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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第9回   9

「こちらキャプテン、地上チーム。応答してくれ」
<<こちら地上チームだ。作業は全て終わった。退避距離も200メートルさげた>>
「分かった、これより破壊する」
<<了解>>
「ベン、破壊せよ」
<<キャプテン、了解しました>>
 次の瞬間、山の一部が浮いた。亀裂から閃光が上空に迸り、轟音が轟き山が滑るよう
に崩壊する。その途端、砂煙であたりは夕闇のような暗さになり、崩壊した山を暗さが
包んだ。そして忘れたように岩が上空から降ってくる。

「こちらキャプテン、地上チーム、怪我はないか?」
<<こちら地上チーム、大丈夫だ。これより確認する>>
「待ってくれ、宇宙船からデータを取って直ぐに知らせる。それから確認をしてくれ」
<<こちら地上チーム、了解した>>
「ベン、うまくいったみたいだな?」
<<キャプテン、成功です。予定通り崩壊しました。リチウムも無疵です>>
「うーん、そうか、陛下とメディアに成功を伝えろ」
<<了解>>
 キャプテンはベンを見て小さく頷く。
「こちらキャプテン、地上チームに告ぐ。大成功だ」
<<こちら地上チーム、よかったな。これより予定の作業に入る>>
「うん、われわれは宇宙港に引き上げる。大きな岩や硬い岩があったら残して置いてく
れ、こちらのレーザー砲で粉砕する」
<<うん、その時は頼む>>

 防衛省の移動用レーザー砲が前列に備え付けられる。
砂煙で暗さが残る中、レーザー砲10台が一斉にレーザーを放出する。鈍い閃光が岩を
粉砕する。上空からも戦闘機がレーザーを放出した。
 その光景に戦慄が走り、閃光に思わず顔を背ける。
 ある程度岩が粉砕されると、その粉砕された砂塵で岩が埋もれる。そうするとバキュ
ームホースが持ち込まれ土砂を排出する。そしてまたにレーザーを放出する。
 その作業を5回繰り返すと、日が傾きあたりは夕闇に包まれた。

「今日はここまでだ、危険だから残りは明日にする。明日は6時から始める」
 地上チームの統括官が声を張り上げる。
 その一部始終はテレビで全国放送されていた。最初は不安がっていた民も予定通り作
業が進んだので安度した表情で夕食を囲むことが出来た。

「うまくいってるわね、キャプテン」
 ナオが微笑んでキャプテンの顔を見た。
「もし失敗していたら、われわれはここに居られないだろう。異星人の弱みと言うのか
な」
 しんみりした表情でキャプテンが言う。
「そんなこと無いわよ、キャプテンがいなければこのサザンクロスは滅びているわ」
「うん、それも間違ってはいない」
「それより、キャプテンの目、四谷怪談のお岩さんみたいよ。どうにかならないの?」
<<ナオ、キャプテンの目の腫れは明日の夜になると治まってきます。それまで包帯を
巻きますか?>>
「そうねえ、それもいいわね。マザー、包帯を巻いて」
 キャプテンは頭の横から反対側の耳にかけて包帯が巻かれた。

<<キャプテン、包帯で圧迫されないですか?>>
 労わるようにドクターロボのマザーが言う。
「いや、大丈夫だ。どうせ片目は塞がっているんだ。我慢するよ」
<<キャプテン、オスカーから連絡が入りました。明日9時からサザンクロス国立総合
大学303講堂で、”宇宙で一番優れた種”の公開討論があるとのことです>>
「そうか、地上チームから呼び出しは無いし、大学に顔を出すか」
「ねえ、ねえ、わたしも303講堂に行こうかな」
 こどものアスカが言う。
「お菓子は出ないぞ」
「やねえ、キャプテンはアスカをいつまでも子ども扱いにして」
「そうよねえ」
 子どものアスカはナオを見て頷いた。

 翌日、大学の303講堂の教壇に顔を包帯で巻いたキャプテンが立った。
教壇には24人の有識者が座っていた。その前に2000人近い学生が鈴生りで教壇を
見詰る。
「えーッ、わたしたちは3ヶ月以上、この新種の穀物、野菜を一日一食食べています。
健康に影響は出ていません」
「そうですか、だが3ヶ月では短すぎると思う。最低でも3年は様子を見ないと」
 議長が穏やかに言う。
<<議長>>
 突然、ドクターロボのマザーが挙手する。
「なんですか、ドクター」
<<わたしがこの新種の由来を説明します、よろしいですか?>>
「どうぞ」

<<わたしの名はドクターロボのマザーです。わたしはデスラカン帝国の科学の粋を集
めて宇宙ドクターとして作られました。
 わたしが作られる以前にデスラカン帝国は、遺伝子組み換えを繰り返し最強の”宇宙
で一番優れた種”を開発しました。それを50年かけて人体実験で人体に害の無いこと
を証明しています。
 残念なことにデスラカン帝国は戦争のためにこの新種を開発しました。だが、この新
種はデスラカン帝国だけでなく宇宙全体で共有すべきだと考えます。今回ここでこの新
種が公開されれば、瞬く間に宇宙を席巻するでしょう。
 害虫に強く、渇水、暑さ、寒さにも強い、そして育つのが早い。尚且つ食べ合わせ
で、幼児、病人、アスリート、その全ての食事が作れます。勿論、病名ごとに対応でき
ます>>
 微笑みながらマザーは講堂を見回した。

「みなさん、われわれは宇宙を彷徨う者。デスラカン帝国に囚われません。いいものは
いい、悪いものは悪い。事実を伝えるだけです」
 と、キャプテンが言う。
<<キャプテン、ベンから連絡です。大岩を破壊して欲しいと要請がありました。返事
を待っています>>
 マザーがキャプテンの耳もとで囁いた。
「15分以内に破壊に行くと伝えてくれ」
<<了解>>
 キャプテンは立ち上がる。
「リチウム鉱山の地上チームから呼び出しを受けた。これで失礼する。われわれは押し
付ける気は毛頭無い。どうか冷静に判断してもらいたい」
 踵を返しキャプテンとマザーは講堂を後にした。


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