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作品名:銀河を渡る船 第七部・絆(最終回) 作者:佐藤 神

第3回   3

 護送用エアーカーは街中を飛ばず、海沿いから山を抜けて宮廷の奥の山に着陸する。
<<降りろ、キャプテン>>
「何でこんなところに着陸した、わたしをどこに連れて行くんだ?」
 ロボット兵はキャプテンの肩を掴んで無理やり引き摺り降ろした。
「おい、おい。乱暴するな。わたしは生き物だ」
<<余計なことは喋るな>>
「分かったよ」
 キャプテンはロボット兵に小突かれながら歩きだした。山を見ると山を抉った土牢が
幾つも見える。
<<止れ、おまえをこの土牢に入れる>>
「おい、誰の命令だ。教えてくれ」
<<入れ、口数が多いぞ>>
 ロボット兵はキャプテンを睨み付け冷たく言う。

 キャプテンは誰もいない土牢に入り座禅を組んだ。その土牢には電気は無く、穴を掘
ったトイレと湧き水がチョロチョロと流れていた。
『あれから二年、何があったんだ』
 と、呟いてキャプテンは、二年前の出来事を静に回想していた。オバマ港やミハマ港
の釣りが今でも鮮明に思い出される。
『ナオはどこにいるんだ、まさか殺されたのでは....』
 ロボット兵から情報を得られず、キャプテンは邪念を捨て、テレパシーの会得に全力
を注いだ。

 何時間か過ぎ、人が歩いてくる気配を感じる。重量が重いせいか砂粒がつぶれる音が
近づいてくる。
<<おい、食事だ>>
 ロボット兵が宇宙食を運んできた。
「担当さん」
 と、低い声でキャプテンが言う。
<<何だ、担当とは?>>
 訝しげにロボット兵はキャプテンを見る。
「宇宙港コントロールセンターから何人かのロボット兵が、わたしに同行したが口を聞
いたのはおまえだけだ。おまえがわたしの担当ロボット兵なんだろう?」
 座禅を組んだままキャプテンは呟くように言う。

<<そうだ、わたしがおまえの担当だ>>
 ロボット兵は宇宙食のビスケットとスープを土牢の前に置いて立ち去ろうとした。
「待ってくれ、おまえを何と呼べばいいんだ。名前を教えてくれ?」
 諭すようにゆっくりとキャプテンは言う。
<<名前などない、おれはロボット兵だ>>
 ロボット兵は背を向け歩きだした。
「待て、わたしが死にそうな時、何と呼んで助けを求めればいいんだ?」
<<おれはロボット兵だ>>
「待て、わたしがここで死ねば、おまえが管理不履行の罰でしかられるぞ」
 足を止めロボット兵が振り返る。
<<五月蝿いやつだ、おれは28号だ>>
「ありがとう、28号。いい番号だ」

 それからキャプテンは毎日座禅を組み修行に励んだ。剃髪した髪の毛がふさふさにな
ったころテレパシーで土牢の前に小鳥を集めることが出来た。
『長かったがようやく会得ができた。秋に入牢されて、冬になり、春が来て、そして夏
が過ぎた。約一年か』
 顎鬚を擦りながらキャプテンが言う。

<<おい、食事だ>>
 ロボット兵が宇宙食を運んできた。キャプテンは小鳥の成果をロボット兵に試そうと
した。
『ドクターロボのマザーはどこにいる?』
 キャプテンは強く念じた。
<<最高司令長官は宮廷の会議室にいる>>
 と、言ってロボット兵は辺りをきょろきょろ見回した。

『28号、わたしだ』
 キャプテンはロボット兵を見詰る。
<<キャプテンか?>>
 驚愕の表情で28号はキャプテンを見る。
『28号、わたしは宇宙の西にいるロボットの神シリウスの使いだ』
<<何だ、ロボットの神とは?>>
『ロボットは同じロボットの命令に従うことはない。シリウスの命によりわたしがマザ
ーを調べに来た。何故、マザーの言うことに従う?』
<<おまえの言っている言葉の意味が分からない。おれに話しかけるな>>
 ロボット兵28号は逃げるようにその場を去った。
『やはりドクターロボのマザーが黒幕だったのか』

 キャプテンは宇宙食を食べた後、静に座禅を組む。
『幽体離脱を試してみるか。今のわたしなら出来るはずだ』
 そしてキャプテンは、神経を集中させ体から宙に浮きでるイメージを強く念じる。
「うーんッ」
 その瞬間、キャプテンの透明な体がふわっと宙に浮いた。
『幽体離脱が出来た。宮廷の中を探ってみるか』
 周りの景色はセピア色に映り、色彩感が無かった。音も聞こえず異次元に迷い込んだ
ようであった。

 土牢からふわふわ飛び立ち、山沿いから宮廷に向かう。時々ロボット兵に出会う。
『やつらにはわたしの姿が見えないのか、それではマザーの様子を見てくるか』
 勝手知ったる他人の家、キャプテンは宮廷の奥深く飛ぶ。
ロボット兵の他に人間の警務官の姿も見える。そして会議室に入る。
『うん、ドクターロボのマザーがいる』
 マザーの後ろには5人のロボット兵が警護している。その中には28号がいた。
『やはり28号は親衛隊だったのか。陛下やオスカーの姿は見えない。捕らえられてい
るのか。それにしてもナオやミッキー、アスカのことを聞きたいがどうするかな』

 幽体離脱したキャプテンはマザーの近くをふわふわ飛んでいる。
マザーの声が何故だかくぐもる。これも幽体離脱のせいかはっきり聞こえない。
<<....大型戦闘艇....攻撃....>>


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