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作品名:銀河を渡る船 第四部・血の掟 作者:佐藤 神

第10回   10

<<キャプテン、了解しました。わたしは大型戦闘艇のロボット、ベンジャミンV号で
す。わたしは元デスラカン帝国で暗号解読を担当していました。
 キャプテンの指令で昨日から星外電波を傍受していました。それがこの画像の一覧表
です。この中で暗号の文脈に繋がる電文はこの1件だけです>>

 その会場の中央に立体映像が浮かび上がる。
<<上の電文が原文です、それを解読したものが下の文章です。

 ”二日後の朝、4時にキャプテンがデスラカン星に最終兵器を打ち込む予定”

 そして発信元の番号はガブリエルです、ガブリエル・トーマス。防衛大臣と同じ名前
です。以上、報告を終わります。ベンジャミンV号がお伝えしました>>

 ベンの声はいつもより低く落ち着きがあった。

 暫くして。
「ガブリエル・トーマス防衛大臣。言いたいことがあれば言いなさい」
 キャプテンは命令口調で言う。
ガブリエルは前を見詰たまま、微動だにしない。国王は俯いたまま動かない。
「ガブリエル・トーマス防衛大臣、陛下に代わりスパイ容疑で身柄を拘束する。アント
ニー警務官、ガブリエルを宮廷の地下牢へ放り込め」
 アントニー警務官がツカツカと大またで歩き、ガブリエルの後ろに立った。
「ガブリエル、立て」
 太く低い声でアントニー警務官が言う。
「うん」
 ゆっくりとガブリエルは立ち上がり地下牢へ向かう。アントニー警務官が後に続く。

 キャプテンは俯いている国王に近づき、2,3言葉を交わしたように見えた。
「オスカー、陛下は気分を悪くしている。医療用カプセルを用意してくれ」
 大きな声でキャプテンは言う。
「はい」
 オスカーは、携帯電話を取り出して連絡する。直ぐに宮廷の医療チームが医療用カプ
セルを押しながら現れた。そして、国王を医療用カプセルに乗せ運び去った。
「ガブリエル防衛大臣はたった今罷免された。これからは陛下が防衛大臣代理に就か
れる。そして、わたしは防衛大臣代理補佐に任命された」
 閣僚の顔を見渡し、キャプテンは次に何を言おうか考えていた。
「これからも不正に対しては、特例なく厳しく追求するとの陛下のお言葉である」
 閣僚たちは頷く。
「ガブリエル・トーマス元防衛大臣の裁判は公開裁判とする。けして暗黒裁判で闇に葬
ることはない。今日は陛下の体調が悪いのでこれにて終了する。との陛下のお言葉だ」
 と、言ってキャプテンはオスカーの顔を見た。

「はい、キャプテン。今日はこれにて閉会します」
 閣僚は立ち上がる。
「あッ、言い忘れた。わたしはこれからサザンクロス星の裏に潜んでいるデスラカン帝
国の大型輸送船を叩き出す。本来侵略してきた大型輸送船を破壊してもいいのだが、陛
下から追い返せと命があり、わたしは陛下の命に従う。そのためサザンクロスの上空を
大型戦闘艇が旋回する」
 キャプテンはカメラに向かって、微笑んだ。
「これは戦争ではありません。陛下がいるか限りサザンクロス星は安泰です」
 カメラに手を振りキャプテンは不器用に愛嬌を振りまく。

 そして、キャプテンとマザーは会議室を出た。
「マザー、急いでエアーカーに戻ろうか。宇宙船を飛ばさないと」
「はい、キャプテン」
 早足で歩き、ナオの待つエアーカーに乗り込む。そして、宇宙港でベンが待つ大型戦
闘艇に乗った。
「ベン、待たせたな。大型戦闘艇を飛ばしてくれ」
<<キャプテン、了解しました。ウオームアップ開始>>
 全員操縦室の椅子に座る。
<<サザンクロス星の反対側に向かって、大型戦闘艇発進>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響く。そして、1、2分でサザンクロス星の裏側に着
いた。

「ベン、デスラカン帝国の大型輸送船は見つかったか?」
<<はい、キャプテン。真下に大型輸送船がいます>>
「そうか、1000機の高速戦闘機は見えないようだが、大型輸送船に格納されたまま
か?」
<<はい、高速戦闘機は全機格納されています>>
「分かった、わたしの言うメッセージを地上の大型輸送船に向かって流してくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
「わたしは宇宙平和維持軍のキャプテンだ。サザンクロス星の平和と安全を守ってい
る、直ぐにこの星から出て行きなさい。10分以内に出て行けば攻撃はしない」
 キャプテンはベンを見て、小さく頷いた。
<<キャプテン、了解しました。メッセージを送信します>>

 暫くして。
<<了解した>>
 と、応答があり、3分後に迷彩色を塗りたくった直径15キロメートルの大型輸送船
がゆっくりと上昇する。その大きさに流石の大型戦闘艇も慌てて横に避ける。
「おい、猛将ワグナーを知っているか?」
 キャプテンはスクリーンに向かって呟いた。
<<わたしの上司だ>>
「そうか、ワグナーに介錯をしてやる、と伝えてくれ。わが名はキャプテン」
<<伝える>>
 そして、大型輸送船は猛スピードでサザンクロス空域から姿を消した。

「やだ、キャプテン。ワグナーを挑発してるみたいよ」
 ナオは心配そうに言う。
「どっちみち、戦う運命だ。逃げ隠れはできない」
 隣でベンの頭のランプが嬉しそうに黄色く点滅する。
<<キャプテン、待ち遠しいですね>>
「うん、老兵は楽にしてやらないと。ワグナーを倒せるのは、おれしかいないだろう」
<<やりましょう、キャプテン>>
 宇宙船中にベンの興奮した声が響いた。

「とりあえず宮廷に報告するか、ベン、オスカーを呼び出してくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 暫くして。
<<オスカーです>>
「あッ、キャプテンだ。潜んでいたデスラカン帝国の大型輸送船は追い払った。陛下の
容態はどうですか?」
<<ご苦労さまでした。陛下は寝ています、信頼していたガブリエルがスパイだったん
で耐え切れなかったんでしょう>>
「そうか、明日の会議は出られそうか?」
<<何とも言えません、精神的に参っています>>

「じゃ、この大型戦闘艇は宇宙港に帰らず宮廷に着陸させる。そして、ドクターロボの
マザーが陛下を診察する。明日の会議はどうしても陛下が、顔を見せないとサザンクロ
スの民が不安を抱く」
<<いや、宮廷の医療は宮内庁の管轄で、わたしには....>>
 オスカーの声が途切れた。
「分かった、陛下のためサザンクロスのためマザーが陛下を診察する。反対する者は反
逆の疑いあり、多少の犠牲は出るだろう。そのように宮内庁に伝えてくれ」
<<分かりました>>


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