前陛下の椅子に座り、マザーが指揮を取っている。不快な気持ちでキャプテンは地下 牢に向かった。薄暗い通路を通りふわふわと飛んで行く。 一つ一つ牢を覗くが、陛下とオスカーの姿は見えなかった。 『ここではないのか』 引き上げようとした時、前方からロボット兵の姿が見えた。 『国王はどこにいる?』 大胆にもキャプテンはロボット兵に聞いた。 <<....奥の牢に....>> と、言ってロボット兵は不思議そうな顔をして周りを見回した。
『何この奥。そうか、2年前より牢を増やしたのか』 キャプテンはなおも奥に進む。 『うん、宮廷関係の人間が見える。あれはアントニー警務官だ。その向こうに名前は知 らないが給仕の娘さん。そうすると陛下は一番奥かな』 ふわっとキャプテンは一気に一番奥の牢の中に来た。若いサルダン国王と宮廷室長の オスカーが神妙に座っている。
『オスカー、オスカー。聞こえるか、オスカー?』 オスカーは首を左右に振る。その牢にはオスカーとサルダン国王しかいない。 「陛下、なにか御用ですか?」 サルダン国王はオスカーの顔を見る。 「いや、別に」 「そうですか、わたしの名前をお呼びになったような気がしましたが、勘違いですね」
『オスカー、大きな声を出すな盗聴されているかもしれない。わたしはキャプテンだ』 幻想でも見ているような顔で、オスカーは辺りを見回す。 『オスカー、わたしは宮廷の裏山の土牢に捉えられ1年が過ぎた。そして修行して幽体 離脱が出来るようになった。魂だけここにいる』 オスカーは大きな目を見開いて、黙って小さく頷いた。 『オスカー、ナオやミッキー、アスカはどこにいる?』 「....の時....」 キャプテンはオスカーの声が聞き辛く、オスカーに近づいた。キャプテンの魂がオス カーの体に触れた時、キャプテンは生温かい異次元の世界に閉じ込められた。 『うん、ここはどこだ?』 「やだ、わたしの体の中にキャプテンが入り込んだわ」 狼狽しながらオスカーが囁く。
「どうしたんだ、オスカー。何だかおかしいぞ?」 異変を感じてサルダン国王が言う。 「シー、陛下。盗聴されている虞があります」 目配りをしてオスカーが小さな声で言う。 「分かった、何かあったのか?」 「はい、キャプテンは1年前に捕らえられ、山の土牢に投獄されていました。その土牢 で幽体離脱を会得しました。そしてキャプテンの魂がわたしの体に入りました」 オスカーは恥ずかしそうに胸の前を押さえた。 「おおーッ、キャプテン。待ちかねたぞ」 小さな声で国王が言う。 「サルダン陛下、お久しぶりです。盗聴されているかもしれません。要点だけを言いま す。10日以内にロボット帝国を崩壊させ、サルダン国王を復元させます」 オスカーの口からオスカーの声で言う。
「その言葉を聞きたくて2年以上も耐えてきた。嬉しい」 サルダン国王は嗚咽を漏らした。
『オスカー、ナオやミッキー、アスカはどこにいる?』 「キャプテン、ロボット帝国が誕生する直前に3人とも他星へ逃がしました。その後は 分かりません」 『そうか感謝する、10日以内に必ずマザーを倒す。今日はこれで体力の限界だ、わた しは土牢に帰る。オスカーの体を借りて悪かった』 「いえ」 オスカーが小さな声で呟いた。キャプテンはオスカーの口から外へ出た。そして土牢 をイメージする。すると瞬時に土牢に舞い戻った。 『わたしは座禅を組んだままか。体に戻るとするか』 キャプテンの魂は体の中に入り込んだ。
「ああッ、やっと戻ることが出来た。これでいつでもマザーと戦える」 その日を境にキャプテンの幽体離脱は自在に扱えるようになった。しかし、人間に入 り込むことは出来たがロボットに入り込むことは出来なかった。
そのためキャプテンは幽体離脱してロボット兵に恐怖感を植えていった。 ”ロボットに命令を出すロボットは、ロボットの神シリウスに破壊される。命令に従う ロボットも同罪だ”
あれから5日が過ぎた。ロボット兵の5千人以上に恐怖感を植え付け、最高司令長官 のマザーの求心力も霞んだ。そしてロボット兵の28号はキャプテンの僕となった。 <<キャプテン、お呼びですか?>> 「うん、28号。最高司令長官のマザーに会いに行く。土牢を開けてくれ」 <<はい、キャプテン>> 髪の毛がぼさぼさでサリーを体に巻きつけたキャプテンは1年ぶりに牢の外に出た。 ロボット兵の28号を先頭にキャプテンが続く。
宮廷に入りキャプテンは念じた。 『ロボット兵、わたしがシリウスだ、最高司令長官のマザーを裁きに来た。道をあけわ たしの後に続け』 宮廷に入りキャプテンはさらに念じた。キャプテンが進むにつれ、ロボット兵たちは キャプテンの後にぞろぞろと続いた。 『ロボット兵たちよ、わたしがシリウスだ。マザーを裁きに来た、わたしの後に続け』 力強いテレパシーを何度も念じながらゆっくりとキャプテンは進む。そしてキャプテ ンの後ろには数千のロボット兵が連なった。 『ロボット兵を操りロボット帝国に君臨するドクターロボのマザーを裁け』 <<マザーを裁け、マザーを裁け>> ロボット兵たちが一斉に口にした。
しかし、ロボット兵の一部はマザーを支持し、会議室で睨み合いになる。 『マザー、無駄な争いはよそう。二人だけで話し合いをしたい。出てこいマザー』 強いパワーでキャプテンは念じた。 暫くすると、向かい合っていたロボット兵たちが真ん中から割れ、うす汚れた白衣のマ ザーが姿を現した。 その時、全館放送が流れた。 <わたしは宇宙連合のドーター総司令官だ。サザンクロスの上空にいる。ドクターロボ ・マザー、投降しなさい> マザーは天井を見詰た。 「マザー、潮時だ、ロボット兵たちにあきらめさせろ。それはおまえの役目だ」 大きな声でサリーを巻きつけたキャプテンが言う。
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