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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第4回   4
「でも、アスカ、監視塔を破壊すれば人が死ぬわ。殺すのはまずい、わたしたちがお尋
ね者になる。それよりベンが盗聴した会話をオスカーに聞かせ、陛下に報せた方がいい
んじゃないの?」
<<それが無難ですね。早くしたほうがいいです。ベン、オスカーに連絡を>>
 マザーが凛とした表情で言う。
<<連絡します>>
 ベンが早口で言う。

 そのころキャプテンは異星人用の留置所に拘留されていた。
キャプテンが大部屋に入ると顔見知りがいる。以前、テーマパークでマザーが痛めつけ
た3人組みのデコボコトリオだった。
 目と目が合うとニャーと笑っい何かを話しかけてきた。だが、マザーがいないので言
語変換が出来ない。
 無視しているといきなり、屈強の大男にキャプテンは目の上を拳で殴られた。その衝
撃で一瞬意識がとんだ。大男はキャプテンの喉を鷲掴みに体ごと持ち上げる、キャプテ
ンは朦朧としながら足をバタバタさせる。大男はなおも喉に指を食い込ませる、キャプ
テンは息が詰まり意識が次第に遠のいた。

 その時、全館放送で何かが放送されていた。その声は国王の声に似ている。
小さい男が、慌てて大きい男の腕を掴んで離すように言っている。大男が指の力を緩め
るとキャプテンは崩れるように床に落ちた。
三人組は床に顔を擦りつけ、微かに目を明けているキャプテンに平謝りに謝る。だが、
キャプテンには宇宙語が分からなかった。

 暫くすると武装したアントニー警務官を先頭に30人の武装警務官が、レーザー銃を
構えてキャプテンを救出に来た。
<<ドッタ、ドッタ、ドッタ>>
<<キャプテン、大丈夫ですか?>>
 ドクターロボのマザーが武装警務官の後ろから声をかける。
「こ、この3人組みに喉を絞められた」
 途切れ途切れにキャプテンが言う。
マザーは3人組を見詰た。3人は怯えた顔でマザーを見る。
<<誰に頼まれたの?>>
「はい、ベンガル所長です。殺せば釈放してやると言われて、その相手がまさか陛下の
知り合いとは命ばかりはお助けください」
 背の低い男が命乞いをする。
マザーは3人に近寄り、こめかみを華奢な指で軽く叩く。その途端男たちは顔付きが変
わり震えだした。それを見てマザーはキャプテンを軽々と抱え上げて引き上げた。

 その後バートン法務大臣とベンガル所長はその職を解かれ殺人教唆の容疑で、身柄を
拘束され、自業自爆か極刑になる。3人組はマザーの指のせいで脳障害を起こし体の一
部が麻痺した、そのため裁判官の裁量によって情状酌量で星外追放になる。

 翌日は何ごとも無かったように誰もその話に触れなかった。会議をこれ以上後退させ
たくないと言う配慮である。ただキャプテンの目が石榴のように腫れていた。
「陛下、リチウム州の採掘現場を見てきました。山の横を崩しましょう。リチウムを剥
き出しにします。採掘も簡単になりコストが大幅に下がります」
「その方法は前に考えたのだが、800メートル近く山を崩すのは不可能だった。山の
横といっても高さが100メートルはある。残念だがな」
「陛下、大型戦闘艇のレーザー砲のエネルギー・スペアーを山の中に仕掛け爆発させま
す。ベンに成功率を計算させたら70パーセントでした。悪い数字ではありません」
 と、言ってキャプテンは国王と閣僚たちの顔を見た。見んな唖然とした顔付きで顔を
見回していた。

「本当に山を崩壊させるのか、キャプテン?」
 国王の顔に迷いが見える、やはり失敗を恐れていた。山を崩してリチウムが発掘でき
無いとリチウム州80万人が路頭に迷うだけではすまない、サザンクロス星の外貨が全
然入らなくなり国王の私財を投入しても5,6年で、サザンクロスは滅びてしまう。
 だが山を崩さずそのまま掘り続けて、国王の私財を投入すれば40,50年は持つ。
国王は長い間この選択を迷い、それ以外の逃げ道を考えていた。
「陛下、やりましょう。サザンクロスが滅亡する前に次の世代の道標を刻みましょう」
 会議室を見回してキャプテンは力強く言う。

「分かった、覚悟を決めた、やろう。説明をしてくれ」
 国王の顔から迷いが消え、笑みが零れた。
「それでは陛下のお許しが出たので、リチウム採掘戦略をお話しますが、その前に守っ
てもらいたい事がある」
 その時、キャプテンの顔付きが変わった。あの恐ろしい顔が現れた。
「リチウム鉱山の爆破が失敗すればこのサザンクロス星は滅びるだろう。800万の民
は死ぬか外星に逃亡するかだ。当然失敗はありえない、どうやって成功させるかだ。そ
れしか考えるな。失敗を口にする者は牢屋にぶち込む」
 閣僚たちを恐ろしい顔でキャプテンは睨みつける。
「その通りだ、キャプテン」
 国王が賛同するように頷く。キャプテンの話は過激だがそれに近い考えを国王は前か
ら持っていた。だがこれほどストレートに言い切ることが出来ず、国王は自らの指導力
不足を感じている。

「オスカー、投影装置を頼む。陛下、これからはベンに詳細を説明させます」
 会議室にスクリーンで見た映像が浮き上がる。そしてベンの立て板に水のような説明
が始まった。
<<....以上、報告を終わります。ベンジャミンV号がお伝えしました>>

「うん、よく分かった。直ぐにリチウム採掘作業を中止しさせよう。掘り出してあるリ
チウムは外に出し、作業用器具をトンネルから退避させる。ただトンネルが20キロメ
ートルもある、そう簡単には退避できないと思う」
 と、言って国王は眉を曇らす。
「うん、ウェンディー経済財政産業大臣。現場に連絡して退避作業は何日で終了するか
確認してくれ。無理はさせるな」
「はい、陛下」
 ウェンディー経済財政産業大臣は席を立ち、会議室の隅から携帯電話で連絡する。
「陛下、山を崩壊後、その残骸を防衛省のレーザー砲で撃ち砕き粉砕します。そしてバ
キュームホースで土砂を排出する。この案を検討していただきたい」


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