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作品名:銀河を渡る船 第七部・絆(最終回) 作者:佐藤 神

第2回   2

 その翌日からキャプテンは、医務室の脳治療器で刺激を与えられた。
<<キャプテン、どうですか、どこか痛いですか?>>
 ベンが心配そうにキャプテンの顔を覗く。
「いや、脳の血行が良くなったのか頭がはっきりしている。気分爽快だ」
 久しぶりにキャプテンが微笑んだ。
<<それは好かった。では神経を集中させわたしに泣くように念じてください>>
「うん、分かった。やってみよう」
 キャプテンは床の隅で座禅を組み息を整える。まるで座禅僧のように。

 そのまま一時間近くが過ぎた。
「ベン、何か感じるか?」
<<いえ、何も感じません>>
「そんな簡単にできるわけないか」
 キャプテンは目を瞑り、一日中飽きることなく座禅を組んでいた。

 翌日、キャプテンは剃刀で剃髪した。青々とした頭に長い布を体に巻きつけたサリー
が何となく東南アジアの出家僧を感じさせた。
<<キャプテン、お似合いですね。宗教者みたいです>>
 ロボットのベンはキャプテンの並々ならぬ決意を感じていた。
<<では脳に刺激を与えましょう>>
「うーん、頼む。早く助けに行かないと」
 キャプテンはナオ、アスカ、ミッキーの身の安否に心を痛めていた。
<<キャプテン、よろしければ刺激を限度まで強めましょうか?>>
「うん、そうしてくれ」

 そして、6回目の刺激治療が終了した。
<<キャプテン、これで脳の刺激は終了しました。危険が伴いますのでこれ以上は出来
ません。あとはキャプテン自身の努力次第です。しかも、必ずテレパシーが使えるよう
になるとは限りません>>
「うん、承知している。ベン感じるか?」
<<えッ、何がですか?>>
「いや、何でもない。明日の朝、サザンクロス宇宙港に着陸しよう」
<<キャプテン、了解しました。それとロボット兵には逆らわないでください。逆らわ
なければ殺されることはありません>>
「うん、投獄されるだろうな。マザーが会ってくれればいいのだが」
<<キャプテン、マザーは会わないでしょう。賢いロボットですから>>
「しかし、会わないと手の内が読めない」
 座禅を組んでキャプテンは静に言う。
<<キャプテンのテレパシーが頼りです>>
「うん....」
 それからキャプテンは一心不乱に何かを念じていた。

 その翌日。
「ベン、これから言うメッセージをサザンクロス星に送ってくれ」
<<はい、キャプテン>>
「わたしは宇宙平和維持軍のキャプテン事務総長だ。ドクターロボのマザー、話し合い
に来た。応答してくれ」
 キャプテンはベンを見て小さく頷いた。
<<キャプテン、了解しました。応答があるまで繰り返し発信します>>
 キャプテンは座禅を組んで煩悶している。

 発信してから一時間が過ぎようとしていた。
「ベン、サザンクロス宇宙港に着陸してくれ。わたしはマザーに会いに行く」
<<キャプテン、了解しました>>
 一瞬躊躇してベンが言う。
 マザーから返事が無いまま、キャプテンは宇宙港に向かった。
<<キャプテン、最終兵器の使用はわたしの判断でいいのですか?>>
「うん、全てはベンに任す」
 その時、妨害電波を掻い潜ったせいかスクリーンに水と雲に覆われたサザンクロスの
美しい島が見えた。
<<サザンクロス宇宙港に着陸します>>
 ベンの大きな声が響く、瞬く間に島が大きく拡がり白い宇宙港が見の前に迫った。

 大型戦闘艇が宇宙港に着陸する。
<<キャプテン、宇宙港に着陸完了しました。ロボット兵が100人近く周りに潜んで
います>>
「うん、ベン。わたしはマザーに会いに行く。そして、わたしはテレパシーを完成させ
る。ベン、最終兵器をよろしく頼む」
<<了解しました。最終兵器の番人として全力を尽くします>>

 剃髪の頭を晒し体にサリーを巻いて、キャプテンはゆっくりと大型戦闘艇を降りた。
キャプテンは掌を合わせ、マザーが出てくるように強く念じた。しかしいくら念じても
マザーは出てこなかった。
 キャプテンはゆっくりと宇宙港のコントロールセンターへ向かった。
そしてコントロールセンターに入ろうとした時、ロボット兵に囲まれた。

<<おまえがキャプテンか?>>
 不気味なロボット兵が胡散臭そうにキャプテンの顔を覗く。
「そうだ、ドクターロボのマザーに会いたい」
<<キャプテンを連行する、逆らえば殺す>>
 キャプテンはロボット兵に囲まれてコントロールセンターの横に停めてあった護送用
エアーカーに乗せられた。
「マザーに会いたい、連絡を頼む」
<<五月蝿い、静に乗っていろ。騒ぐと殺すぞ>>
 命令に忠実なロボット兵はキャプテンに指先を向けた。その指先の先端にレーザーを
放出する溝が見える。


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