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作品名:僕の隣 作者:浅葱

第11回   瞬く星の下で
ぼくは目を伏せ、深呼吸して心を落ち着かせる。
「……独り、だったんだ。いつも淋しかった。言いたい事があったけど、言えなかった。それを言うと、もっと辛くなると思っていたから。でも、言わずにいるのも辛かったんだ。一人だけでもいいから、俺の事、解ってくれる人が欲しかった。でも、誰に頼ればいいのか、それさえも解らなかったんだ。言いたかったのに、ずっと……」
「言っていいよ。あたしがちゃんと聞いてあげるから。大丈夫だよ」
 辺りは既に闇が覆いつつあった。
 地平線際に残るオレンジ色。
 空に瞬いている星。
 髪をそよがせる風。
 変わらない。
 大丈夫だ。
 言葉を言いかけたその時、
 何故か泣きたい気分になった。

「俺を独りにしないで。ずっと俺の傍にいて」

 詩緒の手が優しくぼくの頬に触れる。
「嘉月、泣かないで」
 詩緒の目から涙が溢れていた。
「泣いてるのは詩緒だろ?」
 ぼくは詩緒を見て、力なく微笑んでみせた。
「嘉月もだよ」
 自分の頬に涙が伝っているのに気付く。
 ぼくが、泣いている……。
 可笑しかった。でも、笑えなかった。
「ずっと言いたかったんだ。ずっと孤独で、淋しくて、人恋しかったんだ……」
 詩緒の細い腕が、ぼくの頭を引き寄せて優しく包んだ。
 頑なに閉じた心が解れていく気がした。
 涙が止まらない。
「ずっと、ずっと独りだと、そう思ってたのに、みんな俺の事、心配してくれてたんだ。求めれば何時だって手を差し伸べてもらえたのに……。自分からは言えなかった。もう、自分からは言えなくなってた」
「ずっと独りで頑張って来たんだよね。ずっと自分を抑えて来たんだよね」
 詩緒の声は少し震えていた。
「あたし、変わらないから。嘉月と遠く離れても、嘉月に好きな人が出来ても、あたしに好きな人が出来ても、ずっと変わらない。嘉月の事、ずっと大切に思ってる……。だから、怖がらないで。自分独りで苦しまないで。あたしが嘉月の痛みも辛さも全部解ってあげるから」
 ぼくは、詩緒の言葉を聞いて思わず微笑んでしまった。
「……うん。やっと気付いたんだ。自分から求めていかなければ駄目なんだって。待ってるだけじゃ駄目なんだって……。詩緒のお陰だよ」
「あたしも、嘉月のお陰で気付いたんだよ」
「そっか」
 ぼくは詩緒の胸で目を閉じ、涙を流した。
 彼女の髪がぼくの頬をくすぐる。
 彼女の背に手を回し、華奢な身体をそっと抱いた。
 手に彼女の体温を感じ、ぼくは安心した。

「もう、真っ暗だな」
 ぼくは立ち上がってズボンについた草や砂を払った。
「帰るか」
「そだね」
 詩緒も立ち上がり、スカートを払って裾を直す。
「……かゆい。虫に刺された」
「だから言ったんだよ」
 ぼくは先に車道の脇にある小道に出て待っていた。
「星が綺麗だね」
 詩緒が空を見ながら歩いて来る。
「危ないから前見て歩いて」
「折角人が星空にうっとりしているのに、何でそんな事言うかなー」
「危ないから」
 詩緒がぼくを睨んだ。そしてばしっとぼくの尻を叩いた。
「早く行くよー!」
「お前な、いい加減にしろよ。今の絶対セクハラだからな!」
 詩緒はぼくを無視してどんどん歩いて行く。
 空を見上げると、確かに星は綺麗に瞬いていた。


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