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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第6回   6

「アスカ、魚を焼いたんだよ。サザンクロス人は、これから魚を食べるようになる。こ
れは国策だ」
「えーッ、宇宙食が無くなったの?」
「いや、雇用を増やすためだ。畑もやるようになる。そしてサザンクロスは食料自給率
を100パーセントにする」
「ねえ、どうして?」
「サザンクロスのリチウムが50年で枯渇する。そうすると外貨が入ってこない」
「そうなの、わたしは肉の方が好きだな」
「うん、肉でもいいんだが餌と水が大量に必要だ。それを考えると魚になる。好きだか
ら食べるんじゃない生きるために食べるんだ」
 淋しそうにキャプテンはアスカを見詰る。

 翌日、キャプテンは昨日ベンに話した雇用確保の話しを会議室で話す。閣僚たちから
当然のように反発を受けた。
「それは無茶だ、いくら漁業の仕事を作るから公務員を辞めて漁師になれとは。何のた
めの公務員だ」
 閣僚たちは生意気なキャプテンをこの時とばかりに口角沫を飛ばし、反論する。
「うん、キャプテン。公務員にとっては一生の問題だ。難しい」
 国王は中立の立場を取る。キャプテンは四面楚歌に陥ろうとしていた。
「陛下、サザンクロス星があってこその公務員です。国が無くなれば不用になります。
陛下、3ヵ月後国政選挙をやりましょう。現在58人の国会議員を半分の29人にしま
す。その翌月は州議会選挙、市町村議会選挙。全て議員を半分にしてから公務員を10
万人削減します。サザンクロスのために」

 恐い顔で閣僚たちを睨みつけながらキャプテンが言う。だが閣僚たちは選挙の票に繋
がる大量削減をさせるわけにはいかなかった。サザンクロスの政治家も日本と同じでろ
くに政治が分からないくせに票に絡むことは異常に熱心だった。

「どうだ、キャプテン。この問題は先送りと言うことで様子を見ては?」
 国王はあくまでも中立の立場を貫く。
「陛下、以前にもお話しましたが、宇宙の治安は混沌としています。ガブリエルは氷山
の一角、外星のスパイが何人紛れ込んでいるか分かりません。弱い星は淘汰されます」
「うん、だが、サザンクロスにはキャプテンが要るではないか?」
 国王はキャプテンを見詰る。
「陛下、50年後に滅びると分かっている星に命を賭けて守ることは出来ません」
「なんだと!」
 目を剥いて国王はキャプテンを凝視する。

 重く長い沈黙が会議室を覆った。
「陛下、今日はこれにて失礼します。明日もう一度陛下のお考えをお聞きします」
 と、言うとキャプテンとマザーは会議室を出て行った。

「無礼じゃないか、異星人のくせに」
 閣僚たちはぶつぶつ呟いていた。陛下は首を捻って無言で煩悶している。

 そして暫くして。
「総辞職せよ」
 国王が重い口を開いた。
「そんな、陛下」
「来月、国政選挙を行なう。議員数は半分だ。もし情熱があるのなら民に訴えてここに
帰って来い。情熱がないのならここを去れ」
 険しい顔で国王が言う。
「地元に帰るがいい、選挙運動に入れ」
 1人が立つとバラバラと立ち上がり小走りに会議室を出ていった。国王は静に会議室
を見回す。
「うん、オスカーと2人にだけになったな」
 微笑みながら国王が言う。

「はい、陛下」
 困惑した表情でオスカーは言う。
「今のことをキャプテンに話せ、そして、明日は朝から2人で会議をやるとキャプテン
に伝えてくれ。それと、民に総辞職したことと、来月の国政選挙をオスカーが発表して
くれ」
 疲れたように国王が言う。
「はい、陛下。陛下、お疲れですか?」
 国王は目を閉じてそのまま崩れた。
「陛下、陛下」
 オスカーは、携帯電話を取り出した。
「陛下が倒れたわ。医療用カプセルを用意して、わたしはエアーカーでドクターロボの
マザーを連れてくるわ」
 そして、再びマザーが宮廷に呼ばれた。キャプテンも同行しようと思ったが様子を見
ることにした。

 キャプテンは国王が復帰できなかったら、国王に代わり自分がやるしかない思ってい
る。
「うーん、雇用を増やすのが問題だ。新しい産業を考えないと」
「あら、風力発電がいいんじゃないの? この国には風車が見当たらないわ」
 ナオは気楽に言った。
「そうなんだがサザンクロスには風力発電のノウハウが無い。外星から技術指導とその
装置を購入することになるだろう。蓄積した電力が輸出できればなあ」
「この星で使えば?」
「それが宇宙ソーラーシステムがあり電力は足りているんだ。リチウムバブルの時作っ
たらしい」
「そうなの」
 キャプテンは長時間、新しい産業を煩悶していた。

「しかたがない、倉庫の非常食用の種をサザンクロスに植え付けるか。それで雇用5万
人を確保したい」
 デスラカン帝国が開発した食料を公に使用したくなかったが、キャプテンは使う覚悟
を決めた。
「あら、うちと同じジャガイモをサザンクロス人が食べるの?」
 ナオが可笑しそうに言う。
「ああ、あの種は宇宙で一番優れた種だ。デスラカン帝国が苦労して作った遺伝子操作
した種だろう。除草剤を撒いても種は枯れないし、渇水、暑さ、寒さにも強い、そして
何より育つのが早い。そのため素人のわれわれにも農家の真似事ができる」
 雇用対策に目途が立ったとキャプテンは内心安度した。
「わたしが経験者だから、指導員になろうかしら。ねえ、キャプテン?」
 微笑みながらナオがキャプテンの顔を見る。

「うん、それもいいかもしれないが、本業の農家から見ればナオは足手まといになるだ
けだぞ。この宇宙船の中には畑の天敵がいない」
「何よ、偉そうに天敵って」
 ナオにもプライドがあるのか少し目を剥いた。
「うん、種を蒔けばカラスが穿る。スズメや野良猫みたいな野性の鳥、小動物が狙って
いる。本格的な日照りになったら、ハリケーンが襲ってきたら、われわれはこのサザン
クロスの土壌や環境が分からない」
「そんなの分からないわ、わたしは宇宙船の中の農家だから」
てメディアに発表させよう。そのほうが受け入れてもらえるだろう」


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