「じゃ、宇宙食のビスケットはどうなるの?」 「宇宙食を食べる回数を今の半分に押さえ、魚、穀物、野菜を食べるようにする」 「ねえねえ、自給自足にするの?」 子どものアスカが言う。 「そうだ、サザンクロスはリチウムバブルの時、宇宙食のビスケットを作るのを止め て、輸入に頼った。サザンクロスで宇宙食のビスケットを作れば雇用が1000人は増 える。宇宙食の食材は自国の物を使う、それで漁業や農業の後押しが出来る」 「うまくいきそうねえ」 「今の宇宙戦争が拡大すれば、宇宙食のビスケットの売価が2,3倍に跳ね上がる。い や、生産国は輸出しなくなるだろう。サザンクロスの備蓄は3か月分しかない。早くこ の仕組みを導入しないと」 「サザンクロスの人も頭では分かっているのよ。でも一筋縄ではいかないわね」 ナオにはサザンクロス人の気質が分かっていた。
「駄目なら、日曜日に電力設備点検の理由で病院以外は停電にさせる。夏でもエアコン が使えないから少しは痛みを感じるだろう。それでも駄目なら3食の食事を2食にする 「それはやりすぎ」 子どものアスカは怒るように言う。 「明日、全てを決める。無能な閣僚たちが総辞職したから陛下と2人きりっだ。直ぐに 決まるだろう」
その夜、キャプテンは眠れずにいた。頭の中でサザンクロスの地図を描き漁港や畑を 埋め込んでいた。明け方になると全てが埋まり、サザンクロス星の反対側の大陸を宇宙 観光の目玉にしていた。 大陸に透明なコロニーを作り、恐竜都市にする。そのコロニーはヘリウムガスで空中 に浮かせた。子どもたちを乗せて、恐竜の上をふわふわ飛んでいる。子どもたちは透明 な床から憧れの恐竜を見る。学校が休みになると宇宙中から恐竜を見に観光客が押し寄 せるだろう、雑魚寝で3000人を泊めるか。 キャプテンはニヤニヤしながら眠りについた。
翌日、宮廷の会議室で国王、オスカー、キャプテン、マザーが円卓を囲み会議が始ま った。 キャプテンは昨日浮かんだ案を国王に提案した。だが二人で話していても細かいとこ ろが詰められず、現場の経験者、学生、行政、有識者のプロジェクトチームを案ごとに 作り、そこで案を検討させることにした。
「うん、キャプテン。これで案件は進むだろう。わたしもテレビ参加する。キャプテン も見守っててくれ」 「陛下、先ずはリチウム鉱山を片付けましょう。一つ一つ確実に」 「ああッ、先が見えてきた。キャプテン、その目は昨日より酷くなっているな。それで よく見えるな?」 国王は顔を顰めてキャプテンの目を見る。 「陛下、右目は昨日から見えません」 <<陛下、キャプテンの目の腫れは3日間腫れたままです。でも失明の心配はありませ ん>> ドクターロボのマザーは言う。 「そうか、会議はとりあえず終わった。この後は宇宙船で治療に専念してくれ。リチウ ム鉱山の準備が出来たらオスカーから連絡させる。マザーだけは一日一回わたしの治療 に当たってくれ」 微笑みながら国王が言う。
「陛下、仰せの通りに。でも閣僚のみなさんがいないと淋しいですね?」 「うん、誰が戻ってくるか、想像がつかない。民と共に国づくりを進めようと思い代議 員から閣僚を選んだが役に立たない」 諦め顔で国王が苦笑いする。 「陛下、二世三世議員はいるんですか?」 「ああッ、半分以上がそうだ」 「そうですか、昔、わたしが住んでいた日本では法律改正で議員の子どもは政治家にな れなかった。しかし、その子どもの子ども、つまり孫であればなれます。二世議員は親 の基板を引き継いで苦労もせず、口先だけが達者になります。ゲーム感覚で政治に参加 して詭弁で有権者を欺く、間違ってもやつらは憂国の情に駆られる事は無い」 祖国日本を失墜させた国会議員をキャプテンは嫌っていた。
「うん、わたしも彼らの行動を不審に思っていた。これからルール改正する。それで少 しは良くなるだろう。偽議員は要らない」 国王は明るく笑った。
そしてリチウム鉱山の横穴爆破の日。 「ベン、レーザー砲でエネルギーのスペアーを埋める穴を亀裂に空けてくれ」 <<キャプテン、了解しました>> 大型戦闘艇は地上すれすれに、その持て余す巨大な戦闘艇を器用にホーバリングす る。そして水平にレーザーをリチウム鉱山の横に3秒間放射した。 「こちらキャプテン、地上チーム、山に穴を開けた。10メートル以上あるか確認して くれ」 粉塵立ち込める岩場に汚れたエアーカーが降りる。そして大きな男が姿を現し出来立 ての横穴に入った。 <<こちら地上チーム、確認ができた。11メートル空いている。予定通りエネルギー のスペアーを埋め込む。どうぞ>> 「こちらキャプテン、了解した。ゆっくりやってくれ」 暫くすると、棺には大きい6メートルのエネルギーのスペアーを8人の作業用ロボ ットが担いで姿を現す。 ゆっくりゆっくりと横穴に進む。
<<キャプテン、順調ですね>> 「うん、この後のリチウム鉱山の爆破が問題だ。大きすぎても小さすぎても駄目だ」 <<キャプテン、わたしも前例が無いもので少し不安です>> 「うん、やってみりゃ分かるさ」 キャプテンはスクリーンで地上チームの作業を覗いている。 「あの白っぽいのがプラスチック爆弾か?」 <<そうです、プラスチック爆弾を導火線代わりに使います。穴に蓋をして外からプラ スチック爆弾をレーザーで爆発させます>>
<<こちら地上チーム、完了した。これよりレーザーを撃ち込む。どうぞ>> 「待ってくれ、この戦闘艇の生命探知機でリチウム鉱山の周りを調べる。退避サイレン を鳴らしてくれ。それと後、200メートルだけ人間とロボットを後ろへさげてくれ。 絶対事故を起こすなと陛下の命だ」 <<こちら地上チーム、陛下の命なら従う>> 「じゃ、リチウム鉱山に生命体が無いことをこれから確認する」 <<こちら地上チーム、了解した>>
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