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作品名:銀河を渡る船 第四部・血の掟 作者:佐藤 神

最終回   11

「ねえ、大丈夫なの、宮内庁を敵に回して?」
 心配そうにナオが言う。
「うん、これからは不要の庁だ。遅かれ早かれ廃庁になるだろう。それより陛下には元
気になってもらわないと、だめなら別な策を用いることに....」
 興味があるのか、ロボットのベンは聞き耳を立てるように聞いている。

 翌日、キャプテンと通訳用のマザーは朝早く、宮廷の会議室で静かに座っていた。
「あら、おはよう。早いですね」
 昨日は泊り込んだのか寝ぼけ顔でオスカーが言う。
「おはよう、昨日、宮内庁で、逆らう者はいましたか?」
 オスカーはピックと、肩を震わした。

「いえ、みなさん、喜んで同意して頂きました」
「それはよかった。陛下の容態はどうですか?」
「はい、マザーの治療が効きました。予定通りお見えになります」
「うん、民も安心するでしょう。ところで今日の昼休み、わたしと陛下、それとアント
ニー警務官の3人で地下牢のガブリエル・トーマス元防衛大臣に面会します。アントニ
ーに伝えてください」
 キャプテンは誰に話しているのか、朗々と言った。

「何のために?」
 オスカーが言う、キャプテンは睨みつけるようにオスカーを見る。
「分かりました、伝えます」

 そして昼休みになった。扉が開いてアントニー警務官が入って来た。
「うん、アントニー。何かようか?」
 国王は、突然入室してきたアントニーを見て言う。
「陛下、キャプテンに呼ばれました」
 直立不動でアントニー警務官は言う。
「陛下、これから地下牢のガブリエル元防衛大臣の事情聴収に行きましょう」
 眦を決したようにキャプテンが大きな声で言う。
「そうか、分かった」
 国王は顔を曇らせて立ち上がる。
「閣僚の方々は、そのまま陛下のお帰りをお待ちください」
 またしてもキャプテンは誰に話しているのか、朗々と言った。

 暫くして、地下の薄暗い通路をアントニー警務官を先頭に進む。
「キャプテン、事情聴収とは?」
 気が進まない顔で国王が言う。
「陛下、陛下に代わり私が話をつけます。陛下は黙って頷いてください」
 囁くようにキャプテンが言う。
 そして長い通路を歩き、牢のガブリエル元防衛大臣を見る。
「牢番、鍵を開けろ。椅子を4つ持ってきてくれ」
 キャプテンが叫んだ。ガブリエルは陛下の姿を見てその場に平伏せて震えていた。

「ガブリエル、陛下に代わり私が陛下のお考えを伝える。心して聞け」
 険しい顔でキャプテンが言う。ガブリエルは顔を床に擦りつける。
「スパイ行為は極刑と決まっている。だが、おまえの家族はどうなる。罪には問われな
いが、おまえの行為で何百、何千と人が死んでいる。その遺族がおまえの家族を許すと
は思えない。最終的に自殺をするか、殺されるかだ。と、陛下はお考えになった」
 ガブリエルは平伏せたままだった。

「これから開かれる裁判でデスラカン帝国の諜報部員に脅されたと言うんだ。
そして、言うことを聞かないと家族を殺すと脅され、不本意ながらスパイをしたと言う
んだ。そして、このサザンクロスをどんなに愛していたか涙ながらに訴えろ。その後で
このカプセルを噛み切れ、おまえは直ぐに死ぬ」
 キャプテンは懐から小さなカプセルを取り出す。そして、ガブリエルが震える顔を上
げた。

「そして、おまえの高級別荘、外車、銀行口座の凍結没収を発表する。民がおまえに同
情すればおまえの家族は生き残れる。家族の最低限の生活は保障する。どうせ死ぬん
だ、家族のために死んだらどうだ。と陛下のお言葉だ。陛下のお言葉に従うなら、この
カプセルを口に含め。いやなら首を振れ」
 キャプテンはガブリエルを凝視する。
手を伸ばしてガブリエルはカプセルを受取り口に含んだ。

「ガブリエル」
 陛下は震える声で言う。
 ガブリエルは申し訳なさそうに、床に顔を強く擦りつけいる。
「陛下、15年前、わたしが政治家になることを父親は激怒して反対しました。
でも、このサザンクロスのためわたしは、父親を無視して政治家になりました。そし
て、5年前、父親が死の間際、わたしにだけおぞましい我が一族の血の掟を話し後を
わたしに託し死にました」

 ガブリエルは眼を潤まして顔を上げた。
「陛下、時間です」
 キャプテンが大きい声で言う。
そして、牢から出て行くと、ガブリエルの嗚咽が薄暗い地下通路に悲しく響いた。
「キャプテン、ガブリエルはうまくやるかな?」
 国王が呟いた。
「陛下、ガブリエルはうまく演じるでしょう。そして、家族は同情を買い無事に生き延
びます。ただし、3年間だけです」

「何だ、その3年と言うのは?」
「陛下、50年、100年、時が過ぎれば必ずデスラカン帝国の諜報部員はガブリエル
の血を引く者を再び、裏諜報部員にしようと手練手管らでたぶらかすでしょう。そんな
憂いは断ち切るべし」

 煩悶しながらキャプテンは言い続ける。
「陛下、3年後にガブリエルの血を引く者は、祝い事で一カ所に集まります。
そしてデスラカン帝国の諜報部員の皆殺しに遭います。その後その噂が広まり、デスラ
カン帝国を恨むものが増える。そのためサザンクロスの民が一つにまとまります。そう
だなアントニー?」
 と、言ってゆっくりとキャプテンはアントニー警務官を見詰た。
「えッ」
 絶句してアントニー警務官は国王を見る。
「やむなし」
 国王は小さく頷いた。
そして、宮廷の薄暗い地下通路に靴音が空しく響いた。







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