまさっていた。
「憎いに決まっているだろ! 殺す! 貴様は絶対に殺してやる! 俺の父さんと母さんをよくもーーーーー!」
殺人鬼に殴りかかる少年。 だが、実力差は圧倒的であった。 少年の拳をかわすと同時に腹部に膝を入れる殺人鬼。 少年の怒りも虚しく、腹部を押さえてそのまま崩れ落ちる。 そして、殺人鬼は少年の髪を乱暴に掴み、顔を正面から向かい合う。
「いいね、少年。気に入ったよ。その無謀さに免じて、 君は見逃してやろう」
殺人鬼の気まぐれ。 少年が抵抗したのがよほど嬉しかったのか、顔の表情が緩む。 髪を掴んでいた手を離し、そのままゆっくりと少年の下を去る。 そして、最後に殺人鬼は捨て台詞を残していった。
「俺を殺したいのなら頑張れよ? 今日から復讐の始まりだな。 楽しみにしてるぜ? 少年」
そういって顔だけ少年の方に振り返る。 少年は意識を失う前に殺人鬼の赤い瞳だけが印象に残っていた。
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