<<宇宙恒星日誌21080803。 銀河系太陽系第三惑星地球人の三人、ナオ、アスカ、そしてキャプテンはサザンクロ ス星への移住を許可された>>
三人は陛下の特別の配慮があり、サザンクロス星の国籍を取ることができた。
「アスカ、早くしてよ。オスカーが迎えに着たわよ」 大きな声で怒鳴って、ナオは微笑みながらオスカーを見る。 「いいわよ、急がなくても、あら、キャプテンは?」 サロンを見渡しながら、オスカーは聞く。 「えーと、ライブラリー室にいると思うわ。何ならベンに」 「いえ、いいわ。ちょっと顔を出してきます」 ナオの言葉をオスカーは遮った。
アスカをサザンクロスの学校に入学させるため、アスカにどの程度の能力があるの か、能力試験を受けさせることにした。オスカーはそのため向かいに来ていた。 オスカーはサロンを出て、通路を歩く。超金属で出来ているこの宇宙船にオスカーは 神秘的な力を感じている。 いや、オスカーだけではなく国王、閣僚、メディア・スタッフ、一度この宇宙船に乗 った者は全員、この宇宙船を脅威に思っていた。まるで江戸時代の黒船を見る町人のよ うに。
「キャプテン、おはよう、何やってんですか?」 端末の前で黙々とキャプテンは、指先を動かしている。オスカーはちょっと声を掛け 難かった。 「あッ、オスカー、おはよう。陛下に話したことをファイルにまとめている。それが済 んだら、まだ、話していないこともファイルにまとめる積もりだ。 このファイルを見ながら説明した方が、分かり易いしわたしも楽だ。陛下もその方が 喜ぶだろう」 と、言ってキャプテンは、ホットドリンクを一口飲んだ。
「それはいいわね、事前にファイルを送信して頂ければもっといいわ?」 オスカーは片目を瞑りながら言う。 「うん、いいよ。ベンに頼んで日本語の端末を作ってもらった。打ち込んだファイル を、宇宙語に変換してもらっているから見れば分かると思う」 キャプテンの隣で、ロボットのベンはニーと笑った。 「何ならこの宇宙船と宮廷をネットで繋ぐか? 随時わたしのファイルが覗ける。そし て話題毎に質問ボックスと応答ボックスを設けよう」 端末の画面を見詰ながらキャプテンが言う。 「いいわね。でも、セキュリティーをどうするか、陛下と相談するわ。とりあえず今日 はアスカを試験場に連れて行くのでこれで帰るわ。でも、その方向で進めてください」 「うん、分かった」
暫くしてナオがライブラリー室へ入って来た。 「まだやってるの、キャプテン?」 キャプテンとベンの後ろからナオが覗く。 「うん、やっと陛下に話したことをまとめた。これからは陛下に話していないことを思 い出さないと。ナオ、何か反面教師になる史実は無いか?」 「えーッ、わたしに聞くの。覚えてないわよ」 とぼけた顔でナオはサロンへ戻る 「ナオは何も覚えてないみたいだな」 キャプテンは苦悶の色を浮かべる。 「うーん、正体を偽って侵入するギリシャ神話のトロイの木馬。黄巾の乱から始まる三 国志、たしか孔明椀という上げ底の器を使用して食欲が落ちたのを司馬懿仲達に覚られ ないようにした、と言うのは憶えている。 しかし、まとめるだけで何週間もかかるな。それならアジア・ヨーロッパを席巻した チンギスハーンにするかな」 考えれば考えるほどキャプテンは悩みだした。
<<キャプテン、アスカの能力試験が終わりました>> 「そうか、マザーの目を通して見えるのか。アスカの様子はどうだ、落ち込んでいそう か?」 <<そうですね、残念がっています。駄目だったんでしょうか?>> 「うーん、文化レベルが違うからなあ。難しいな」 端末から目を離し、キャプテンはやっぱり駄目かという思いで首を振った。 「ベン、史実がうまくまとまらない、まとまったらベンを呼ぶから好きなことをやって てくれ」 <<キャプテン、了解しました。わたしは星外、星内の情報を収集します>> 「そうか、よろしく頼む」 <<ところでキャプテン、テーマパークでオスカーとスパイのことで、話していました ね。何か心当たりが、あるのですか?>> 「うん、陛下の質問好きを考えていたんだ。もしかしたら陛下の思い通りに国が動かな いのは、誰かが邪魔をしているんじゃないかと、考えていたんだ」 <<そうですか、デスラカン帝国は中堅以上の星には、必ずスパイを送り込んでいます >> 「うん! 中堅とは?」 <<はい、民が500万人以上の星で、ある一定以上の文化水準がある星です>> 「じゃ、このサザンクロス星も当然入るのか?」 <<そうです、キャプテン。デスカラン帝国では裏諜報部員と呼んでいました。裏諜報 部員をその星へ送り込んでなん世代も根付かせます>> 「何、何百年もその星に住まわせて、その星の民と同化させるのか?」 <<はい、その通りです。その裏諜報部員は一般の民と代わりません。その星の女と結 婚して、子供を作り普通の暮らしをしています。そして、有事が発生すると暗号で繋ぎ を取ります>> 「その裏諜報部員は、そんなことをして何のメリットがあるんだ?」 <<はい、デスラカン帝国からその星での最低限の生活が保障されています。表の仕事 の賃金と合算すれば結構な金額になります。でも、わたしには裏諜報部員の名前や、報 酬の支払い方法は分かりません。わたしの担当は暗号文の解読でしたから>>
「うーん、このサザンクロス星にもいるのか、このことはみんな知っているのかな?」 <<わたしは知っていると思います。いくらデスラカン帝国が秘密にしても、わざと面 白がって漏らす者が必ずいます>> 「そうだな」 <<じゃ、そのことを踏まえて、わたしは星外、星内の情報を収集します>> 「うん、頼む」 と、言ってキャプテンは端末の前で、再び指先を動かす。
それから暫くして子どものアスカが、能力試験を終え帰って来た。 「あら、アスカ終わったの。どうだった?」 ナオが顔に畑の泥を付けながら言う。 「うん、もっと出来ると思ったけどね。宇宙語がちょっと」 元気が無くアスカが言った。 「アスカ、宇宙語が分かるの?」 「うん、日用会話ぐらいならできるよ。ベンやマザーから教わったの」 と、ポツリとアスカは言う。 だがアスカは、サザンクロス国立子供学校に入学することが出来た。 アスカの知能を測定した結果、サザンクロス国立子供学校の子供たち以上の知能がある ことが分かった。ただ、宇宙語を完全にマスターしているわけでなく、当面は言語変換 機を使用することを義務付けられて、理事長の許可が下りた。
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