その翌日からキャプテンは、医務室の脳治療器で刺激を与えられた。 <<キャプテン、どうですか、どこか痛いですか?>> ベンが心配そうにキャプテンの顔を覗く。 「いや、脳の血行が良くなったのか頭がはっきりしている。気分爽快だ」 久しぶりにキャプテンが微笑んだ。 <<それは好かった。では神経を集中させわたしに泣くように念じてください>> 「うん、分かった。やってみよう」 キャプテンは床の隅で座禅を組み息を整える。まるで座禅僧のように。
そのまま一時間近くが過ぎた。 「ベン、何か感じるか?」 <<いえ、何も感じません>> 「そんな簡単にできるわけないか」 キャプテンは目を瞑り、一日中飽きることなく座禅を組んでいた。
翌日、キャプテンは剃刀で剃髪した。青々とした頭に長い布を体に巻きつけたサリー が何となく東南アジアの出家僧を感じさせた。 <<キャプテン、お似合いですね。宗教者みたいです>> ロボットのベンはキャプテンの並々ならぬ決意を感じていた。 <<では脳に刺激を与えましょう>> 「うーん、頼む。早く助けに行かないと」 キャプテンはナオ、アスカ、ミッキーの身の安否に心を痛めていた。 <<キャプテン、よろしければ刺激を限度まで強めましょうか?>> 「うん、そうしてくれ」
そして、6回目の刺激治療が終了した。 <<キャプテン、これで脳の刺激は終了しました。危険が伴いますのでこれ以上は出来 ません。あとはキャプテン自身の努力次第です。しかも、必ずテレパシーが使えるよう になるとは限りません>> 「うん、承知している。ベン感じるか?」 <<えッ、何がですか?>> 「いや、何でもない。明日の朝、サザンクロス宇宙港に着陸しよう」 <<キャプテン、了解しました。それとロボット兵には逆らわないでください。逆らわ なければ殺されることはありません>> 「うん、投獄されるだろうな。マザーが会ってくれればいいのだが」 <<キャプテン、マザーは会わないでしょう。賢いロボットですから>> 「しかし、会わないと手の内が読めない」 座禅を組んでキャプテンは静に言う。 <<キャプテンのテレパシーが頼りです>> 「うん....」 それからキャプテンは一心不乱に何かを念じていた。
その翌日。 「ベン、これから言うメッセージをサザンクロス星に送ってくれ」 <<はい、キャプテン>> 「わたしは宇宙平和維持軍のキャプテン事務総長だ。ドクターロボのマザー、話し合い に来た。応答してくれ」 キャプテンはベンを見て小さく頷いた。 <<キャプテン、了解しました。応答があるまで繰り返し発信します>> キャプテンは座禅を組んで煩悶している。
発信してから一時間が過ぎようとしていた。 「ベン、サザンクロス宇宙港に着陸してくれ。わたしはマザーに会いに行く」 <<キャプテン、了解しました>> 一瞬躊躇してベンが言う。 マザーから返事が無いまま、キャプテンは宇宙港に向かった。 <<キャプテン、最終兵器の使用はわたしの判断でいいのですか?>> 「うん、全てはベンに任す」 その時、妨害電波を掻い潜ったせいかスクリーンに水と雲に覆われたサザンクロスの 美しい島が見えた。 <<サザンクロス宇宙港に着陸します>> ベンの大きな声が響く、瞬く間に島が大きく拡がり白い宇宙港が見の前に迫った。
大型戦闘艇が宇宙港に着陸する。 <<キャプテン、宇宙港に着陸完了しました。ロボット兵が100人近く周りに潜んで います>> 「うん、ベン。わたしはマザーに会いに行く。そして、わたしはテレパシーを完成させ る。ベン、最終兵器をよろしく頼む」 <<了解しました。最終兵器の番人として全力を尽くします>>
剃髪の頭を晒し体にサリーを巻いて、キャプテンはゆっくりと大型戦闘艇を降りた。 キャプテンは掌を合わせ、マザーが出てくるように強く念じた。しかしいくら念じても マザーは出てこなかった。 キャプテンはゆっくりと宇宙港のコントロールセンターへ向かった。 そしてコントロールセンターに入ろうとした時、ロボット兵に囲まれた。
<<おまえがキャプテンか?>> 不気味なロボット兵が胡散臭そうにキャプテンの顔を覗く。 「そうだ、ドクターロボのマザーに会いたい」 <<キャプテンを連行する、逆らえば殺す>> キャプテンはロボット兵に囲まれてコントロールセンターの横に停めてあった護送用 エアーカーに乗せられた。 「マザーに会いたい、連絡を頼む」 <<五月蝿い、静に乗っていろ。騒ぐと殺すぞ>> 命令に忠実なロボット兵はキャプテンに指先を向けた。その指先の先端にレーザーを 放出する溝が見える。
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