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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第8回   8

「ベン、やってくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 大型戦闘艇はゆっくりと上昇して、その巨大な戦闘艇がリチウム鉱山の周りをゆっく
りとうろつく。
<<キャプテン、反応したのは小鳥だけです>>
「うん、まずいな。小鳥でも」
<<どうしますか?>>
「こちらキャプテン、リチウム鉱山の小鳥を追い払う。そのためレーザー砲で山を威嚇
連射する」
<<こちら地上チーム、了解した。>>
「ベン、山に向かってレーザー砲で威嚇射撃だ」
<<キャプテン、了解しました。レーザー砲、岩場に向かって発射>>
 レーザーが岩場に威嚇された。むき出しになっている岩が木っ端微塵に閃光と共に消
える。その音で数百羽のトリが羽音を残し逃げて行く。
「ベン、もう一度、生命体が無いことをこれから確認してくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 大型戦闘艇がリチウム鉱山の周りをゆっくと飛ぶ。
<<キャプテン、生命体の反応はありません>>
 キャプテンは小さく頷いた。

「こちらキャプテン、確認が終わった。爆破してくれ」
<<こちら地上チーム、了解した>>
 直ぐにレーザーが撃ち込まれた。眩しい閃光が上空に迸り、耳を劈く轟音と共に山が
崩れた。砂煙であたりは夕闇のような暗さになり、硝煙の匂いが辺りを包んだ。

「こちらキャプテン、地上チーム、怪我人はいないか?」
<<こちら地上チーム、多少血を流している者はいるが死人は出てない。岩がここまで
飛来するとは思わなかった>>
「うん、落ち着いたら山の爆破の確認をしてくれ」
<<こちら地上チーム、了解した>>
「ベン、うまくいったみたいだな。うん、どうした?」
<<キャプテン、失敗です。予定通り崩壊していません>>
 その瞬間、キャプテンは首を捻る。胸中穏やかではなかった。
「うーん、そうか、陛下とメディアにこれから言うことを伝えろ。
1回目の爆破は期待通りにはいかなかった。これより2回目の爆破を強行する」
 キャプテンはベンを見て小さく頷く。
<<キャプテン、了解しました>>

 キャプテンは立ち上がり操縦室を苛立つように歩き回った。
「山が重すぎたのか?」
<<はい、それしか考えられません>>
「この戦闘艇をリチウム鉱山の真上に移動させ、データを取れ」
<<キャプテン、了解しました>>
 ベンの頭のランプが目まぐるしく点灯した。
スクリーンに一部崩壊した山が実写で拡大していく。
<<キャプテン、山の横穴は予定の66パーセント掘られています>>
「そうか、残り何メートルだ」
 スクリーンを見詰ながらキャプテンは言う。
<<キャプテン、横穴は540メートル空きました。残り240メートルです>>
「うん、もう一度、破壊するか。だが破壊しすぎるとリチウムが吹っ飛んでしまう。ベ
ン、宇宙船の使用中のエネルギーと未使用のエネルギーのスペアーを取り替えることが
出来るか?」
<<はい、取り替えたことはありませんが設計上は可能です>>
「やろう、未使用のエネルギーのスペアーでは破壊力が強すぎる。半分がちょうどいい
と思う。ベン、コンピュータで確認してくれ」
<<キャプテン、分かりました>>

 暫くして。
<<キャプテン、リチウム鉱山に大きな亀裂が6本入っています。どのくらいの圧力で
崩壊するか、データ不足で判明しません>>
「そうかやってみれば分かるだろう」

「こちらキャプテン、地上チーム。応答してくれ」
<<こちら地上チーム、調査中だ>>
「えー、残念ながら爆破は失敗した。横穴は240メートル不足し、山も予定通り崩壊
出来なかった。
 この宇宙船の使用中のエネルギーでもう一度破壊する。そのためこの宇宙船を近くに
着陸させたいのだが場所はあるか?」
<<折角だがその大きな宇宙船が着陸できる場所は無い。少し斜めになるけど山の横の
丘に着陸してくれ>>
「こちらキャプテン、その丘に8人の作業用ロボットを用意していてくれ」
<<キャプテン、了解した。50トンの大型運搬車を用意する>>
 ロボットのベンはマニュアルに沿って、使用中のレーザー砲のエネルギーを外し未使
用のエネルギーのスペアーを装着させる。
 そして大型戦闘艇は少し傾かせながらゆっくりと丘に着陸させた。暫くすると見たこ
とのない大きな大型運搬車が大型戦闘艇の前に姿を現した。
 そして取り外した使用中のエネルギーを専用の台車に載せてロボットに引き渡した。

「こちらキャプテン、地上チーム。応答してくれ」
<<こちら地上チームだ>>
「うん、エネルギーを作業用ロボットに渡した。これから崩壊させる山にレーザーを楔
代わりに打ち込む」
<<そうか、エネルギーが届いたらモグラ艇に乗せて、540メートル先まで運搬させ
る。発火はどうする?>>
「こちらキャプテン、こちらからリモート爆破させる」
<<分かった、うまくいくといいな>>
「うん、祈っててくれ」

<<キャプテン、戦闘艇をリチウム鉱山上空まで上昇させます>>
「うん、楔を打ち込め」
<<キャプテン、了解しました。レーザー砲の試射が出来て好都合です>>
 そして、リチウム鉱山の中腹に規則正しく30カ所近くレーザーが打ち込まれた。
<<キャプテン、これで崩壊する確率が99パーセントに跳ね上がりました。初めから
こうすればよかったですね>>
「そうだな、残りの1パーセントは何だ?」
<<うまく説明できませんが、山の神に見放された時、とでも言いましょうか>>
「ベン、うまい。たいしたものよ」
 うとうとしていたナオが髪を掻き揚げながら言う。ベンの頭のランプが得意そうに点
灯した。


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