「うん、想定外のわれわれがこのサザンクロス星に現れたので、身動きが取れないんだ ろう。大型輸送船が積んでいる1000機の高速戦闘機ではこの大型戦闘艇を破壊でき ない」 「じゃ、キャプテン。アスカが調査船でこの星の反対側に行った時、もしかしたらデス ラカン帝国の兵士がどこからか覗いていたんじゃないの?」 心配顔でナオが言う。
「ああ、森の中、沼地の中で息を潜め目だけをギョロギョロさせ、無事に引き上げるこ とを祈っていたんだろう」 「どうして、無事じゃないといけないの?」 「もし恐竜に襲われたら、救援隊が行くことになる。そうすればこの大型戦闘艇が行く ことになるだろう」 「それで調査隊は無事に帰れたのね?」 「うん、そんなところだろう。ベン、あの時の指揮官、猛将ワグナーはこのような作戦 を多用するのか?」 <<はい、キャプテン。ワグナーがあの歳まで生きてこられたのは、知略に富んだ作戦 のためです。わたしでもワグナーの作戦は読めません>>
「うーん、本物の軍人だな」 <<ですがキャプテン、ワグナーは激戦で、腕を失い、足を失い、今では首から上だけ しか残っていません>> 「サイバネティック・オーガニズムか」 キャプテンは静に呟く。 <<はい、ワグナーは死に場所を探しています。もしかしたら、キャプテンがその道行 きに選ばれたのかもしれませんね>> 「そうか、死を覚悟した人間は何をするか分からん。まいったな」 キャプテンは横で寝ているアスカの顔を見ながら言った。
「こちらから罠を仕掛けるか」 キャプテンはベンの顔を見て言う。 <<面白そうですね、キャプテン。どうやるんですか?>> ロボットのベンは嬉しそうに腕を振る。 「うん、作戦としてはデスラカン帝国に不審の動きがあり、2日後にデスラカン帝国に 最終兵器を打ち込むと、国王に進言する」 静にキャプテンは言う。 <<キャプテン、最終兵器を使うんですね>> ベンがニャーと笑ったように見えた。
「いや、サザンクロスに潜んでいるデスラカン帝国の裏諜報部員を炙り出すだけだ。実 際には行かない」 <<それは残念>> 少し不満そうにベンは言う。
「ベンに頼みがある、明日わたしが出かけたら、この星から発信する電波を全て傍受し てくれ」 <<キャプテン、了解しました>> 「そして、暗号に繋がる文脈があれば解読してくれ」 <<はい、わたしは暗号解読のスペシャリストです。お任せください>> 「うん、陛下の会議は全国放送で流しているから、わたしの進言を聞いて、デスラカン 帝国の裏諜報部員は連絡を取るはずだ」 <<キャプテン、うまくいきそうですね>> 「うん、裏諜報部員を始末したら、星の反対側にいる大型輸送船を追い出してやる」 キャプテンは寝ているアスカを抱き上げ寝室に運ぶ。
その翌日。 「あれ、キャプテンも乗るの、学校へ行くの?」 子どものアスカが不思議そうな顔で聞く。 「いや、わたしは宮廷で陛下に会う。今日はいい天気だな」 キャプテンは青い空を見ながら言う。 「ほんとう、夏とは言っても猛暑とは違い爽やかね。先に学校へ行くわ」 ナオは行き先コードを打ちながら言った。 「わたしも宮廷に行きたい、何か食べるんでしょう?」 アスカはキャプテンの目を見て言う。 「いや、陛下と少し話すだけだ。直ぐに帰ってくる」
「ねえッ、マザー。ほんとう?」 <<アスカ、わたしもそのように聞いています>> いつもながら凛とした表情でドクターロボのマザーは言った。 「ふーん」 窓の外を見ながらアスカは言う。 「のんきね、アスカ。これから色んなことが起こるのよ」 不安そうにナオは正面を見ながら言った。
そして、アスカはサザンクロス国立総合大学で降ろされる。 「さあ、宮廷に行くわよ」 「うん、遅くても1時間後には戻ってくるからエアーカーで待っててくれ」 「分かったわ。でも、宮廷の庭が見たいから終わったら携帯に電話して」 「そうか、それもいいな。終わったら庭に向かいに行くよ。庭のどこにいる?」 「うーん、噴水のところが好きなの。花が咲き、小鳥が飛んでいるから」 ナオは遠くを見ながらゆっくりと言う。 「分かった」 と、言いながらキャプテンは目を瞑り、作戦を反復していた。
三人は宮廷のゲートで警務官のチェックを受ける。 「オスカー室長に会いに来ました。キャプテンと医療用ロボットのマザー。そしてナオ です。入廷許可証をください」 キャプテンが大きな声で言う。 「生憎ですが、申請はキャプテンとマザーだけなので」 警務官は困った顔でナオを見た。 「緊急に陛下と話がしたい」 その瞬間、警務官は陛下と聞いて、直立不動の姿勢をとる。 「しかし、その」 それでも警務官は入廷許可証を出さない。 「何で入廷許可証を出せないの? わたしは宮廷の庭が見たいだけなのよ」 ナオは苛立ちながら、声を張り上げる。
その時、マザーが華奢な手をその警務官の目の前に突き出し、細い指を擦った。その 後ろにいた警務官2人にも同じ仕草をした。 <<これは陛下の極秘命令です。他言無用。そのVIP入廷許可証をください>> 警務官はVIP入廷許可証をマザーに渡す。 <<ありがとう。さあ、ナオ。これをつけて。行きましょう、キャプテン>>
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