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作品名:銀河を渡る船 第六部・ロボット帝国 作者:佐藤 神

第7回   7

「わたしも行きたいけど、産婦人科が忙しくて」
 ちょっと淋しそうにナオが言う。
「しょうがないよ、患者がいるんだから。わたしも遊びじゃない視察に行くんだ。ま
あ、明日もお土産を持って帰ってくるよ。釣れなかったらスーパーで買ってくる」
 苦笑しながらキャプテンが言う。
「ねえ、肉でもいいよ」
 アスカが笑いながら言う。
「それは駄目だ。漁業を応援する立場で漁港で肉を買えば不信感を買う」
 と、言ってキャプテンはアスカを見た。

 翌日、キャプテンは宇宙港で大型戦闘艇に乗る。
「ベン、宇宙の動きはどうだ?」
<<キャプテン、3箇所だった局地戦が4箇所に増えました。仕掛けたのはデスラカン
帝国の猛将ワグナーです。反デスラカン連合ライアンの親衛隊長レッドヴィーナスがワ
グナーに応戦するため参戦しました>>
 緊張した声でベンが言う。
「全面戦争になる可能性は何パーセントだ」
<<現在は63パーセントです。油断出来ない状態です。宇宙ニュースでも大きく扱っ
ています>>
「うん、それ以外の海賊、スペースマフィヤ、野蛮人の動きはあるか?」
<<いえ、ありません>>

「そうか、今日からヘッドホーンを付けよう。わたしのエアーカーは陛下に言って緊急
車両にしてもらおう。ベンから連絡があれば30分でここに到着できる」
<<キャプテン、いよいよですね>>
 ベンはの頭のランプが点灯した。
「うん、2つの組織を潰す方針で考えていてくれ」
<<はい、キャプテン>>
「だが海賊、スペースマフィヤ、野蛮人をどうするか」
 と、言いながらキャプテンは大型戦闘艇を出て行った。

 キャプテンは国王に状況を説明して、エアーカーを緊急車両に変えてもらった。
「そうか、全面戦争に近づいているのか。何れは火の手が」
 国王が眉を顰める。
「陛下、全面戦争になると海賊、スペースマフィヤ、野蛮人がこれ幸いと火事場泥棒に
豹変します」
「ああッ、昔を思い出す。野蛮人に略奪されていた」
 おぞましい過去を思い出したのか国王は、青い顔で震えだした。
「陛下、野蛮人が来たらサザンクロス星は宇宙平和維持軍に加盟したと発信してくださ
い。必ずしや退却いたします」
 諭すように大きな声でキャプテンは言う。
「うん、キャプテンその言葉忘れるな」
 オスカーが陛下を気遣い、キャプテンに目で帰るように示唆する。

 キャプテンは釣り道具を緊急車両エアーカーに移し変え、ミハマ港に向かった。
「やはり陛下は野蛮人に略奪されてたことが、トラウマになっていたのか」
 呟きながら、キャプテンは秋の青空を仰ぐ。
<<キャプテン、陛下に過去の野蛮人の略奪の話をしたのは拙かったですね>>
「ああッ、別人のように怯えてた」
 キャプテンはヘッドホーンで大型戦闘艇にいるベンと話している。
「ベン、その後ワグナーとレッドヴィーナスはどうしている?」
<<はい、戦闘機の戦いだけで、まだ大型戦闘艇の戦いはありません。様子を見ていま
す>>
「そうか、様子見か。睨み合ったらきっかけが無くなる。長期戦になるな」
<<キャプテン、戦局が変化したら連絡します>>
「うん、頼む」

 暫く飛ぶと海が見えてきた。街に近いせいかショッピングモールが見える。
「ここは結構開けているな。立地条件がいいせいか昨日のオバマ港より賑やかだ」
 ミハマ港の上空は海鳥が飛んでいた。いかにも魚がいそうである。前日、子どものア
スカにインターネットでミハマ港の釣果情報を調べてもらったら、時期外れのヤリイカ
が入れ食いだと載っていた。時期外れといっても、残暑が続いたせいであろう。
「夕食はイカ焼きにするかな、それともイカ刺しかな」
 楽しそうにキャプテンは呟きながらミハマ港を旋回して、駐車場に着陸する。
「あれ、釣具店はないのかな」
 とりあえずキャプテンはショッピングモールに入る。入口の近くに釣具店があった。

 ヘッドホーンを付けていたので、言語変換を気にせず店員に話しかける。
「えッ、イカ釣りですか。釣具店のスタッフが急病で休んだもので、わたしはよく分か
らないんですよ。わたしは普段、生花店のスタッフなもので」
 その男は好きなものを黙って買っていけと言う顔で言う。
「じゃ、この棚を捜すかな」
 キャプテンはイカの仕掛けを捜した。しかし、キャプテンはイカの仕掛けを見たこと
がなくそれらしいものを捜す。
「これでいいや、これください」
 キャプテンが手にした物は、ハリスの先に擬似餌が付いてその擬似餌の後ろに針がつ
いたものだった。
「お客さん、600クロスです」
 キャプテンは支払いを済ませ、ハサミを借りて昨日の仕掛けを道糸から切り離し、買
ったばかりの仕掛けをつける。

 勇んでキャプテンは防波堤から釣竿を投げる。青い空に白い雲、沖の彼方では漁船が
波間に浮かんでいた。のんびりした漁村の風景である。
「確か、釣竿をゆっくり上げたり下げたりさせると、アスカが言っていたな」
 キャプテンは釣竿をゆっくり上げたり下げたりさせた。しかし、いくらやっても当た
りはなく遠くで海鳥が奇声を上げている。
 汗を拭きながらクーラーボックスを開けて、ドライアイスで冷えたボトルの水をキャ
プテンは美味そうに飲む。
「場所を変えてみるか」
 ミハマ港の防波堤の端に移動して釣竿を投げる。

 暫くは当たりがこなかったが青空の白い雲が形を変えた時、初めての当たりらしきも
のがきた。しかし竿を上げてもイカは付いていない。
 だが3度目の当たりの時。竿を上げるとイカが擬似餌に僻みついていた。
「うーん、重い。何だか雑巾みたいだな」
 慎重にキャプテンはタモアミでイカを掬い上げる。大きなヤリイカであった。だがそ
の日の釣果はそのヤリイカの一杯だけであった。


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