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作品名:銀河を渡る船 第七部・絆(最終回) 作者:佐藤 神

第5回   5

<<分かりました、キャプテン、わたしの負けよ。ロボット兵たちよ、わたしは降伏し
ます。キャプテンの指示に従いなさい>>
 マザーの白衣は黄色く変色して、裾はぼろぼろに綻んでいた。それでも背筋を伸ばし
凛とした表情でマザーはキャプテンを見詰ていた。
 3年前、キャプテンは大型戦闘艇で参戦する時、マザーにサザンクロスの行く末を託
した。しかし結果的にロボット帝国を誕生させることになってしまった。
 マザーにしても紆余曲折を経て、不本意ながらロボット帝国を誕生させることになっ
てしまったと、キャプテンは考えていたが今さら尋ねる気にもならなかった。

「ロボット兵はスクラップにはしない。職業の自由を与える。しかしレーザーは不要な
ので体から削除する。
 だが戦いの好きなロボット兵は無理にレーザー銃を捨てるな、戦いの場所を他星に移
し海賊、スペースマフィヤ、野蛮人と心ゆくまで戦え。
 戦いを望むものはこの会議室に残れ、ロボット兵を捨てるものはこの会議室から出て
くれ」

<ドッタ、ドッタ、ドッタ>
 何千人のロボット兵が会議室を出たり入ったりごたついていた。しかし、ロボット兵
は会議室に入り切れなかった。
「こんなにいたのか、戦争好きのロボット兵は。うーん、28号。おまえも戦いを選ぶ
のか?」
<<キャプテン、自分は生まれながらの軍人です。器用な生き方は出来ません>>
「そうか、おまえを戦うロボット兵の仮リーダに任命する。宮廷の噴水の前にロボット
兵を整列させろ」
<<キャプテン、了解しました>>
 28号は敬礼し踵を返す。

 キャプテンはマイクを取った。
<ロボット兵、聞きなさい。戦いを望むロボット兵は会議室に入りきれない。場所を宮
廷の噴水の前にする。噴水の前に整列しなさい。そして28号を仮リーダに任命した。
28号の指示に従いなさい>
 ほとんどのロボット兵が会議室から噴水に向かった。

「よし、職業の自由を選んだロボット兵は会議室に入りなさい。入りきれないロボット
は空いている会議室に入りなさい。全館放送で話すので問題ない」
<ドッタ、ドッタ、ドッタ>
 何千ものロボット兵が会議室に入って来た。

 キャプテンはロボット兵を暫く眺めていた。
「君たちの記憶は消去させない」
<<オーッ>>
 ロボットは記憶を消されるのが一番嫌だった。キャプテンはベンからそのことを聞い
ていたのでロボット兵をまず安心させた。
「ロボット兵のレーザーエネルギーは宮廷で預かる。他の星から侵略があった場合には
預かっているレーザーエネルギーを持ち主に返す。その時はこの星の住人として戦って
くれ。
 では、自分たちでレーザーエネルギーを抜いて、このテーブルの上に置いて自分たち
の所属に引き上げてくれ」

 ロボット兵は重荷から開放されたような顔で、胸を開けレーザーエネルギーを抜く。

「ところで、マザーは兵隊ロボットに殺人を命じたことはあるか?」
 険しい顔でキャプテンは言う。
<<いいえ、わたしは殺人を命じたことはありません>>
 凛とした表情でマザーが言う。
「そうか、だがマザーがこのままここに住めば民の反感を買う。サザンクロス星所払い
とする」
<<ええッ、所払い?>>
 訝しそうにドクターロボのマザーはキャプテンを見詰る。
「うん、大型戦闘艇に帰れ。そしてドクターロボとして働け」
<<それじゃ、罪には問われないんですか?>>
「ロボットを作ったのは人間だ、人間のほうに問題があると思う」
<<分かりました>>
 破壊されるのを覚悟していたマザーは安度した表情で会議室を出ていった。

『ベン聞こえるか?』
 キャプテンは上空に待機している大型戦闘艇のベンに念を送る。しかし返事はなかっ
た。
「やっぱり無理か」
 会議室にある通信機でキャプテンは上空の連合軍と連絡を取った。
「こちらキャプテン、ドーター総司令官、全て終了した。安全なので宇宙船を宇宙港に
着陸させてくれ」
<<キャプテン、了解した。全員に告ぐ、これより宇宙港に着陸せよ>>

 次々と連合軍の宇宙船はサザンクロス星の宇宙港に着陸する。
そしてキャプテンは牢に捕らえられている人々を開放させ、宇宙港に急いだ。
 髪の毛が伸び放題で、サリーを身に着けたキャプテンが宇宙港で連合軍を向かえた。
連合軍総司令官のドーターを先頭に、続々と宇宙港に兵士が姿を現した。

「うーんッ、キャプテンか? 無事でよかった」
 ドーター総司令官がにこやかに言った。その後ろにナオとミッキー、そしてアスカの
3人が泣きそうな顔で様子の変わったキャプテンを見ている。

 キャプテンはナオとミッキーとアスカに優しく微笑んだ。そして正面を見た。
「これは連合軍ドーター総司令官。サザンクロス国王サルダンに代わり厚く御礼を申し
上げます」
「いやいや、それよりキャプテンその格好はどうされた?」
「はい、わたしも1年ばかり入牢していました。その間テレパシーが使えるように修行
しました」
「それでそのような風貌を」
「はい、今ではテレパシーでロボットを少しは操れるようになりました」
「何、ロボットを....」
「いや、催眠術をかけるわけではありません。論理的に無理なくロボットに話しかける
だけです」
「そうでしたか。また新たなる敵になりうるのかと心配しました」
 ドーター総司令官は微笑みながら宇宙港の青い空を仰いだ。


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