<<こちら会議船の宇宙港です>> 「わたしはサザンクロス星のキャプテンです。宇宙平和維持軍の事務総長でもあり召喚 状を受取った」 <<はい、了解しました。あなたの番号はメーンフロアーの851番です。操縦を自動 操縦にして下さい。こちらで誘導着陸格納します。格納が終わったら、エレベーターで メーンフロアーの25階で降りて、851番の椅子に座ってください。1時間12分後 に会議が始まります。不明な点は案内ロボットにお聞きください>> 「了解した」 と、言ってキャプテンはベンを見る。 <<キャプテン、自動操縦に切り換えます>>
そしてキャプテンとドクターロボのマザーはメーンフロアーに立った。 上に25万人、下に25万人がいる。味わったことの無い人の波に溺れそうであった。 <<あッ>> と、マザーは言って白衣を押さえた。透き通ったフロアーのため下のフロアーの客が マザーの白衣を下から覗いていた。 案内ロボットがスパッツを持って来る、マザーはそれを恥ずかしそうに穿いた。
「ありがとう、わたしの席は851番だ。どの辺だ?」 余りにも広い会場なのでキャプテンは面食らった。 <<ご案内します、こちらへどうぞ>> 案内ロボットに付いていくと今までの宇宙人とは違い個性の強い顔つきの宇宙人があ ちらこちらにいる。表面に見える大きなステージに椅子が30個近く並んでいる。 フロアーの透明な天井に大きなスクリーンが何台も設置されている。スクリーンには そのステージの椅子が映し出されていた。 <<こちらの椅子が851番です、補助椅子もあります。言語変換機もお使いできま す。どうぞごゆっくり>> 「ありがとう、銀河系太陽系第三惑星地球の日本語も変換出来ますか?」 <<えーッ、ぎんが?>> と、言って美しい案内ロボットの眉が曇った。 「いや、いい、ありがとう」 右手の肘を曲げ左右に手を振り、キャプテンが言う。
キャプテンとマザーは椅子に座る。キャプテンは座って気がついたが微かに異臭が漂 っている。ドブの臭いが鼻をついた。 さりげなくキャプテンは周りを探る。顔に多少の違いがあるものの国賓級の御歴々方 であった。 「なあ、ねえちゃん?」 その時、擦れた声が聞こえた。キャプテンが横を見るとマザーの隣に座っている男 が、マザーに小声で何かを言っている。 「おい、わたしの連れに何かようか?」 声を荒げキャプテンが言う。周りの客も一斉に見詰た。 「おまえには関係ない、俺はこの女と話しているんだ。引っ込んでいろ」 その男の顔にはコブより大きな角が眉間にあり、頬にも体毛が生えている。その目つ きが獣のように鋭かった。
「おまえも召喚状を受取ったのか?」 と、言ってキャプテンはその男を睨んだ。 「そうだ、おれはシモン国王123世だ。ライアン事務総長に呼ばれて来てみたら、こ んな席に座らせやがって酒でも飲まなくちゃやってられない」 男はポケットから小瓶を取り出し、キャップを回し外した。その途端、あの臭いが鼻 をつく。 「シモン、何を飲んでいる。この臭いは迷惑だ」 「ふーん、そうか。俺の国の酒だ。魚を発酵させて酒につけたものだ」 その時、案内ロボットが来た。 「お客様、あちらでお話を」 と、言うとシモン国王の襟首を掴み引きずり出す、客席から安堵の声が沸く。
「召喚状を受けたのは、何千人といるのか1人1人紹介するどころじゃないな」 と、呟いてキャプテンは回りを見る。 <オ、オーッ> その時、会場からどよめきが起こった。 入口から派手な姿の赤備えの兵隊が隊列を組み入って来る。そして後ろの壁に並ぶ。 その後に青、白、黄、紫と続々と兵隊が入ってくる。反デスラカン連合の精鋭である。 そして、会場の照明が暗くなる。大きなステージに何十本というライトが当たり暗闇 に浮かび上がる。ステージが割れ儀礼服を着た男たちが現れた。
男たちは椅子に座る。 <<わたしは反デスラカン連合事務総長ライアンである。諸君、よく来てくれた>> フロアーの透明な天井の大きなスクリーンがライアンの顔を映し出す。20歳そこそ この青年であった。 「若い、こんなに若いのか。ライアン事務総長は」 呟くようにキャプテンが言う。
その時、シモン国王が帰って来た。注射でも打たれたのか真摯な態度で椅子に座る。 キャプテンはぼんやり大きなスクリーンを見ている。ライアン事務総長の挨拶が終わ り、事務方の組織概要説明が始まった。 「うッ」 またあのドブの臭いが鼻をついた。キャプテンは横のシモン国王を見た。ラッパ飲み であの酒を飲んでいた。シモン国王は酔いが回り赤い顔で何か言いたいのか、腰を上げ たり下げたりしていた。
「おい、つまらん話はどうでもいい。俺はライアン事務総長と話がしたいんだ。待たせ るんじゃない」 ついにシモン国王が怒鳴った。その途端、後ろにいた赤備えの兵隊が1人で近づいて 来た。身長180センチ以上の赤い髪の女であった。 「無礼者、おまえを拘束する。おとなしくこい」 女はシモン国王の肩を掴む。 「うるせえ、女は引っ込んでろ。俺はライアンに用があるんだ」 と、言ってシモン国王が立ち上がる。シモン国王の身長は150センチしかなく、頭 一つ以上身長差がある。だがシモン国王はまあるく、ゴムマリみたい体型である。
女は腰のレーザー銃を構える。 「わたしは親衛隊長のレッドヴィーナスだ。おまえを逮捕する。逆らえば撃ち殺す」 レッドヴィーナスは目が大きく、鼻が高く、喋ると白く綺麗な歯をしていて、筋肉質 で腕力も相当ありそうである。 銃を構えられるとシモン国王は両手を上げる。レッドヴィーナスはレーザー銃で出口 を指した。 その瞬間、シモン国王はそのゴムマリみたいな体で体当たりしてレッドヴィーナスを 吹っ飛ばす。 「フーン、たいしたことないな。カッコだけの女だ」 シモン国王は倒れたレッドヴィーナスを見てほくそ笑んだ。レッドヴィーナスは倒れ ても放さなかったレーザー銃のトリガーを引いた。 その瞬間、細い光線がシモン国王の肩を掠った。そして服が飛び散り血が流れる。 怯むことなく薄ら笑いを浮かべて、シモン国王は身構える。
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