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作品名:銀河を渡る船 第六部・ロボット帝国 作者:佐藤 神

最終回   11

 その挨拶の途中、ヘッドホンからベンの声が聞こえた。
<<キャプテン、帝国軍のバリヤーが消えました>>
 キャプテンは立ち上がる。
「帝国軍のバリヤーがとけた。襲ってくるぞ」
 怒鳴りながらキャプテンは出口を走り抜けエレベータに飛び乗った。
<<帝国軍バリヤー解除。帝国軍バリヤー解除。全機出動せよ>>
 船内放送を聞きながらキャプテンはエレベータで宇宙港に行く。他の兵隊も一歩遅れ
てキャプテンに続いたが、エレベータは大混乱である。

<<キャプテン、帝国軍主力部隊1万機が攻めてきます。5千機は分散して山の陰に隠
れています>>
「うん、主砲のレーザースペアーは貰ったか?」
<<5個もらいました>>
「そいつは景気がいいなあ。それじゃ帝国軍1万機の中に突っこめ」
<<了解>>
 大型戦闘艇は円柱型宇宙船を飛び出すと反転しながら急降下する。そして帝国軍1万
機のなかに全門レーザーを連射しながら突っこんで行く。
 帝国軍主力部隊が固まっていた分、その被害が大きかった。地上から帝国軍の大型戦
闘艇2艘が応援に向かう。だが帝国軍主力部隊の旗機が破壊され統制が取れず、前線に
いた帝国軍の戦闘機が連合軍の餌食になった。

「もういい、連合軍、退却せよ。連合軍、退却せよ。大型戦闘艇2艘が襲ってくる。死
にたくなければ退却しろ」
 キャプテンの声が上空に響く、それを合図に連合軍が撤退する。それを見て帝国軍も
撤退した。暫くすると、帝国軍のバリヤーが張られた。

 キャプテンはこのまま戦えば、短期で宇宙戦争が終焉すると思った。
だが本格的な戦いは初日の1日だけである。
 帝国軍のバリヤーが解除されると帝国軍の戦闘機が急上昇して、上空の連合軍を襲
う。そして連合軍の戦闘機に攻められると直ぐ逃げ帰りバリヤーを張る。その繰り返し
である。その時の被害も両軍合わせて30機足らずである。

 そして1年が過ぎ、両軍の戦闘機は半減する。帝国軍の戦闘機は1万機を割る。そし
て連合軍は7千機になった。それでも両軍とも物資が豊富にあり戦いは終わりそうに無
い。

 2年目が過ぎようとしていた。兵士の集中力不足でつまらない事故が多発している。
キャプテンは久しぶりに連合軍に呼ばれ、円柱型宇宙船に顔を出した。会議室は兵士の
休息場に代わっていた。アルコール依存症、注射を打つ者、同性同士抱きあう者、目が
当てられない状況であった。だがそこで気になる言葉がキャプテンの耳に入った。

 その瞬間、キャプテンはパニック状態に陥った。それはこの宇宙戦争よりキャプテン
には大切なことだった。何とかしてサザンクロス星に帰りたい。焦る気持ちを抑えてキ
ャプテンは小会議室に入る。

「キャプテン、よく来てくれた。じゃ、会議を始めようか」
 キャプテンの顔見て微笑みながらライアン事務総長が言う。2年間の戦争のせいかラ
イアン事務総長の目の下が黒くくすんでいる。部屋の中には軍司令官が30人近くいた
が精彩がない。
「待ってくれ、ライアン事務総長。会議室の状態をご存知ですか?」
 キャプテンは司令官たちを見回し大きな声で言う。
「うん、デスラカン帝国の上空で2年間も足止めされ、兵士の士気が下がっている」
 肩を落としライアン事務総長が静かに言う。

「ライアン事務総長、戦闘機も4千機を大きく割り、大型戦闘艇も2艘失いました。
兵士はいつ死ぬか分からず恐怖に怯えています。戦力もこれ以上減らせばどうなるかお
分かりでしょう。海賊、スペースマフィヤ、野蛮人が狙っています。武力で抑えること
ができなくなります」
 虚ろな目でライアン事務総長が小さく頷く。
「わたしは宇宙平和維持軍の事務総長として、ライアン事務総長に和解を勧告する」

 一瞬、小会議室がどよめいた。ライアン事務総長は天上を見詰る。
「異議のあるものは挙手せよ」
 誰も手を上げなかった。
「ライアン事務総長、和解に同意するか?」
 恫喝するようにキャプテンは言う。
「うん、この戦いが始まる30年前の星境に戻せば連合軍に不満は無い」
 小会議室にいる司令官たちも頷いている。
「じゃ、これからデスラカン帝国の和解交渉に行ってくる。発砲停止令を出してくれ」
「分かった。各指令官は和解交渉のため発砲停止を伝えろ」

 キャプテンは小走りに部屋を出て、ベンの待つ大型戦闘艇に急いだ。そして円柱型宇
宙船を飛び出す。
「ベン、これから言うメッセージをデスラカン帝国に送ってくれ」
<<はい、キャプテン>>
「わたしは宇宙平和維持軍のキャプテン事務総長だ。デスラカン国王に和解勧告に来
た。これ以上戦えばお互いに崩壊する。和解条件はこの戦いが始まる30年前の星境に
戻すことだ。わたしは和解を勧める」

 キャプテンはベンを見て小さく頷いた。
<<キャプテン、了解しました。応答があるまで繰り返し発信します>>
 キャプテンは首を捻り煩悶している。
<<どうしたんですか、キャプテン。突然和解とは?>>
 納得のいかない顔でベンが言う。
「うん、連合軍の兵士がロボット帝国が誕生したと話していた。リーダは白衣を着てい
ると」
<<まさか>>
 と、言ってロボットのベンは言葉を失う。

 そしてデスラカン国王はキャプテンの和解条件を呑んだ。連合軍も撤退してキャプテ
ンは無情な運命に翻弄されながらも愛するナオ、ミッキー、そしてアスカのいるサザン
クロス星へ急いだ。


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