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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第3回   3
<<キャプテン、亀裂の目が3カ所ありました。どれがいいか判断がつきません>>
「そうか、考えていてもしょうがない。じゃ、真ん中にしてくれ。みんなに分かるよう
に山全体からそのカ所を拡大して、赤い丸を映像に付けてくれ。それを見ながら説明し
てくる」
<<分かりました、出来ました。いつでも使えます>>
「うん、もう一度、リチウム州の採掘現場を映してくれ」
 キャプテンは丹念に作業現場を凝視した。採掘の出入り口、大型運搬車、精製工場、
街との距離を測っていた。

「ベン、リチウム州の消防能力は分かるか?」
<<キャプテン、新型消防エアーカーが80台あり、そのうちの半分が現場の採掘市に
集まっています>>
「そうか、リチウムは乾いた空気中ではほとんど変化しないが、水分があると常温でも
窒素と反応し窒化リチウムを生ずる。また、熱すると燃焼して酸化リチウムになる。い
や、われわれが考えるより現場に任そう」
<<そうですね、彼らは1000年以上も採掘している訳ですから危機管理は彼らの方
が慣れているでしょう>>
「そうだな。他に調べることはあるかな?」
 キャプテンは背を操縦席にあずけ天井を仰いだ。
<<キャプテン、これでいいんじゃないですか>>
「じゃ、宮廷まで飛んでくれ。陛下に報告してくる」
<<キャプテン、了解しました>>

 キャプテンは国王が賛成するか多少不安だった。しかし反対する理由も考えられな
い。そんな事を考えているうちに宮廷に着いた。
 会議室を覗くと国王の姿が無い。
「オスカー、陛下は?」
「体調を崩され、お休みになっています」
 心配顔でオスカーが言う。国王は心労が嵩み健康が極度に悪化している。
「そうですか、じゃ、わたしは宇宙港に引き上げます。会議が始まりそうになったら連
絡してください」
 キャプテンとロボットのマザーは部屋を出ようとした。
「待て、キャプテン。無礼であろう」
 バートン法務大臣が言う。

 バートン法務大臣は、先日自殺したガブリエル防衛大臣に次ぐ重鎮であった。
「陛下のことが心配じゃないのか、おまえもここに残れ」
 バートンの目が険しくなる。
「ここで心配してても何も進展しない、わたしはわたしの仕事をやる」
 何を言っているんだ、この親爺は、と言う顔でキャプテンは無視しようとした。
「この若僧が、異星人の分際で聞いたような口を利くじゃない!」
 怒りに震える声でバートンが言う。
「わたしは陛下以外の指図は受けない。失礼する」
「無礼者、おまえを逮捕する。警務官、警務官」
 バートンは立ち上がり大声で叫んだ。直ぐに警務官が7,8人入室して来た。
「警務官、宮廷侮辱罪でキャプテンの身柄を拘束しろ」
 警務官のレーザー銃はドクターロボのマザーに向けられている。
「わたしを捕まえてどうする、陛下が治ればわたしは釈放されるだろう。おまえを職権
乱用で裁いてやる」
 キャプテンはバートンを睨んだ。

「おい、キャプテンを警察庁の留置所にぶち込め。ベンガル所長に渡せばいい」
 バートンが大きな声で言う。その時、応援の警務官が12,3人突入して来た、
キャプテンはドクターロボのマザーを見て小さく頷いた。その頷きは何を意味するのか
分からないまま、警務官に囲まれて部屋から連行された。
 閣僚たちの視線はドクターロボのマザーに集まる。
<<みなさん、後悔しますよ>>
 と、言うとマザーは悠々と部屋を出て行く。だが、その声はマザーなのかベンの声な
のか区別がつかなかった。
 何人かの閣僚はまずいという顔で舌打ちする。

 そして、無言のまま重苦しい時が過ぎる。
「待たせたな、気分が良くなった」
 国王がやつれた顔で微笑みながら姿を見せる。
「キャプテンはまだか?」
 オスカーの顔を見ながら国王が言う。
「それが」
「陛下、わたしから説明します。宮廷侮辱罪でキャプテンの身柄を拘束しました」
 オスカーの話を遮りバートンが緊張した表情で言う。
「何、宮廷侮辱罪だと、キャプテンは何をしたんだ?」
 国王は、キャプテンの調査結果を聞きたくて苛立っていた。
「陛下、陛下が体調を崩され、お休みになっているのに宇宙港に帰ると言い出し、それ
で身柄を拘束しました」
 眼を伏せてバートン法務大臣が言う。
「いいではないか、何を言っているんだ。オスカー、キャプテンを地下牢から連れて来
てくれ」
 国王は困惑顔で端末の画面を見ながら言う。

「陛下、それがキャプテンは警察庁の留置所に連行されました」
 オスカーは申し訳なさそうに言う。国王はそれを聞いてゆっくりバートン法務大臣の
顔を見詰る。
「うーん、他の閣僚たちは黙って見ていたのか?」
 情けない顔で国王は閣僚たちを見る。
「そ、総意です、陛下」
 言葉を詰まらせバートン法務大臣が言う。だが他の閣僚は肯定も否定もしなかった。
「どうしたものかな、バートン法務大臣。キャプテンを直ぐにここに連れて来い」
「陛下、サザンクロスは法治国家です。キャプテンを釈放する手続きがあり、今日中に
は間に合いません。明日の朝一になります。もし、手続きを無視すればサザンクロスは
無法国家になります」
 平伏してバートン法務大臣が言う。

「仕方ない会議は中止だ。明日にする」
 国王は閣僚たちを睨みつけ席を立った。
バートン法務大臣は会議室の隅で携帯電話を掛ける。
「オー、ベンガル所長か、バートンだ。キャプテンが行くはずだ。明日の朝、釈放の予
定になるが、今夜中に事故を装って殺せ」
「....何、分かった。やってやる。だから殺せ」

 ロボットのベンは、サザンクロス中の電波を全て傍受していた。
<<大変です、キャプテンが今夜殺されます。バートン法務大臣がベンガル所長に命令
をしました>>
 ロボットのベンの頭のランプが激しく点灯する。
「わたしに任せて」
 子どものアスカが怪しく笑った。
「どうやるの、アスカ?」
 動揺しながらナオが言う。
「マザーはエアーカーに乗って、警察庁の留置所の横に隠れていて。ベンは警察庁の留
置所の上空からベンガル所長を挑発して。レーザー砲で監視塔を次々に破壊するの。そ
して、キャプテンを留置所の運動用の内庭に連れて来るようにベンガル所長に命令し
て、キャプテンが出て来たらマザーのエアーカーが内庭に降りてキャプテンをさらって
くる」
 得意そうにアスカは言う。ベンも嬉しそうに頷く。


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