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作品名:銀河を渡る船 第五部・改革 作者:佐藤 神

第1回   1
<<宇宙恒星日誌21080820。
 元銀河系太陽系第三惑星地球人のアスカは、サザンクロス国立総合大学の学生にな
る。キャプテンはサザンクロス星の防衛大臣代理補佐を名乗る>>

 連日キャプテンは宮廷の会議に防衛大臣代理補佐として出席していた。
「我がサザンクロスのGNPは毎年落ち込んでいる、もっと経済を活性化させることは
出来ないのか!」
 渋い顔で国王が言う。
「うん、どうした? 昨日までの案は全て駄目だ。もっと斬新な案はないのか?」
 国王はいらつきながら言った。
サザンクロスの収入源は、レアメタルのリチウムの星外輸出であった。サザンクロスに
は純度の高いリチウムが埋蔵されていた。

 リチウムは技術製品に無くてはならないレアメタルである。近代技術製品には必ず使
われている。リチウムを使用したリチウム電池は高エネルギー密度をもつことから近代
技術製品には無くてはならないものであった。
 また水酸化リチウムは二酸化炭素を吸収する働きがあり、宇宙船は必ずこの水酸化リ
チウムの巨大空気清浄器が使われている。
 それ以外にもリチウムイオンは抗うつ薬として投与されていた。

 宇宙船時代が3000年も続き、サザンクロスはその恩恵を受けていた。しかし、そ
のリチウム鉱山も20キロメートルまで掘り進み、掘り出しコストも高くなり国の赤字
補填が出来なくなった。また人間の掘り出し事故も増え、死亡に及ぶことが度々遭っ
た。

 サザンクロスにはリチウムの輸出以外は、これといった外貨獲得の産業は無かった。
 しかし、リチウムで国が潤った時代は、小さな宇宙港を巨大な宇宙港に立て替えて常
時、惑星間宇宙船が離発着していた。
 そして、首都の建物を超高層ビルに変える、そのビルをドームで繋いで近代的な国に
姿を変えた。全てリチウムのお蔭であった。今思えば懐かしくよき時代であった。
 当初は10本以上もあったリチウム坑道が5本に減り、3本に減り、今では1本にな
った。無尽蔵にあるはずだったリチウム鉱山が底をついてきた。それが公になったのは
30年前だった。だがそれ以前から、掘り出しコストが高く国の赤字は国王の私財で補
填されていた。

 1000年以上、栄耀栄華を極めていたサザンクロス、そのつけが現国王に重く伸し
掛かった。民は贅沢が身に付き、怠け者の国民になっていた。いくら国が赤字になろう
と国王が如何にかしてくれると民は高を括っている。
 昔のリチウムバブルの名残で公共料金、育児教育、学校は全て国が負担している。
今の国王は、民のことを考えるとそれらを廃止することが出来ず、節約を訴えていた。

 だが毎年、巨額赤字のため国王の私財が傾いてきた。そのため国王は身を壊すほど焦
りを感じている。
 ドクターロボのマザーの診断によると国王は神経性胃炎や自律神経失調症を患ってい
た。

 国王は先妻の后を不治の病で亡くし、子どものためにと若くて綺麗な皇族の血筋を后
に添えた。后は人柄も性格も悪くはなかったが、社交性が強く毎晩宮殿で繰り広げられ
た舞踏会。
 財政難で民に節約を訴えていた国王は、民に顔向け出来ず若くて綺麗な后に舞踏会を
止めるように遠まわしに言う。だが若い后はそれに腹を立て実家に帰ってしまう。
 先妻の子、王子は王政を嫌がりサザンクロス国立子供学校の寄宿舎に逃げ込んだ。
そのため国王は、家庭も国政もうまくいかず憂鬱な日々を送っている。

「キャプテン、どうだ、何か打開策はないか。こう閉塞しては手の打ち様がない」
 国王は会議席を見回し、オスカー室長の隣で半分寝ているキャプテンに声を掛ける。
「陛下、その質問はリチウムで利益を上げろと言う質問ですか。それとも新しい産業を
考えろと言う意味ですか?」
 閣僚たちの顔を一瞥してキャプテンが言う。
「うん、とりあえずリチウムだ。掘り尽くすまで50年はある」
 期待するように国王の顔が微笑んだ。
「陛下、山を破壊しましょう」
「うん、その案は以前、技術専門官に検討させた。その結果技術的に難しいと言うこと
で中止になった」
 キャプテンの考えも我われとたいして代わらないなと、いう顔で国王が言う。

「陛下、難しいと言うのはリチウム鉱山を20キロメートルまで掘り進めたため、手遅
れになったと言うことですか?」
「うん、そうだ。もっと前に何らかの手を打っておけばよかった」
「陛下、分かりました。わたしはこれからリチウム鉱山を調査してきます。結果を今日
中にオスカーに伝えます。ではこれで、失礼します」
「おい、直ぐに行くのか。場所は分かるのか、今までの調査資料は要らないのか?」
 国王は苦笑いしながら言う。
「陛下、先入観無しに最初から調べます。おーい、ベン、向かいに来てくれ」
 キャプテンとマザーは踵を返し、会議室を出る。

「うん、流石にキャプテンだ。行動が早い。われわれに欠けているところだ」
 国王は不甲斐無い閣僚たちを見て言った。
キャプテンは宮廷の駐車場でベンを待った。上空を見上げていると夏の青い空がキラッ
ト光る。見る間に大型戦闘艇がその姿を現した。
 そして大型戦闘艇は垂直で駐車場に降り立つ。その時の風がマザーの白衣の裾を捲っ
た。
「いやーん」
 初めてマザーの艶っぽい悲鳴が上がった。それを横目で見ながらキャプテンは大型戦
闘艇に乗り込む。
「ベン、会議室の話を聞いていたな」
<<キャプテン、サザンクロス国立総合大学のデータベースから必要な資料を揃えて置
きました。現場に向かいながらスクリーンで説明します。それでは操縦室に行きましょ
う>>
「うん、ナオはどうした?」
<<畑で野良仕事をしています>>
「そうか、ナオも呼んでくれ」
<<キャプテン、分かりました。ナオ、操縦室に来てください。話があります>>
 宇宙船内にベンの声が響く。


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