アスカはサザンクロス国立総合大学の学生になり、充実した毎日を送っていた。キャ プテンは、宮廷の国王を訪ね地球の史実を自分が作ったファイルに沿って説明する。 スパイの話を国王から何度か聞こうと思っていたが、他人の目と盗聴器が仕掛けてあ るんじゃないかと疑い国王に話かけられず、悩ましい日々を送っていた。
「ねえ、ナオ。こんどの日曜に探検クラブで恐竜のいる大陸に行くの。お小遣いちょう だい」 上目遣いでアスカは、ナオの目を見た。 「お小遣い? あなたは大学生でしょう、おかしいわ」 「だって、子供だからお菓子を買わないと」 甘えた声でアスカは言う。 「あれ、その探検は国から食事がでると、オスカーが言っていたぞ」 キャプテンが奥から怒鳴った。 「オスカーはお喋りね。でも、何かあったら不安だからお小遣い」 舌打ちするようにアスカが言う。 「仕方ないわね、ジュース1本分の150クロスをあげるわ。大事に使うのよ」 「うん、ありがとう」 アスカは満面の笑顔で言う。 「アスカ、その話を聞かせてくれ。おまえのことだ、調べてあるんだろう?」 キャプテンはサロンの桜の木の前で、ソファーに座りながら言う。 「うん、いいよ」 アスカはキャプテンの膝の上に座る。アスカが膝の上に座る時は、頗る機嫌がいい時 である。 「なにが知りたいの?」 アスカも桜の花を見ながら言う。 「まず、調査隊のメンバー構成はどうなっている?」 「うん、隊長は考古学のリチャード教授、動物学のキムスン教授、科学文化省の専門官 が2人、撮影スタッフが3人、それと探検クラブの13人。総勢20人ね」 アスカが思い出しながら言った。 「そうか、宮廷からオスカー室長が行くそうだ」 「えッ、何でオスカーが行くの?」 アスカが器用に体を捻りキャプテンの目を見た。 「いや、理由は知らないがオスカーが言っていた」 「えッ、まさかわたしのお守りじゃないでしょうね?」 子どものアスカは顔を顰める。 「顔見知りがいたほうが、心強いんじゃないのか?」 「うーん、どうでしょう」
「じゃ、次の質問だ。大陸を歩くのか?」 「うん、その予定よ。着陸地点も決まっていて撮影する場所も高台の一望できるところ から撮影するんだって。そして前回と比較すると言ってたよ」
「そうか、前回の撮影フィルムを見たのか?」 「うん、昨日、探検クラブで映写したの。本物の恐竜が映っていた」 「どんな、どんな恐竜がいた?」 「あのティラノザウルスみたいな恐竜や、ステゴサウルスも映っていた」 「ほんとうか、おれも参加したいな」 嬉しそうにキャプテンが言う。 「じゃ、オスカーに頼めば行けんじゃないの」 「ふーん、何か口実を探さないと。アスカの保護者と言うことで行くか?」 「そう、いいんじゃないの」 アスカは呆れた顔をして、キャプテンの膝から降りてライブラリー室へ行く。
そして日曜日になる。 調査隊はサザンクロス国立総合大学の奥に集まっていた。そして最後の一人オスカー がやっと姿を現した。 「お待たせしました。あら、アスカ。わたしの予想通り大学生になったわね」 白い探検服に身を包み笑顔でオスカーが言う。しかし、よく見るとオスカーの探検服 は既成の探検服と異なって襟が大きく、肩が直角でウエストが括れ、まるで男装の麗人 であった。 「うん、ありがとう。でも今日の調査、オスカーも興味があるの?」 「陛下の命で」 と、言った途端、調査隊は直立不動の姿勢をとった。それをアスカは一瞥する。 「オスカー室長、陛下はお変わりなくお元気ですか?」 考古学のリチャード教授が微笑みながら言う。 「はい、みなさんによろしく伝えてくれと、陛下が」 また調査隊は直立不動の姿勢を取った。 「では行きましょうか?」 オスカーは調査隊一行を促した。 「はい、おい、調査船を出してくれ」 携帯電話でリチャード教授が言う。 暫くして、一行が立っていた後ろの建物の大きな扉が開き、調査船が姿を現した。 全長30メートル強のどこにでもあるスペースシャトル艇だった。だが、真っ白く輝き 神々しさがある。 新入生はその姿に茫然とするものだが、アスカに取ってはただのスペースシャトル艇 に過ぎなかった。アスカの住んでいる宇宙一の最新型の大型戦闘艇に比べれば玩具のよ うである。 「さあ、乗ってください。席は自由に座って結構」 リチャード教授が言う。 調査隊一行はぞろぞろと乗り込む。アスカは窓際に座った、窓から外を覗いていたら 隣に誰かが座った。 「あら、アスカ、ここにいたの。座っていい?」 微笑んでオスカーが囁く。 「うん、どうぞオスカー」 「何だか楽しそうね、アスカ?」 「うん、動物園に行くみたいで、何だか楽しくて」 アスカはニコニコしていた。 「そうだ、アスカ。現地に着いても、この調査船の外で物を食べては駄目よ」 「やだ、そんな子どもじゃないわ」 「もし、調査船の外で物を食べてたらアスカでも、処罰されるわ。これは陛下が決めた ルールだから、陛下でも助けてくれない」 美しい顔を険しくしてオスカーは言う。
そして、調査船はサザンクロス星の反対側に着いた。 「オスカー、ここに来るのは何回目?」 外を見ながらアスカが聞いた。 「いえ、わたしも始めてよ。ほんとうは恐竜に興味がないの」 アスカの耳もとでオスカーが囁いた。アスカのお守りでオスカーが来たとその時、ア スカは確信した。そして、アスカはポケットのお菓子をそーと席の下に隠した。
「さあ、みんな、降りるよ。荷物を忘れるな。警護係はレーザー銃を撃てる状態にしろ」 リチャード教授が怒鳴った。そして一行の顔が険しくなる。 「よし、予定通り列を組め」 先に降りたリチャード教授が言う。列の先頭にレーザー銃を構えた学生が4人、その 後ろに教授たちと科学文化省の専門官が続いた。そして、撮影スタッフとオスカー、ア スカと学生たちが続いた。 オスカーは片手を常にポケットの中に入れていた。どうやら小型レーザー銃を握りし めているようであった。 アスカは珍しそうに周りをキョロキョロ見ていた。 「今回は冬なので助かるな、これが夏だと息をするたんびに鼻から蚋が入ってくるので 参る。それに若いやつらが汗臭くさい。それを考えると冬は実に爽やかだ」 「ほんとうですね、教授」
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