「じゃ、とりあえず教室に行こうか、アスカ」 そして、アスカはアンジーの後ろから職員室を出た。 「ねえ、宇宙語を完全に把握できたら、飛び級を受けたほうがいいかもね」 マジな顔でアンジーが言う。 「はい、頑張ります。わたしには宇宙船みんなの期待がかかっていますから」 と、アスカは言って微笑んだ。暫く長い廊下を歩いてある教室の前でアンジーが止ま った。 「ここよ、アスカの教室は」 教室の中に入ると教壇を扇型に囲んで、簡素な机が並んでいた。数えると8人分の机 があり、机の上に小さな端末装置がある。 「さあ、今日からお友達になったアスカよ、仲良くね。アスカ、その空いている席に座 って」 「はい、みなさん、アスカです。よろしく」 アスカは同年代の宇宙人と接したことがなく、ちょっと不安だった。そのため思わず 生徒を一瞥したが、男だか女だか判別できなかった。みんな髪が長く中性みたいな顔付 きであった。
アスカは席に座り端末の電源を入れる。そして、パスワードを打ち込むとメニュー画 面が出て来た。 そのメニュー画面には、教科書、参考書、インターネット、ライブラリー、等の項目 が羅列されている。 「さあ、数学を始めるわよ。教科書の51ページを開いて」 と、アンジーが言う。アスカは数学を選択して51を打ち込んだ。 「アスカ、使い方は分かりますか?」 アンジーが心配そうに言う。だが、アスカは51ページの問題を見ていた。 「はい、使い易いです」 「そうですか、じゃ、昨日やった宇宙方程式。ドレイク方程式の応用問題よ。分かる人 は手を挙げて」 アンジーは生徒を見回すが、難しいのかみんな視線を逸らした。 「どう、アスカ。何をやっているかの分かりますか? あら、言語変換気を使わなくて もいいの?」 「はい、数学なら言語変換機が無くても分かります。そのドレイク方程式は知的生命体 に関する入門みたいなもので、8年前、方程式に矛盾があり修正されています。答えは 口頭で言うのですか、それとも端末のアンサーと、書かれている小窓に打ち込むんです か?」 と、アスカが言う。 「そうねえ、折角だから、小窓に打ち込んでください。そうするとみんなの画面にも表 示されるわ」 「分かりました」 そして、生徒たちの画面に答えが表示された。 「ええッ、正解だわ。アスカはどの程度数学を学んだの?」 困った顔でアンジーが言う。 「えーと、タイムマシンの設計を始めたところです。宇宙方程式は全て把握していま す。第256次方程式まで勉強しました」 「そう、誰から学んだの?」 「宇宙船にいるロボットのベンジャミンV号から聞きました。ベンに繋がっている宇宙 船のコンピュータは宇宙最高のコンピュータだと自慢しています」 「分かりました、アスカには飛び級の申請を出します。決まるまではこのまま授業を受 けてください」 「はい、アンジー先生」 そして、アスカは7日後に飛び級の試験を受けることになった。
飛び級は総合大学の5人の教授の筆記試験と面接を受け、5人の教授の合格点を取ら ないと合格できなかった。アスカは寝る時間も惜しんでベンから試験の出そうなところ を教えてもらっている。
その間、キャプテンは国王に見せる史実のファイルを作成していた。 「うん、今日はこのぐらいにするか。それよりサザンクロスで、国王一人が浮いている ような気がする。われわれの知らない何かがある。ベン、どう思う?」 悩ましい顔付きでキャプテンは、サロンのソファーに座り青空を仰いだ。 <<はい、キャプテン。どうもスパイが暗躍していると考えられます。調べていますが 今のところ不明です>> 「うーん、罠を仕掛けてみたいが、下手にやるとわれわれが反逆で疑われる。国王以外 はみんな疑わしい」 <<そうですか、オスカー室長も疑わしいですか?>> ロボットのベンが首を捻って、キャプテンを見詰る。 「うん、敵ではないと思うが、もし敵だったらわれわれの考えは筒抜けだ」 <<キャプテン、オスカー室長は敵ではありません>> ドクターロボのマザーが口を挿んだ。 「どうしてだ。何か理由があるのか?」 キャプテンがマザーを見詰る。 <<はい、嘘をつくと、汗、心拍数、瞳の動きで分かります。でも、若い人だけです。 歳を取るとその反応が鈍くなり判断が正しく出来ません>> 凛とした表情でマザーが言う。 「そうか、嘘発見器みたいな機能がマザーにはあるのか。うん、ではオスカー室長は信 用しよう」 マザーは満足したように小さく頷いた。 「じゃ、アントニー警務官はどうだ。信用できるか?」 <<キャプテン、アントニー警務官は諜報部員として訓練を積んでいますので、反応が でません。頑強な体、強い精神力、一般人とはまるで違います>> 「そうか、敵に回したくないな」
それから何日か過ぎた。 そして、アスカはみんなの期待通り、飛び級の試験に見事合格する。 「さあ、今夜はアスカの合格祝い、好物のハンバーグよ」 にこやかにナオは、料理を運ぶ。 「アスカ、あめでとう。大学では何を専攻するんだ?」 「うーん、理工よ」 「信じられないわね、アスカが大学生なんて」 大きな声でナオは言う。 「そうだな、クラブは何をやるんだ?」 「うん、同好会を含めると全部で128種類のクラブがあったの。それで探検クラブに 決めたの」 「探検クラブ?」 「うん、ただで宇宙船に乗って、旅行が出来るんだって。でも、惑星間じゃなくってサ ザンクロスの大陸を探検よ」 目を輝かしてアスカは言う。 「じゃ、恐竜の島に行くのか?」 「うん、ケピロスや恐竜を見に行くの」 アスカは大きな口を開け、美味そうにハンバーグに被りついた。 「それはいいな、おれも行きたいな」 キャプテンは羨ましそうに言う。 「学生だけで危なくないの、何だか心配だわ」 ナオが眉を寄せて言った。 「ぜんぜん、国の調査だから教授も同行するし、国からの予算もでるの」 「そうか、レーザー銃は持っていくのか?」 「そこまでは知らない、多分持っていくのよ」 アスカはハンバーグを平上げ、ナオの皿のハンバーグを凝然と見詰る。 「アスカ食べすぎよ。でも、今日だけはお変わりしていいわ、レンジの上に乗っている から持って来て食べて」 「はーい、やっぱりナオのハンバーグが一番美味しいな」 と、言いながらアスカは小走りにハンバーグを取りに行く。
|
|