三人は急いで宮廷に入る。そして、ナオは庭へ行く。 「ありがとう、マザー。もめなくてよかった。でも、鮮やかな手口だな?」 キャプテンがニャーと笑う。 <<はい、あの三人は本当に、陛下から命令されたものと思っています。例え拷問にか けられ殺されようと>> 凛とした顔から微かな笑みが漏れたような気がした。
「考えてみれば恐い話だ」 <<はい、わたしも人前ではこれを使いたくありません。ナオは気が強いから>> 「うん、ナオは言い出すと後へ引かないからな」
二人は話しながら宮廷の奥へ来た。 「キャプテン、お待ちしていました。陛下は会議中です」 オスカーが笑顔で言う。 「うん、テレビ中継もされてますか?」 「はい、いつも通りに。でも、デスラカン帝国の話とは何ですか?」 オスカーはキャプテンを見詰た。 「うん、オスカーも聞いたほうがいいだろう」 「分かりました」 オスカーは携帯電話で警務官のアントニーに会議室の受付を頼んだ。そして、キャプ テンと一緒に会議室へ入る。
「オーッ、キャプテン。よく来てくれた」 国王は微笑みながら、キャプテンを向かい入れる。 「陛下、謹んで進言いたします。デスラカン帝国が軍隊を集結しております。不届き者 のデスラカン星に最終兵器を打ち込みます。陛下のお許しを頂に参りました」 と、言ってキャプテンはテレビ中継のカメラをジロッと睨んだ。 「何、軍隊を集結とな」 国王は唖然とした表情でキャプテンを見詰た。 「はい、陛下。うまくいけばデスラカン星を星屑に、失敗しても抑止になります」
キャプテンは国王の目を長い間見詰る。国王も不審に思い見詰返す。 「うん、分かった。キャプテン、頼むぞ」 「はい、陛下。陛下のため、サザンクロスのため、デスラカン帝国を討伐いたします。 「うん、死ぬなよ」 「陛下、もったいないお言葉、必ずや吉報をお届けいたします。これにて失礼」 キャプテンは踵を返し会議室を出た。
そして、キャプテンとマザーは庭の噴水のベンチで、のんびり小鳥を見ているナオを 見つけた。 「ナオ、終わった。引き上げるぞ」 珍しく早口でキャプテンが言う。 「どうしたのよ、折角だからゆっくりしていけば」 眠そうな声でナオが言う。 「駄目だ、今デスラカン帝国の軍隊が集結しているとテレビ中継で話したから大騒ぎ だ。早く引き上げないと」 キャプテンはナオを手招きする。 「分かったわ」 ナオは腰を上げ、お尻についたゴミを叩いた。そして、三人は小走りに走り、宮廷か ら出た。
そして、エアーカーが上昇すると、キャプテンの顔から険しさが消えた。 「やることはやった、後は罠にかかるのを待つだけだ」 キャプテンはのんびりした口調で言う。 「でも、網にかからなかったらどうするの。嘘つき呼ばわりされない?」 心配そうにナオが言う。 「うん、その時は本当にデスラカン星へ行き、最終兵器をぶち込めばいい。さもないと 咎めがあるだろう」 窓から夏の青い空を見詰ながらキャプテンが呟く。 「でも、誰なのかしらねえ。そのスパイ、全然想像もつかないわ」 首を傾げてナオが言う。 「うーん、われわれの顔見知りでないことを祈る。犯人は間違いなく死刑だ」 そして、エアーカーは宇宙港で反転しながら下降して、ベンの待つ大型戦闘艇に横付 けした。
<<みなさん、お帰りなさい。キャプテン、テレビ中継は迫力がありました。いまにも 戦争が始まりそうでワクワクしました>> ロボットのベンが嬉しそうに言う。 「いや、戦争を煽っているわけでない。裏諜報部員が行動を起こすように少し大袈裟に 言ったまでだ」 <<キャプテン、分かっていますよ。サザンクロス星からの電波は全て傍受していま す。しかし残念ながら、まだ発見できません>> 「うん、気長に待とう。必ず行動を起こす」 自信ありげにキャプテンは、ニャーと笑った。
その日の夜。 ロボットのベンが太い首をほんの少し捻る。 <<キャプテン、網に引っかかりました。文脈は間違いなく暗号です>> 「やっときたか、差出人は誰だ?」 緊張した声でキャプテンが言う。 <<ガブリエルです、ガブリエル・トーマス。防衛大臣と同じ名前です。発信元の番号 はガブリエル防衛大臣です。間違いありません>> 「そうか、その暗号を解読してくれ」 キャプテンは思案顔で言う。
「ねえねえ、その防衛大臣のガブリエルは双子なのよ。瓜二つ、区別がつかないぐらい よ。大学の理事長は弟なの」 子どものアスカが言う。 「ふーん、双子なのか」 <<キャプテン、解読が終わりました。 ”二日後の朝、4時にキャプテンがデスラカン星に最終兵器を打ち込む予定”、と言 う内容です>> ロボットのベンの頭のランプが黄色く点灯した。
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