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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

最終回   10

 その夜、農家、学生から新種の問い合わせで宮廷の電話回線がパンクした。
急遽、臨時ニュースを流し対応する。
”宮廷では新種導入を前向きに検討、3日後に正式発表する”
 そのテロップが夜遅くまでテレビ、インターネットに流れる。

 それから10日が過ぎた。
「陛下、おめでとうございます。リチウムの輸出が始まったそうで」
 久しぶりにキャプテンが顔を見せる。
「うん、ありがとう、キャプテン。いま民に報告するところだ」
 国王は目でカメラを示唆した。
「陛下、それは失礼しました。不調法をお許しください」
「そんなことはどうでもいい、横に座ってくれ」
 キャプテンは国王の横に座りその横に言語変換役のロボットのマザーが座る。国王を
挟んで反対側にオスカー室長が座っている。
 その4人を遠くから国営放送が全国に放映していた。

 にこやかな顔で国王が型通りの挨拶をする。そして本題に入った。
「わたしは隣に座っているキャプテンから宇宙戦争が迫っていることを何度も説明され
た。だが、わがサザンクロス星は過去に参戦したことは一度も無い。しかし、その戦争
の影響で悲惨な目に遭ってきた。
 そこでわたしはサザンクロス王国誕生から1000年以上経つが、その歴史を精査す
るプロジェクトチームを立ち上げた。
 サザンクロス国立総合大学から歴史学者、経済学者、町の歴史家、外星の歴史家。そ
れら大勢の歴史家、知識人で一つ一つの戦争を検証した」

 キャプテンはカメラを見詰小さく頷いた。
「転機となったのは700年前の宇宙食を自国で作るのを止めて、外星から輸入した時
から戦争の被害が大きくなった。
 宇宙戦争が始まると、宇宙食の売価が2,3倍と上昇する。だがサザンクロスはリチ
ウムバブルで外貨が溢れていた。それで宇宙食売価が5倍でも10倍でも買い続けた。
しかし、宇宙戦争が長引くと宇宙食を輸出する国は自国の民のため輸出を止める。その
ためわが民は餓死で人口が半分近くに激減していた。それ以来戦争が起こる度にこれの
繰り返しだ」

 国王は顔を少し顰めた。
「この宇宙食とは別に嫌な意見があった。宇宙戦争が勃発すると必ずサザンクロスの銀
行が崩壊する。そのため民の銀行口座が無効になる。勿論銀行は宮廷の直営だ」
 と、言って国王は目を伏せる。
「陛下、わたしの国もそうでした。国債が国家予算の4倍になると戦争を仕掛け、国債
を無効にしていました。無能な政治家が使う方法です」
 キャプテンは当然のように言う。
「そうか、わたしはサザンクロス王国の血筋として面映い思いだ」

 暫く沈黙が続いた。
「陛下、その史実を公表することで陛下の義務は済んだと思います。過去を振り返るよ
りサザンクロスのため、これからのことを考える方が優先かと」
 険しい表情でキャプテンが言う。
「うん、二度とこのような民を欺く破廉恥な振る舞いはしない。約束する」
「国王、本題に戻りましょう」

「うん、すまなかった。
では、宇宙戦争に備えて宇宙食は自国で生産することに決めた。
 現在の宇宙食の備蓄を3ヶ月分から5年分に引き上げる。宇宙食の自国生産と5年分
の備蓄があれば過去の例では餓死することは無い」
 国王はキャプテンの顔を見る。
「その食材は新種から育った、穀物、野菜を使う。良質なたんぱく質は魚から取るしか
ないと決まった。牧畜では賄いきれない。
 数日前、宮廷の庭に新種を蒔いた、種を増やし全国に配布する。それとリチウム鉱山
の採掘が簡素化され2万人が職に溢れた。その2万人で新たに畑を開拓させる。開拓が
終わればそのまま農家になるか漁師になるかは本人の自由だ」

「そうですか2万人も....」
「ああッ、雇用を増やさないとな。戦争が大きくなる前に国を豊かにしたい」
 国王は力強く言う。

 それから2年が過ぎ、サザンクロスは戦渦にまみれることなく、リチウムバブルを凌
駕するまでには至らないが、どうにか経済が軌道に乗った。しかし、宇宙戦争は熾烈に
なり、サザンクロスを飲み込もうとしている。
 キャプテンは反デスラカン連合の召喚状を手にしていた。キャプテンが好むと好まざ
るとに関わらず、宇宙戦争はその主役を模索していた。


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