「うーん、陛下の信任の厚いガブリエルが、デスラカン帝国の裏諜報部員とは陛下もつ いてない」 気の毒そうにキャプテンは言う。 「でも、ガブリエルは捕まえるんでしょう?」 ナオはキャプテンの目を見て言う。 「そうだ、だがどうやってこの事件を終結させるか。一歩間違えれば陛下の命取りだ」 桜を見上げながら、キャプテンは言う。 「どうして? この証拠を突きつければ終わりじゃないの」 不思議そうにナオは聞いた。 「現職閣僚にデスラカン帝国の裏諜報部員がいた。その任命権者は陛下だ。陛下を快く 思っていない連中はこの時とばかりに陛下の責任追及をするだろう」 「何で、陛下がこのサザンクロス星の国王なんでしょう?」 ナオが口調を強める。
「いや、このことが公になれば陛下は王政を廃止して、民主政にするだろう」 「それはそれで、いいんじゃないの?」 「うん、どっちでもいいが、今は宇宙が混沌としている、この時期にやるべきではな い。一つにまとまっていないと他の星から付け込まれる」 キャプテンは自分に言い聞かせるように言う。
「他の星って、デスラカン帝国のこと?」 「うーん、それ以外に海賊、スペースマフィヤ、野蛮人。わけのわからない連中がこの サザンクロスを虎視眈々と狙っている。それらの諜報部員は、既に潜伏していると考え た方がいいだろうな」 「そうなの、結局どうするの?」 悩ましい顔でナオが言う。 「とりあえず、陛下を助ける。そして、サザンクロスの民を一つにまとめ、外星侵略を防ぐ」 力強くキャプテンは言う。 「ねえ、わたしは学校に行っててもいいの?」 子どものアスカはどうするのか、キャプテンに聞いた。 「うん、でも今の話は人に言っては駄目だぞ」 「だいじょうぶよ、口が堅いから」 微笑みながらアスカが言う。
その翌日。 ナオの運転するエアーカーは宮廷に着陸した。 「ああッ、今日は暑くなりそうだな、ナオ、庭で待つか?」 キャプテンは日差しを浴びながら言う。 「えッ、もめそうだからここで待機しているわ」 不安そうにナオはキャプテンを見る。 「分かった、マザー。行こうか」 <<はい、キャプテン>> キャプテンとドクターロボのマザーは宮廷のゲートで警務官に囲まれた。 「おや、キャプテン。今日は何ですか?」 「陛下に会いに来た。レーザー銃を携帯して、アントニー警務官も一緒に来てくれ」 険しい表情でキャプテンは命令口調で言う。 ただならぬキャプテンの気配に、アントニー警務官は周りを見回す。
「現職閣僚にスパイがいた」 小さな声でキャプテンはアントニー警務官に耳打ちした。 その途端、アントニー警務官の顔色が変わる。 「まさか」 と、言ってアントニー警務官は絶句した。 「ついて来い、アントニー警務官」 三人は小走りに宮廷の奥に向かう。
「キャプテン、証拠は?」 アントニー警務官は走りながら聞いた。 「うん、証拠は全部揃っている」 「陛下には?」 「陛下には、これから話す」 「事前に陛下に話されたほうがいいのでは?」 アントニー警務官は、走りながらキャプテンを見る。 「いや、陛下の信任の厚いガブリエルだ。陛下は動揺して判断を誤る虞がある。わたし に任せろ」 「えッ、ガブリエル防衛大臣?」 「そうだ」 そして、宮廷の大会議室の前に辿り着いた。
「あらッ、キャプテンどうしたの?」 不審そうな顔でオスカーはキャプテンの顔を見た。 「大変だ、スパイが発覚した」 青い顔でアントニー警務官が言う。 「スパイ?」 「オスカー、中へ入るぞ。ついて来い」 と、言うとキャプテンは分厚い扉を開けた。会議室は国王を中央に会議中だった。 そして、全員でキャプテンを見詰る。 「オッ、キャプテン、よく来た。何かあったのか?」 国王はにこやかに言う。 「陛下、陛下のお耳を汚すおぞましい報告があります」 キャプテンはテレビ中継のカメラを一瞥して大きな声で言った。そして国王は顔を曇 らす。 「うん、何だ。その報告とは?」 「陛下、この閣僚の中にデスラカン帝国の裏諜報部員が紛れています」 「何だと」 国王が大声で叫んだ。 「ガブリエル防衛大臣。これから証拠を見せるからよく見ろ」 キャプテンは怒鳴る。
「ガブリエル」 と、国王は震える声で呟き肩を落とした。一番信頼している男だった。 「オスカー、ここで再現する。投影装置を」 キャプテンはオスカーを見て言う。オスカーも動揺している。 「あの....」 アスカーは陛下を見る。だが、陛下は俯いたままだった。 「オスカー、証拠を見せなければ800万の民は納得しないだろう。早く投影装置を」 会議室に響くように大きな声でキャプテンは言う。 「はい」 オスカーは携帯電話を取り出し連絡する。暫くすると会議室が少しざわめく。 「喋るんじゃない、静かにしろ」 睨みつけながらキャプテンは言う。 そして、投影装置が運ばれセットアップされる。 「キャプテン、できたわ」 オスカーは緊張した顔付きで言った。 「ベン、昨日の星外電波の一覧表から説明してくれ」
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