「じゃ、資料を見せてくれ。マザー、ナオが来たら今までの経緯を話してくれ」 <<分かりました、キャプテン>> スクリーンに地図が表示された。 <<キャプテン、赤いマークが宇宙港、グリーンが宮廷、茶色がリチウムの埋蔵されて いるリチウム鉱山です>> 「そうか、宇宙港の近くか。星外輸出を考慮して山の近くに巨大宇宙港を作ったのか」 スクリーンを見ながらキャプテンは呟く。その時、ナオがタオルで顔を拭きながら入 って来た。マザーが小さな声で話しかける。
その間にもスクリーンは、その山をライブの実写で拡大していく。 「ベン、誰が撮影しているんだ?」 <<キャプテン、人工衛星がデータを送っています。キャプテン、われわれが乗ってい る大型戦闘艇は山の上空に到達しました>> 「そうか、リチウム鉱山に埋蔵されているリチウムをスクリーンの山の上に浮き出して くれ」 スクリーンを見詰ながらキャプテンは言う。 <<キャプテン、分かりました。準備がありますので2,3分待ってください>> 「うん、頼む」 ベンの頭のランプが目まぐるしく点灯した。
「ふーん、キャプテン。また面倒くさいことに首を突っこんだわねえ」 タオルを首に掛けたナオが言う。 「ああッ、まあ、ここに住んでいる以上、仕方ないだろう。サザンクロスの技術よりも この大型戦闘艇が積んでいる技術の方が進んでいる」 「そう言えばそうね。この大型戦闘艇があるから、わたしたちも生きていけるのよね」 首にかけたタオルの端でナオは鼻の頭の汗を拭う。 「ああッ、われわれの最大の武器だ」 大きく頷いて、キャプテンはスクリーンのリチウム鉱山を見る。 その時、金色の皹みたいな線がリチウム鉱山に浮き出た。 <<キャプテン、あれが埋蔵されているリチウムです>>
「そうか残り少ないな、本当に50年持つのか?」 キャプテンは首を傾げる。 <<大丈夫です、うまくやれば100年は持ちます。それはスクリーンを拡大すれば明 確に分かります。それより、この街を見てください。リチウム州の人口80万人>> 「うーん、大きな街だ。だがリチウムが枯渇すれば死の街になる」 <<キャプテン、リチウム州だけでなくこのサザンクロスが成り立ちません>> 「分かった。スクリーンを拡大してくれ」 キャプテンは地球の石炭鉱山のイメージで考えていたが、直径30メートル弱の大き く立派なトンネルの入口が見える。ちょうど大型貨物車が出て来た。 「何だ、4車線の道路が完備されているのか?」 驚愕の表情でキャプテンはスクリーンを見る。
<<キャプテン、資料を見ますと、入口から掘り進めて4キロメートルまでは直径30 センチのバキュームホースでリチウム鉱石を排出していましたが、4キロメートル以上 掘り進めるとトンネルを拡大して車に積んで排出しています>> 「そうか苦労しているんだな。だが、今のトンネルを6キロも掘り進めれば山の反対側 に抜けるんじゃないのか? 最初のリチウムが埋蔵されている画面を出してくれ」 <<はい、キャプテン>> そして、リチウム鉱山に金色の皹みたいな線が再び浮き出る。 「そうか6キロは山の4分の1か。反対側から掘っても4分の1を掘らないとならな い。しかし、この山の横から穴をあけたらどうだ。1キロもないぐらいだと思うが?」 キャプテンは直感でそう感じた。 <<はい、780メートルです。ですが直径30メートルの穴を開けるには時間がかか ります>>
「いや、山を崩してリチウムを剥き出しにするんだ。イメージで言うと砂場で砂山を作 りスコップで上から振り下ろしそのままスコップを横に引いて、砂をそのまま抉る。そ れで採掘が楽になる」 <<山の一部を地表から爆破させるんですか?>> 「そうだ、サザンクロスにはそんな爆薬はないだろうから、この大型戦闘艇のレーザー 砲のエネルギーのスペアーを提供しよう」 <<キャプテン、前例がありません。危険じゃないですか?>> 珍しくロボットのベンが躊躇した。 「じゃ、ベン、エネルギーのスペアーの爆発力と山の強度を調べて、シミュレーション で確認してくれ」 <<キャプテン、分かりました>>
「ねえ、キャプテン。山ごと吹っ飛ばすの止めた方がいいわよ」 心配そうにナオが言う。 「うーん、どうせほっといてもリチウム鉱山は駄目になる」 思い詰めたようにキャプテンは言う。しかし、レーザー砲のエネルギー・スペアーの 爆発でリチウム州全体が崩壊したらどうしようかと考えていた。 <<キャプテン、結果が出ました。山の方が頑強です。レーザー砲のエネルギー・スペ アーが4個あれば山全体を崩壊できます。ですが1個でどこまで崩壊出来るかは不明で す>> 「分かった、思ったより破壊力は無いな。リチウム州が崩壊したらどうしようか考えて いたが、これで安心して山を破壊できる」 「やっぱりあの山を爆破させるの?」 ナオは顔を曇らせる。
「ベン、レーザー砲のエネルギー・スペアーの在庫数を教えてくれ?」 <<キャプテン、2個です。使用中のレーザー砲のエネルギーは半分残っています>> 「そうか、1個でレーザー砲を何時間放射できるんだ」 <<キャプテン、連続放射で10分間です。スペアーの重さ1トン、長さ6メートルで す。しかし、サザンクロス星にはこのレーザー砲のエネルギー・スペアーありません。 補充は難しいと思います>> ロボットのベンは神妙に言った。 「まあ、1個残っていればいいか。ベン、レーザー砲で山の横に穴を開けその中にエネ ルギー・スペアーを押し込み蓋をする、そして爆発させる。そのために山の亀裂を教え てくれ」
<<山の亀裂ですか、そのような経験はありませんが見てみましょう>> スクリーンに山の断面が何百カ所と角度を変え映し出されては消え、映し出されては 消えた。残像でキャプテンは目が疲れたのか、目を瞑り作業が終わるまで待った。
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