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作品名:銀河を渡る船 第七部・絆(最終回) 作者:佐藤 神

最終回   6

「ドーター総司令官、これからサザンクロス星は王政を廃止して民主政にする。立会人
になってくれ」
 思い詰めたようにキャプテンが言う。
「そうか、サルダン国王も承認されているのか?」
「うん、もともとサルダン国王は民主政を望んでいた。賛成してくれるだろう」
「分かった、立会人になろう」
「ありがとう、ドーター総司令官。
あと最新型ロボット兵4千人近くが戦いを望んでいる。連合軍兵士として使ってもらい
たい」
「いいだろう、連合軍が引き取る。こちらも好都合だ」

 そしてサルダン国王の同意を得て、宮廷の会議室から全国放送でキャプテンが王政を
廃止して民主政にすることを発表する。

「サザンクロス王国を終わらせ、サザンクロス共和国に変わります。そして国会議員は
来月総選挙で決める。それまで僭越ながらわたしが暫定大統領を勤めます」
 と、言ってキャプテンはカメラを見た。
「この宮廷は国会議事堂と官公庁施設に代わります。サルダン陛下はサザンクロス共和
国の象徴となり海辺にある別荘に住み、サザンクロス国立子供学校に通っていただきま
す」

 キャプテンはサルダン国王を見詰る。サルダンは小さく頷く。
「サルダン陛下の海辺にある別荘と財宝の一部がサルダン陛下の財産になります。これ
からもサザンクロス共和国の皇室として国内外の祭事に参加してもらいたい。
 サルダン陛下の陛下自ら民になりたいとの申出は却下します。わたしは他星の人間だ
し、いろいろと問題が多い。共和国になろうともサルダン国王に共和国の象徴として国
内外の祭事を行なってもらいたい。ただしこの件は10年後にサルダン国王と国会で話
し合いたいと思っている。その時はサルダン国王の意志を尊重します」
 サルダンは納得したように頷く。

「国王だけに財産の供出をさせる訳にはいかない。民の私有財産、法人財産の全てを国
が預かる」
 と、言ってキャプテンは会議室を見回した。
「民のみなさん。これからは大きく変わります。消費税の廃止、相続の禁止、そしてフ
ァンドを禁止します」
 一瞬会議室が凍りついた。

「消費税の廃止に伴い国が地方に一般財源として国税を給付する」

「相続の禁止とは自分で溜めた財産は全て使い切れと言うことです。扶養家族は勿論考
慮いたします。ただし20歳以上は障害者,寡婦,父母を除いて扶養家族とは認めない。
 基本的に国の財源にします」

「ファンドとは担保を設定して、金利を付けて融資するものであります。わたしが住ん
でいた地球ではサブプライムローンと言う低所得者向けの住宅ローンが焦げ付き、その
ローンをファンド化した。
 ごく一部の投資グループがそのファンドの売買で利益を上げ、次々に事業をファンド
化させた。
そしてインフラ事業にまで触手を伸ばし、エネルギー事業、水道事業、電力事業、医
療、教育、最終的にファンドと手を組まないと国の事業が成り立たなくなった」

「例として水道事業で説明すれば、
水道事業部は給水設備が旧くなり、新型と変えないと水を供給できなくなった。国に予
算を要求しても無しの礫、水道事業部は給水設備と土地を担保に金利の付いたマネーを
ファンドから借り入れる。
 そのため100クロスの水がファンドの介入により金利が付加されて102クロスに
値上がりする。その金利は使用者負担になり、水道料金が支払えない家庭は水道の給水
を止めることになる。
 だがそのために生命が脅かされると法治国家としてはまずいので、補給車が水を運ぶ
ことになる。それが日常茶飯事になると生活がきつくなる。また電力、医療も同じこと
です」

「ファンド・マネジャーも利益を上げないと職を失う。そのため利益を上げようと姑息
な手段を使う。この宇宙の政治経済は、大手のファンド企業が操っている。この前の宇
宙戦争も影でファンドが蠢いていた。後ほどその手口をわたしが公開する」

「マネーを持った投資家が何もしないで利益を上げようとする。そこに経済格差が生ま
れ歪んだ社会になる。これは戦争だ。経済戦争が既に始まっている。サザンクロス星だ
けでなく宇宙を相手に闘うことになる。
 わたしは自国他星を問わず、武力、経済の侵略を阻止する。そのために先物取引、信
用取引、ファンドを禁止する。現物取引だけを認める。わたしの考えに反対する者は今
日中にこの星を去れ」

「それと悪法は改める。役人の仕事上のミスは罪に問われなかったが、これからは司法
に委ねる。特に厚生省の役人は仕事の怠慢により何人も人を殺している。これからは極
刑になるであろう。官僚の天下り。大手企業の談合、教育委員の口利き試験結果の改ざ
ん。全て厳罰に処す」

 そして、ゆっくりとキャプテンはサルダン国王を見詰る。

「陛下、サルダン陛下のお考えは?」
「うん、全面的に賛成だ。キャプテンがそこまで考えていたとは思わなかった。わたし
はキャプテンを支持する」
 幼さが残るサルダン国王は顔を紅潮させキャプテンを見詰る。

「陛下に賛同して頂き心を強くいたしました。
わたしは財源の厳しいリチウム鉱山を憂慮して、今住んでいる反対側の大陸の資源調査
を行なう。レアメタルを発掘するつもりだ。そして出産、育児、教育と老後生活は国が
全てを負担する」
 キャプテンは立ち上がり、カメラを見詰る。
「安定した生活、住み易い国を目指します。みなさん、一緒に構築しましょう」


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