「いいだろう、防衛省の移動用レーザー砲10台を全て使おう」 キャプテンはこの後の進言を躊躇した。国王の知らない防衛省の地下エアーポートに 格納されている戦闘機30艘のことを話すかどうか迷った。 「陛下、地上だけで山の残骸を砕くのは時間が掛かり過ぎます。戦闘機で空中からもレ ーザー砲で粉砕させ、一日も早く採掘させましょう」 と、言ってキャプテンは国王の顔を見た。 「うん、実に尤もな意見だ。だがサザンクロスには戦闘機は無いんだ」 微笑みながら国王は言う。 「陛下、リチウムバブルの時、外星から購入した30艘の戦闘機があります。この話は どこかで引き継ぐのが途切れたのでしょう」 キャプテンは国王の顔色を覗うように言う。
「何故、わたしの知らない30艘の戦闘機が、このサザンクロスに存在している」 険しい目つきで国王が大きな声で言う。知っていたのか知らないのか閣僚たちは無表 情で聞いている。 「陛下、防衛省の地下エアーポートに格納させています。山の残骸粉砕に参加させまし ょう」 「参加させるのはかまわないが、わたしが知らないと言うことはどう言うことだ」 首を捻り国王は俯いた。ただオスカーだけは話すたびに国王とキャプテンを交互に見 詰ている。キャプテンに戦闘機の話を仕掛けたのはオスカーであった。オスカーは宮廷 室長に就いた日にチャールズ防衛省事務次官から戦闘機のことを耳打ちされる。その日 からオスカーは、この話しを国王に知らせようかどうしようか心を痛めていた。 そんな時、キャプテンが現れたので、チャールズ防衛省事務次官に引き合わせキャプ テンが公に存在しない戦闘機を知るように仕掛ける。 オスカーは心の中でキャプテンが国王を怒らせないで説得させることを祈っていた。
「陛下、今は国を挙げてリチウム鉱山に風穴を通すことが肝要かと、そしてリチウム鉱 山が終われば別な産業も考えなくては、50年後にサザンクロスは滅びてしまいます。 過去を振り返る余裕はありません。陛下」 国王を恫喝するように大きな声でキャプテンが言う。 「うん、しかたがない不問にする」 閣僚たちを睨みながら国王は言う。 オスカーは心の中でキャプテンに手を合わせていた。いや、他の閣僚たちも安度した ように緊張した顔が緩んだ。
「陛下、現場から連絡がありました。3日間あれば退避できると申しています。それ と、バキュームホースで土砂を排出するのは最善の方法だと」 と、言いながらウェンディー経済財政産業大臣が上目遣いで国王を見る。 「よし、4日間やる。事故の無いように作業するように伝えろ」 「ハッ、陛下。おそれいります」 「キャプテン、山を崩壊させるのは1日でいいのか?」 「はい、陛下。1日あれば山を崩壊させレーザー砲と戦闘機で細かく砕けます」 「そうか、早くて7日後、遅くても10日後には再開できるな。ともかく事故の無い ように頼むぞ」 「はい、陛下」
そして細かい打ち合わせの後、国王はキャプテンの目が紫色に腫れているのを気遣い 早退させた。 「いろいろ大変ね、キャプテン。昨日より目が腫れてるわ。今日は特別にキャプテンの 好きなものを作ってあげるから」 ナオが厨房で優しそうに言う。 「焼き魚は出来ないか?」 サロンの青空を見ながらキャプテンが言う。 「ええッ、珍しいわね。倉庫に干物ならあるけど?」 「うん、煙は出るが焼き魚にしてくれ」 「いいけど、何か魚が食べたい理由があるの?」 「うん、リチウムが終わったら、大量の公務員を解雇する。国庫の歳入に比べて歳出が 多すぎる。そのためには大量の雇用を作らないとならない」 難しい顔をしてキャプテンが言う。 「そんなの陛下が考えればいいんじゃないの?」 ナオが頬を膨らませる。 「今の政府では無理だな、生湯に浸かりすぎて危機感が無い。陛下も空回りしている」 「そうなの、魚を探しに倉庫に行って来るわ。ベン、ちょっと来て」 <<ナオ、了解しました。干物を出すんですね?>> 「そうよ」
暫くして、厨房から魚が焼ける煙が微かに漏れてきた。その煙に誘われるようにキャ プテンが厨房に顔を出した。 ロボットのベンが神妙な顔で焦げないように魚を見張っている。 「ベン、サザンクロス人は魚を食べないのか?」 <<キャプテン、港町の人たちなら少しは食べますが、圧倒的に宇宙食のビスケットを 食べる人が多いです。手軽に簡単に食べられます。それにうまいまずいは別にして安い ですから>> 「そうか、ベン。この星の労働人口と公務員の比率は?」 <<キャプテン、総人口802万人。人間の労働人口460万人その内公務員は30万 人です>> 「うん、公務員が多すぎる。10万人以上は削減しないと国庫の歳入歳出のバランスが 取れない。そのため毎年、陛下が赤字補填している」 <<そうですね>> 「だがサザンクロスにはリチウム以外何も無い。漁業と農業をやるしかないだろう」
<<漁業ですか、わたしにはよく分かりませんが>> ロボット兵のベンには興味がない話であった。 「海辺に近い高台に家を20000軒建て、船を5000艘作る。海が内陸まで入込ん でいる内湾で魚、ワカメ、貝類を養殖する。全て国の金で賄う」 <<ですがキャプテン、この星の人はあまり働き者ではありません>> 「そうだな働き者ならこんなことにはなってない。これからは陛下に遠慮しないでおれ が荒治療してやる」 怒った顔でキャプテンが言う。話しながらもベンは魚が焦げないように見ていた。
<<ナオ、魚が焼けました>> 「はーい、ありがとう」 ナオが器に盛り付ける。 「ほら、怒ってないでキャプテン、魚が焼けたから食べましょう」 その時。 <<ナオ、ただいま帰りました>> ドクターロボのマザーが言う。 「ただいま、ねえねえ、宮廷で揉めたんだって戦闘機がどうのこうのって。学校じゃ大 騒ぎだよ」 子どものアスカが言う。 「なに、この臭い?」 興味深そうに鼻をクンクンさせアスカは歩き回る。
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