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作品名:銀河を渡る船 第七部・絆(最終回) 作者:佐藤 神

第1回   1

<<宇宙恒星日誌211201002。
 元銀河系太陽系第三惑星地球人のキャプテンは、白衣を着たロボット帝国のリーダが
誕生したと噂を聞き、宇宙戦争を和解させ一路サザンクロス星に急いだ>>

 眉を寄せキャプテンは長い間煩悶していた。
「ベン、過去にロボット帝国が存在したことはあるのか?」
<<キャプテン、300年前に一度だけあります。10年間ロボット帝国が存続しまし
たがロボット同士のいざこざで、自滅しました>>
 スクリーンの星を見つめながらキャプテンが頷いた。
「ロボット同士で主導権争いか?」
<<キャプテン、その通りです>>
「ロボットは人間に従順に従うものと思っていたがそうではないのか?」
<<キャプテン、ロボットは人間に絶対服従を思考回路に植え付けられていましたが、
ここ数百年ロボット兵の出現により、ロボットが人間を殺すように手を加えられていま
す>>

「そうか、ドクターロボも同じか?」
<<はい、患者の病状により延命治療が患者を苦しめるものなら安楽死の選択はドクタ
ーロボに任せられています>>
「うん、ロボットが人間を公に殺すことが許されたのか」
 キャプテンはドクターロボのマザーが何故サザンクロス星を統治したのか、何を目指
しているのか煩悶する。
「うーん、サルダン陛下には荷が重すぎたのか?」
 首を傾げながらキャプテンは呟いた。
「サルダン陛下の相談役は宮廷室長のオスカー、オスカーの相談役はドクターロボのマ
ザー。何が悪かったのか?」

<<キャプテン、悪い情報です。宇宙市場のリチウム相場がここ一年、戦争に関わらず
下落しています>>
 ベンは首を曲げキャプテンを見る。
「そうか、サザンクロスがリチウムを安売りしているのだな」
<<キャプテン、概算で3兆クロスを荒稼ぎしています。最新型ロボット兵は通常は1
億クロスですが、戦争のため5億クロスに値上がりしています。単純に6千台の最新型
ロボット兵が買える計算です>>
「その最新型ロボット兵の能力は?」
 キャプテンは呟くように言う。
<<最新型ロボットの殺傷能力は地上戦では人間兵100人に相当します>>
「えッ、60万人の兵隊を相手にするのか」
 スクリーンを見詰たままキャプテンは黙り込んでしまった。

<<キャプテン、ロボット兵にも弱点があります>>
「うーん、弱点?」
<<はい、雨に当たるぐらいなら問題はありませんが、川や海に入れば故障します。ま
た視力は両目のカメラを通して見ているので、ペンキや泥水でカメラを塞げばセンサー
しか利きませんから動作が鈍くなります>>
「しかし、6000ものロボット兵。どうやって」
<<難しいですね。最新型ロボット兵は両手の人差し指からレーザーを放出することが
出来ます。力も人間とは比較になりません。新車のエアーカーを丸めてバスケットボー
ルにしてしまいます>>
 眉間に鶸を寄せ顔を顰めるキャプテンであった。

「どうすればいいんだ。ドクターロボのマザーじゃ脅しも効かない。最悪の場合、宇宙
平和のために最終兵器を使うか」
 残念ながらキャプテンには勝算が無かった。
<<キャプテン、最終兵器はわたし一人でも発射できます。キャプテンは自己能力のレ
ベルアップをしませんか?>>
「うーん、レベルアップ?」
<<キャプテンの能力を高めテレパシーが使えるように。しかし、誰もが出来るとは限
りませんが>>
「テレパシーか、だが短期間に会得出来るのか?」
<<無責任ですが、1ヶ月先か、1年先か、10年先か。いや一生できないかもしれま
せん。キャプテン次第です>>
「どうやるんだ?」
<<キャプテンが前に使った、医務室の脳治療器でテレパシーが使えるように脳に刺激
を与えます>>
「うーん、わたしは脳治療器など知らないが」
 訝しそうにキャプテンはベンを見詰た。

<<そうか、アスカだったのか。騙された>>
「とりあえずベンの考えを教えてくれ」
<<はい、今日はサザンクロス星の宇宙空域までワープします。ワープの刺激が強いの
で今日は治療しません。
明日から医務室の脳治療器で刺激を与え、朝、昼、晩の3回。その次の日も3回刺激を
与えます。計6回で十分です。その後はキャプテンが神経を集中させ思考能力を高めて
ください>>

「うん、分かった。しかしテレパシーが使えるようになるとどうなるのだ?」
<<ロボット兵をキャプテンが操ってください>>
「何、ロボット兵を操る?」
<<はい、ロボット兵を操るか、最終兵器をぶち込むか。キャプテン次第です。キャプ
テンが失敗したら、わたしがキャプテンの意志を引き継ぎ最終兵器を打ち込みます>>
 ロボット兵のベンの目が潤んで見えた。

「分かった、サザンクロス星の宇宙空域までワープせよ」
<<キャプテン、了解しました。ワープ30秒前>>
<<ワァンー、ワァンー、ワァンー>>
 宇宙船内にワープ走行の警告音が鳴り響く。
<<ワープ20秒前、キャプテン、椅子に座って手すりを掴んでいてください>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響く。
<<ワープ10秒前>>
 宇宙船が微かに震えてきた。
<<ワープ5秒前、3、2、1。ワープ開始>>
 ロボットのベンの甲高い声が宇宙船に響いた。その瞬間、キャプテンは気を失った。

 暫くして。
「う、うーん....」
 キャプテンは焦点が定まらない目で、目の前を見詰る。
<<キャプテン、気がつきましたか?>>
「ああ、ここは?」
<<キャプテン、サザンクロス星の宇宙空域です>>
「そうか、ベン、サザンクロスのわたしの家を見せてくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 しかしいくらたっても家は映らなかった。
<<キャプテン、駄目です妨害電波が出ています>>
「そうか、あきらめよう。しかし、どうしているのかな」
 寂しそうにキャプテンは言う。


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