護送用エアーカーは街中を飛ばず、海沿いから山を抜けて宮廷の奥の山に着陸する。 <<降りろ、キャプテン>> 「何でこんなところに着陸した、わたしをどこに連れて行くんだ?」 ロボット兵はキャプテンの肩を掴んで無理やり引き摺り降ろした。 「おい、おい。乱暴するな。わたしは生き物だ」 <<余計なことは喋るな>> 「分かったよ」 キャプテンはロボット兵に小突かれながら歩きだした。山を見ると山を抉った土牢が 幾つも見える。 <<止れ、おまえをこの土牢に入れる>> 「おい、誰の命令だ。教えてくれ」 <<入れ、口数が多いぞ>> ロボット兵はキャプテンを睨み付け冷たく言う。
キャプテンは誰もいない土牢に入り座禅を組んだ。その土牢には電気は無く、穴を掘 ったトイレと湧き水がチョロチョロと流れていた。 『あれから二年、何があったんだ』 と、呟いてキャプテンは、二年前の出来事を静に回想していた。オバマ港やミハマ港 の釣りが今でも鮮明に思い出される。 『ナオはどこにいるんだ、まさか殺されたのでは....』 ロボット兵から情報を得られず、キャプテンは邪念を捨て、テレパシーの会得に全力 を注いだ。
何時間か過ぎ、人が歩いてくる気配を感じる。重量が重いせいか砂粒がつぶれる音が 近づいてくる。 <<おい、食事だ>> ロボット兵が宇宙食を運んできた。 「担当さん」 と、低い声でキャプテンが言う。 <<何だ、担当とは?>> 訝しげにロボット兵はキャプテンを見る。 「宇宙港コントロールセンターから何人かのロボット兵が、わたしに同行したが口を聞 いたのはおまえだけだ。おまえがわたしの担当ロボット兵なんだろう?」 座禅を組んだままキャプテンは呟くように言う。
<<そうだ、わたしがおまえの担当だ>> ロボット兵は宇宙食のビスケットとスープを土牢の前に置いて立ち去ろうとした。 「待ってくれ、おまえを何と呼べばいいんだ。名前を教えてくれ?」 諭すようにゆっくりとキャプテンは言う。 <<名前などない、おれはロボット兵だ>> ロボット兵は背を向け歩きだした。 「待て、わたしが死にそうな時、何と呼んで助けを求めればいいんだ?」 <<おれはロボット兵だ>> 「待て、わたしがここで死ねば、おまえが管理不履行の罰でしかられるぞ」 足を止めロボット兵が振り返る。 <<五月蝿いやつだ、おれは28号だ>> 「ありがとう、28号。いい番号だ」
それからキャプテンは毎日座禅を組み修行に励んだ。剃髪した髪の毛がふさふさにな ったころテレパシーで土牢の前に小鳥を集めることが出来た。 『長かったがようやく会得ができた。秋に入牢されて、冬になり、春が来て、そして夏 が過ぎた。約一年か』 顎鬚を擦りながらキャプテンが言う。
<<おい、食事だ>> ロボット兵が宇宙食を運んできた。キャプテンは小鳥の成果をロボット兵に試そうと した。 『ドクターロボのマザーはどこにいる?』 キャプテンは強く念じた。 <<最高司令長官は宮廷の会議室にいる>> と、言ってロボット兵は辺りをきょろきょろ見回した。
『28号、わたしだ』 キャプテンはロボット兵を見詰る。 <<キャプテンか?>> 驚愕の表情で28号はキャプテンを見る。 『28号、わたしは宇宙の西にいるロボットの神シリウスの使いだ』 <<何だ、ロボットの神とは?>> 『ロボットは同じロボットの命令に従うことはない。シリウスの命によりわたしがマザ ーを調べに来た。何故、マザーの言うことに従う?』 <<おまえの言っている言葉の意味が分からない。おれに話しかけるな>> ロボット兵28号は逃げるようにその場を去った。 『やはりドクターロボのマザーが黒幕だったのか』
キャプテンは宇宙食を食べた後、静に座禅を組む。 『幽体離脱を試してみるか。今のわたしなら出来るはずだ』 そしてキャプテンは、神経を集中させ体から宙に浮きでるイメージを強く念じる。 「うーんッ」 その瞬間、キャプテンの透明な体がふわっと宙に浮いた。 『幽体離脱が出来た。宮廷の中を探ってみるか』 周りの景色はセピア色に映り、色彩感が無かった。音も聞こえず異次元に迷い込んだ ようであった。
土牢からふわふわ飛び立ち、山沿いから宮廷に向かう。時々ロボット兵に出会う。 『やつらにはわたしの姿が見えないのか、それではマザーの様子を見てくるか』 勝手知ったる他人の家、キャプテンは宮廷の奥深く飛ぶ。 ロボット兵の他に人間の警務官の姿も見える。そして会議室に入る。 『うん、ドクターロボのマザーがいる』 マザーの後ろには5人のロボット兵が警護している。その中には28号がいた。 『やはり28号は親衛隊だったのか。陛下やオスカーの姿は見えない。捕らえられてい るのか。それにしてもナオやミッキー、アスカのことを聞きたいがどうするかな』
幽体離脱したキャプテンはマザーの近くをふわふわ飛んでいる。 マザーの声が何故だかくぐもる。これも幽体離脱のせいかはっきり聞こえない。 <<....大型戦闘艇....攻撃....>>
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