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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第2回   2
「じゃ、資料を見せてくれ。マザー、ナオが来たら今までの経緯を話してくれ」
<<分かりました、キャプテン>>
 スクリーンに地図が表示された。
<<キャプテン、赤いマークが宇宙港、グリーンが宮廷、茶色がリチウムの埋蔵されて
いるリチウム鉱山です>>
「そうか、宇宙港の近くか。星外輸出を考慮して山の近くに巨大宇宙港を作ったのか」
 スクリーンを見ながらキャプテンは呟く。その時、ナオがタオルで顔を拭きながら入
って来た。マザーが小さな声で話しかける。

 その間にもスクリーンは、その山をライブの実写で拡大していく。
「ベン、誰が撮影しているんだ?」
<<キャプテン、人工衛星がデータを送っています。キャプテン、われわれが乗ってい
る大型戦闘艇は山の上空に到達しました>>
「そうか、リチウム鉱山に埋蔵されているリチウムをスクリーンの山の上に浮き出して
くれ」
 スクリーンを見詰ながらキャプテンは言う。
<<キャプテン、分かりました。準備がありますので2,3分待ってください>>
「うん、頼む」
 ベンの頭のランプが目まぐるしく点灯した。

「ふーん、キャプテン。また面倒くさいことに首を突っこんだわねえ」
 タオルを首に掛けたナオが言う。
「ああッ、まあ、ここに住んでいる以上、仕方ないだろう。サザンクロスの技術よりも
この大型戦闘艇が積んでいる技術の方が進んでいる」
「そう言えばそうね。この大型戦闘艇があるから、わたしたちも生きていけるのよね」
 首にかけたタオルの端でナオは鼻の頭の汗を拭う。
「ああッ、われわれの最大の武器だ」
 大きく頷いて、キャプテンはスクリーンのリチウム鉱山を見る。
その時、金色の皹みたいな線がリチウム鉱山に浮き出た。
<<キャプテン、あれが埋蔵されているリチウムです>>

「そうか残り少ないな、本当に50年持つのか?」
 キャプテンは首を傾げる。
<<大丈夫です、うまくやれば100年は持ちます。それはスクリーンを拡大すれば明
確に分かります。それより、この街を見てください。リチウム州の人口80万人>>
「うーん、大きな街だ。だがリチウムが枯渇すれば死の街になる」
<<キャプテン、リチウム州だけでなくこのサザンクロスが成り立ちません>>
「分かった。スクリーンを拡大してくれ」
 キャプテンは地球の石炭鉱山のイメージで考えていたが、直径30メートル弱の大き
く立派なトンネルの入口が見える。ちょうど大型貨物車が出て来た。
「何だ、4車線の道路が完備されているのか?」
 驚愕の表情でキャプテンはスクリーンを見る。

<<キャプテン、資料を見ますと、入口から掘り進めて4キロメートルまでは直径30
センチのバキュームホースでリチウム鉱石を排出していましたが、4キロメートル以上
掘り進めるとトンネルを拡大して車に積んで排出しています>>
「そうか苦労しているんだな。だが、今のトンネルを6キロも掘り進めれば山の反対側
に抜けるんじゃないのか? 最初のリチウムが埋蔵されている画面を出してくれ」
<<はい、キャプテン>>
 そして、リチウム鉱山に金色の皹みたいな線が再び浮き出る。
「そうか6キロは山の4分の1か。反対側から掘っても4分の1を掘らないとならな
い。しかし、この山の横から穴をあけたらどうだ。1キロもないぐらいだと思うが?」
 キャプテンは直感でそう感じた。
<<はい、780メートルです。ですが直径30メートルの穴を開けるには時間がかか
ります>>

「いや、山を崩してリチウムを剥き出しにするんだ。イメージで言うと砂場で砂山を作
りスコップで上から振り下ろしそのままスコップを横に引いて、砂をそのまま抉る。そ
れで採掘が楽になる」
<<山の一部を地表から爆破させるんですか?>>
「そうだ、サザンクロスにはそんな爆薬はないだろうから、この大型戦闘艇のレーザー
砲のエネルギーのスペアーを提供しよう」
<<キャプテン、前例がありません。危険じゃないですか?>>
 珍しくロボットのベンが躊躇した。
「じゃ、ベン、エネルギーのスペアーの爆発力と山の強度を調べて、シミュレーション
で確認してくれ」
<<キャプテン、分かりました>>

「ねえ、キャプテン。山ごと吹っ飛ばすの止めた方がいいわよ」
 心配そうにナオが言う。
「うーん、どうせほっといてもリチウム鉱山は駄目になる」
 思い詰めたようにキャプテンは言う。しかし、レーザー砲のエネルギー・スペアーの
爆発でリチウム州全体が崩壊したらどうしようかと考えていた。
<<キャプテン、結果が出ました。山の方が頑強です。レーザー砲のエネルギー・スペ
アーが4個あれば山全体を崩壊できます。ですが1個でどこまで崩壊出来るかは不明で
す>>
「分かった、思ったより破壊力は無いな。リチウム州が崩壊したらどうしようか考えて
いたが、これで安心して山を破壊できる」
「やっぱりあの山を爆破させるの?」
 ナオは顔を曇らせる。

「ベン、レーザー砲のエネルギー・スペアーの在庫数を教えてくれ?」
<<キャプテン、2個です。使用中のレーザー砲のエネルギーは半分残っています>>
「そうか、1個でレーザー砲を何時間放射できるんだ」
<<キャプテン、連続放射で10分間です。スペアーの重さ1トン、長さ6メートルで
す。しかし、サザンクロス星にはこのレーザー砲のエネルギー・スペアーありません。
補充は難しいと思います>>
 ロボットのベンは神妙に言った。
「まあ、1個残っていればいいか。ベン、レーザー砲で山の横に穴を開けその中にエネ
ルギー・スペアーを押し込み蓋をする、そして爆発させる。そのために山の亀裂を教え
てくれ」

<<山の亀裂ですか、そのような経験はありませんが見てみましょう>>
 スクリーンに山の断面が何百カ所と角度を変え映し出されては消え、映し出されては
消えた。残像でキャプテンは目が疲れたのか、目を瞑り作業が終わるまで待った。





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